コネなし、実績なし、経験なしでも商業出版で2万5千部を発行した私の方法

 本とその価格・発行部数・印税率
 私は、今から4年くらい前になるのですが『ぼくは強迫性障害』という本を商業出版で出したことがあります。
 その本は、価格が約690円で発行部数が2万5千部。内訳は、初版1万5千部、5千部の増刷が2回で、初版の保証部数が6250部でした。保証部数というのは、売れても売れなくてもその部数の印税がもらえる部数で、初版1万5千部のうち、書店流通分1万部×50パーセントとコンビニ流通分5千部×25パーセントを足して6250部になりました。コンビニの方がパーセントが低いのは、本屋よりもコンビニの方が返本率が高いのでしょうか。そこは出版社の人に聞こうかなと思っていたけど聞きそびれてしまいましたが、たぶんそんなところかもしれません。
 本の価格が1部約690円でそれに印税8パーセントを書けると約55円、それに6250を書けると35万円くらいで、この金額を本が発行された当初にもらいました。
 現在は合計1万8000部程度売れ、保証部数を超えた分の印税ももらいました。保証部数についても保証部数を超える分についても、だいたい1冊あたり55円程度の印税がもらえたので、全部合わせて100万円くらい儲かりました。
 私は、出版社社員の方とのコネもなく今までに本を出した実績もなく、大学教授、医師、経営コンサルタントなどの出版に有利な職業についているわけでもありませんし、文学賞等を獲ったこともありません。また出版エージェントとか印税プロデューサーに頼んだわけではなく自分で出版社のメールアドレスに企画を提案しました。
 こうした場合に商業出版で本が出せるケースはかなり珍しいようなので、本を出版するためにどんなことをしたのかみなさんの参考になるようにできるだけ具体的にわかりやすく紹介しようと思います。

 大きな流れ
 まず、本を書くことに決めてから最終的に出版されることが決まるまでの大きな流れを紹介します。

1 本を書こうと考える。そして、どんなことを書くか決まる。
2 一通り自分の書けることを書いてみる。
3 書いた原稿を出版してくれそうな出版社を探す。
4 書いた原稿をもとに企画書を作り、脈がありそうな出版社に出版企画を提案する。
5 編集者と打ち合わせて、編集作業を行う。自分が書いた原稿を編集者のアドバイスを参考に修正したり削除したり書き加えたりする。

 1~5はわりあい当たり前の流れなのですが、流れを書いておけば、それにそってどんなことをしたのか、どんなことが必要なのか、振り返ったり確認したりすることができるので書きました。
 1~5は、作者(私)の側で行ったことです。たぶんすべての段階が必要だと思いますし、普通はすべて自分でやるのがいいと思われます。それぞれ難しいところとか落とし穴等あると思いますが、難しさの質とか要求されることはそれぞれ異なると思います。
 一方、先方と言えばいいのでしょうか出版社の社員・編集者が行うことは、4と5の間で会議を開き出版することを前提に編集作業に入るかどうか及び担当の編集者を誰にするのか決めるのと、5の期間には、当然編集者の方でいろいろと修正・削除等の要求・提案を行うという仕事があります。もちろん担当編集者が上の人とか別の部署の人といろいろと報告・連絡・相談しているのだと思いますが、そこはこちらには見えません。そして、最終的に5が終了して本が出せることを編集者の方で判断し教えてくれます。
 もっとも1~3は便宜的なもので、実際には、1が終わって2、2が終わって3というふうに完全に順序良くすすむわけではありません。
 私の場合は読書が趣味で、本屋でいろいろな本を見ているうちに自分にも似たような本が書けそうな本を発見し、その本を出している出版社をチェックして、そこで1の「本を書こうと考える」「どんなことを書くのか決める」というふうに進みました。ですから、3がまずあってそれから1→2と進んだと考えることもできます。
 また、2と4の順番ですが、私の場合は原稿を書いてから企画書という順番でしたが、最初に企画書を書いてから原稿を書くという順番の人もいそうです。
 私の場合に具体的にどんなことをしたのか、1から順番に見ていきます。

1 本を書こうと考える。そして、どんなことを書くか決まる。 
 上にも書いたのですが、私はもともと作家になろうと思っていたとか副業でライターをやろうと思っていたわけでなく、読書とか本屋に行くことが趣味で、本屋でいろいろな本を見ているうちに、「自分にも似た本が書けそうだ」と思える本を発見し、「一つ書いてみようかな」と思って書き始めました。
 きっかけになった本は『ぼくはアスペルガー症候群』という本です。この本は、当時いくつかの本屋で比較的目立つ場所においてあり、結構売れていそうな感じでした。
 この本を本屋で見つけ、気になったので購入して家で読みました。私も強迫性障害という病気になったことがあり、アスペルガーも強迫性障害も一言で言えば「変な性格に見られることが多い」という共通点があります。もちろん、「どういう変な性格に見られるか」という点は違うのですが。
 でも、もしかしたら自分も強迫性障害について書いたら同じ出版社で出版してくれるかもしれない、となんにも根拠がないのに思いました。こういうふうに「特に根拠もなく思う」というのが大事なところだったと思います。
 ただしアスペルガーの場合は生まれつきの障害で、強迫性障害は病気で人生のどこかの時点で発症するものなので、そこが根本的に違うとも言えます。そのあたりを出版社の人がどう判断するかわからなかったのですが、別に出版されなくても自分について振り返ることができるし、原稿があればそのうちなにかの役にたつかもしれないと思い、『ぼくはアスペルガー症候群』を読みながら真似して自分について書いていくことにしました。
 この「書こう」と思うところが、センスとか考え方の問題なのだと思います。

2  一通り自分の書けることを書いてみる。
 普通に平日に行く職場にいたので原則として書くのは土日祝日でした。ただし、自分の体験を書く部分がほとんどを占める原稿だったので、ときどき職場に行く通勤途中で「あんなことがあったなあ。あれは書いた方がいいんじゃないか」といったことを思いつくことが多かったので、ポケットにメモ帳を入れて、なにか思い出したら書く、ということはしていました。
 それと、ふとんに入っている時に突然書いた方がよさそうなことを思いつくこともあったので、枕元にノートとペンを置いておいて、できるだけ思いついたことを書くようにしていました。
 『ぼくはアスペルガー症候群』の書き方を参考にして、小見出しつけ原稿用紙4~5枚分くらいで1話、という感じで書いていくとだんだんと慣れて、それなりに書けるようになりました。ただし、時々長く書きすぎて後で編集者に直すように言われる部分もありました。
 こんな感じで、書こうと考え、そして書いていきました。

 3以降は、後日投稿する予定です。
 特に5の部分がなかなか難しいところだと思います。

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