学校警備員をしていた頃 その2

 以前、学校警備の仕事をしてた頃のことについて振り返って思い出せることを書いています。
※ ひとつ前の話→学校警備員をしていた頃

 髪の毛を黒く染めて行ったのがよかったのかな?
 次に受けたのは、ネット求人で学校警備員を募集していたS社だった。特に学校ということにこだわっていたわけではないが、たまたまネットでいろいろ見ていて見つけ、「学校も懐かしいな」なんて思いながら、S社を受けることにした。
 不合格になってばかりもいられないので今度は髪の毛を黒く染めて行った。また、前歴を証言する人について聞かれたときは、「長く働いてくれたアルバイトがいるのでその人に聞いていただければわかります。それと、同じ商店会に所属していた隣の店の人に聞いてもわかります」と答えることにしていた。もちろん、前回同様、ネクタイをしめスーツを着て行った。
 面接は前のところに比べるとてもあっさりしていて、そんなに答えるのに困るような質問もなく、前歴確認の話もでなかった。警備士の仕事について一通りの説明があってから、「何月何日から4日連続で研修を受けて、何月何日から働くということはできますか」と聞かれ、「できます」と答えた。
 明らかに、「やめようとしている人がいて、急いで代わりを探している」という雰囲気だった。
 家に帰って少しすると電話があり、結果は予想通り合格だった。
 やはり、髪の毛を黒く染めて行ったのがよかったのだろうか。よく言われるように、外見が決定的に重要なのかもしれない。
 それと、仕事を始めてからわかったことなのだけど、S支社で学校警備をしている人(約30人)には、自分を入れて3人元教員がいた。教員を辞める人というのは、他の仕事に比べてそんなに多くはないと思うので、わりあい高い比率だと思う。雇う側としては、教員をやったことがある人の方がなんとなく学校のことがわかっていそうで、安心なのかもしれない。もちろん応募する側でも、教員経験者は自分と同じように「懐かしいな」と思って、他の仕事よりもこれを選びがち、という面があるのかもしれない。
 ところで、これは勤め始めて少し経ってからのことなのだけど、学校警備をして生徒や教員の姿を見ているうちに、だんだんと、「また教員に戻りたい」という気持ちが膨らんでいった。その意味では、学校警備員になったということは、自分にとって意味のあることだった。
 警備員の仕事の中で学校警備というのは、相当な少数派で、工事現場とか商業施設などが多数派だ。T社に落ちて、たまたま学校警備員の募集をしているS社の募集が目に入り、受けたらすぐに合格した。
 というのも何かの縁だったのだろうか。
 やはり、自分の人生は学校というものに縁があるのかもしれない。とも思える。

 警察との違いは?
 入社すると、まず4日間の新任研修があった。これは、法律で定められたもので、新しく警備員を始める人は全員が義務付けられている。
 ビデオを見たり、講師の話を聞いたり、消火器や三角巾などの使い方や広報の仕方(決まった文言を暗記し言ってみる)などの簡単な実技の練習をしたりして4日間が過ぎた。
 ありがたいことに、この研修でお金が出た。確か4日間で2万5千円くらいもらったと思う。
 研修の講師は内勤者で手の空いている人が担当していた。
 だいたい通り一遍の説明だったが、印象に残っているところもある。
 講師から、「警察官と警備員の違いは」という問いかけがあった。
「警察官は税金を払っている一般市民がお客様だけど、警備士は、特定の雇い主がいる」
 と、私は答えた。
 「まあまあいい線いってます。警備員は特定のお金を出しているお客さんがいるけど、警察官は、一般市民がお客さんとも言えるのですが、警備員のような意味でのお客さんがいません」
 講師役の内勤者が言った。
 これは重要なポイントだと思う。実際に仕事についてみると、このことについては考えさせられる場面が結構あった。代表的な例は、警備の目的とは直接関係ない質問(道案内など)を一般の人からされる場面である。
 簡単に「わかりません」と言ってしまっていいものかどうか。本当はそれでいいのだけれど、気分よく働けるようにするためには、一工夫した方がいいこともあった。
 それから「警備士発祥の地はどこか」なんていう雑学クイズのようなことも出てきて、これについては、受講者は誰も答えられなかった。講師が言っていた正解はアメリカで、西部開拓時代に列車を守る立場の人たちが警備士の一番古い祖先にあたるのだそうだ。
 学校警備に直接関係あることとしては、「校門の前でチラシを配る業者の人にどう対応するか」という話題が出た。
 その時の講師は、「学校側の施設管理権は校門の外に及ばないので、法律的には止めさせる権限はない。だから、学校側から『止めさせてほしい』と言われたら、しつこく何度もお願いするしかない」と言っていた。
 法律的にはそれが正しいけど、もう少し工夫した対応もあることが、現場にいってからわかる。でも、法律的に正しいことがまずは大事なことなので、この時の講師の話の内容が一番の基本だと思う。
 この時講師を務めてくれた内勤者は、わりあいいろいろなことをよく知っていて、話のうまい人だった。が、その後、いつの間にかいなくなる。
 たぶんその支社にいた課長が話していたと思うだけど、退職したということだった。どこか警備会社よりもいい仕事を見つけたのかもしれない。 

※ 次の話→学校警備員をしていた頃 その3

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