学校警備員をしていた頃 その39

 以前、学校警備の仕事をしてた頃のことについて振り返って思い出せることを書いています。
※ 最初から読みたい方は、学校警備員をしていた頃から読むことをおすすめします。
※ ひとつ前の話→学校警備員をしていた頃 その38

 「パト車の連中はくそ」 
 パト車というのは、自治体から依頼を受けた警備会社が行っている防犯パトロール事業で、自分が所属していた支社の業務にも含まれていた。二人一組で屋根の上に回転灯が取り付けられた車に乗って、決まられた範囲を走行するのが仕事である。
 パト車については、これはこれで運営の難しさがあり、時々トラブルも起きているようだった。
 自治体の雇用対策事業なので、今まで職にあぶれていた人でないとレギュラーでこの仕事につくことはできない。だから、一般常識に欠けている「困ったちゃん」が来る可能性も高い。
 一番困るのは、夜勤で勤務中に寝てしまう人だ。
 聞いた話では、運転していて交差点の手前で信号が赤で停止している間に寝てしまい、青になったので助手席の人が起こすと、交差点を渡ってすぐにまたストップして再び寝てしまう人がいたそうだ。
 その時助手席にいた人が「あの人は事故を起こしそうで怖いから嫌だ」と言い出して、ペアは交代になった。新しく、その寝てしまう人と一緒になった人は、特に表だって文句も言わず仕事を続けていて、「よく続いている」と事情を知っている人は感心している。
 うまく寝かさないような方法を見つけたのだろうか。それとも、その「怖い人」も慣れてきたらあまり寝なくなったのだろうか。そのへんの事情は、わからない。
 私がピンチヒッターで夜勤に入った時にも、眠くなると、道端に車を止めて1時間くらい仮眠をとる人がいた。聞いてみると、この仕事の夜勤に入っている人は、昼間は別の仕事をしていて睡眠時間がとても少ない、という人もけっこういるようだった。家族がいて、お金を稼がなくてはいけないからやむを得ずそうしているのだろう。でも、この人の場合は運転しながら寝てしまうようなことは一切なく、「怖い」という感じではなかった。
 それから、突然「明日からやめます」と言い出した人もいたそうだ。そして、「年休が残っているぶん明日から取らしてください」と主張したらしい。
 それと、日曜などにイベントがあって「人が足りないから出てください」と言っても全然協力してくれない人が多いそうだ。
 こういったことに対して、内勤者は怒っている。現任研修の時にたまたまこの話になった時、内勤の舛添さんは「パト車の連中はクソ」なんて言いながら、一通りこういった「パト車の連中」の困った点について説明し、「こんなことだから、今まで失業していたんだ」と言い放つと、その場にいた人はみんなうなずいていた。
 でも、パト車の仕事をしている人から見れば、自治体の予算が打ち切られたらすぐに失業してしまうといういつまで働けるかわからない職場なので、次の仕事が決まれば「明日から辞めます」と言いたくもなるのだろう。と言うか、そうせざるを得ない事情があるのだろう。
 まあ、気持ちや事情はわかるような気がする。が、内勤者から見れば「常識がない奴らだ」となるのも無理はない。
 結局どっちもどっちで、貧困を生み出す社会の仕組みが根本的な問題である。ということなのだろうか。

※ 次の話→学校警備員をしていた頃 その40

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