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【映画レビュー】『ドリームプラン』は大人に見てほしい夢追い人の実話

『お前は自分自身だけでなく、地上のすべての黒人少女を代表することになる、、、』

今回レビューする映画はウィルスミス主演の『ドリームプラン』、女子テニス界に革命を起こしたビーナス&セリーナのウィリアムズ姉妹とその父親リチャードの半生を描いた実話です。この作品は天才姉妹を育てた父親の無謀なプランと努力の過程がメインに据えられたストーリーですが、今回は少し違った筆者なりの目線でレビューをかけたらと思います。

今回は映画レビューにはネタバレが含まれるのでご注意ください。

ウィリアムズ姉妹とその家族

姉ビーナス・ウィリアムズと妹セリーナ・ウィリアムズは、ともに世界ランク1位を経験した、女子テニス界のトッププレイヤーの姉妹です。姉妹は女子テニス界に「パワーテニス」を持ち込み、女子テニス界に革命をおこしました。プレースタイルだけでなく、教育に多額の資金がいるテニスのトッププロに、貧困層からのし上がってきたという意味でも革命的でした。

なにより、白色人種がほとんどだった女子テニス界に有色人種のプレーヤーとして脚光を浴びたのも大きなインパクトでした。姉妹がデビューした時代は、白色人種がほとんどだった時代。その中でデビューしていくビーナスに父親がかける言葉が冒頭に紹介した『お前は自分自身だけでなく、地上のすべての黒人少女を代表することになる、、、』なのです。

この言葉のあとは『お前は”門”をくぐっていく』『お前が見上げたときの父親の俺が逃げる姿は見せたくない』と続きます。父も激しい人種差別を経験してきたが故の恐怖や不安がこの台詞に凝縮されているように感じました。

貧困・人種差別とそれを超えていく意思のチカラ

ウィリアムズ姉妹は1980年生まれと1981年生まれ、その父親リチャードも1942年生まれなので、決して遙か昔の時代を生きた人ではなく現代を生きている人々です。そんな方でも激しい人種差別の中を生き抜いてきていること、人種と貧困の関連性、そのリアリティもこの映画で印象に残った点のひとつでした。

ウィリアムズ姉妹の生まれ育ったスラム地域でのシーンに登場する人々のほとんどが有色人種、逆にテニスの試合会場やテニスクラブのシーンに登場する人々のほとんどは白色人種です。

特に父親リチャードにとって、人種差別が如何に根深いものであるかが映画の中でも繰り返し描かれていました。貧困と人種差別の中から、自分達のドリームプランを実現していく過程で垣間見える家族の意思の強さがこの映画最大の魅力だったように思います。

奇跡は起こらない

映画の中でもうひとつ印象的だったのが「奇跡がおこらない」コトです。

父リチャードが姉妹のコーチを探すシーン、何人ものコーチに断られながらもめげることなくお手製のパンフレットやビデオで姉妹を売り込んでいきます。ついにコーチが見つかるわけですが、コーチを引き受けてくれた人も、引き受けてくれなかった人も大きな違いはないんです。
たとえば、何か運命的な出会いをしたとか、じつは前々から姉妹をチェックしていたとか、そんな奇跡は起こらない。ただひたすら色んな人に売り込みに行っていた父親が努力の中から1つが実っただけ。

たまたま当たりくじを奇跡的にひけたのではないんです。当たりが出るまで引き続けただけなんです
うまくいくって奇跡ではなくて、いかに繰り返しトライできるか。実話だから当然なのですが、すごくリアルだなと感じました。

夢を追っている時に「奇跡のような出来事が起きて、美しく夢が叶っていく」コトを期待するのは、都合が良すぎる。本当は「地道な努力の積み重ね、たまたまの積み重ねの中で、泥臭く夢は叶っていく」もののはずです。

きっとこの「泥臭さ」が大人の夢追い人にっとっては何より大切なんだろうなと感じさせてくれました。

大人になっても夢を追い続ける人にぜひ『ドリームプラン』はおすすめした映画です。

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