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シンプルに書く

ポール・グレアム(Paul Graham)が執筆したエッセー「Write Simply」の日本語訳になります。

2021年3月

私は普通の言葉とシンプルな文を使って書くようにしている。

このような文章は読みやすい。文章が読みやすければ読みやすいほど、読者はその文章により深い関わりを持つだろう。読者があなたの散文に消費するエネルギーが少なければ少ないほど、読者はあなたのアイデアにエネルギーを多く残すことになるだろう。

すると、読者はさらに読むだろう。ほとんどの読者のエネルギーは、記事やエッセーの途中で低下する傾向にある。読書の摩擦が十分に低ければ、より多くの読者が最後まで読み続ける。

サルティンボッカSaltimbocca」と呼ばれるイタリア料理がある。これは「口に飛び込む」という意味である。書くときの私のゴールは、サルティンボッカと呼ばれるものかもしれない。アイデアがあなたの頭に飛び込み、あなたはそのアイデアを自分の頭に届かせた言葉にほとんど気づかない。

「文章が常に純粋なアイデアになり得ること」を望むのは過度である。あなたは文章が純粋なアイデアであることさえ望んでいないかもしれない。でも、ほとんどの書き手にとって、ほとんどの場合、これが目指すべきゴールである。ほとんどの文章と純粋なアイデアの間にあるギャップは、詩で埋められていない。

その上、シンプルに書くほうが思いやりがある。人に良い印象を与えるためにシャレた書き方で書くと、自分がカッコいいように思われるためだけに、人びとに余計な手間をかけさせることになる。これは読者が運ばなければならない長い列車を後ろに引きずるようなものである。

また、あなたが英語で書いている場合、多くの読者がネイティブの英語話者でないことを忘れないでください。彼らのアイデアの理解は、英語の理解よりもかなり進んでいるだろう。なので、難しいテーマについて書くことが、安心して難しい言葉を使えることだと思ってはいけない。

当然、シャレた文章はアイデアを隠すだけではない。アイデアの欠如も隠せられるのだ。だから、何も言うことがないという事実を隠すために、ある人たちはシャレた書き方で書く。一方で、シンプルに書くことは、あなたを正直でいさせる。もしあなたがシンプルに何も言わなければ、それはあなたを含めて誰にとっても明らかとなるだろう。

シンプルな文章はよく長持ちもする。将来あなたの文章を読んでいる人たちは、今日その文章を読んでいる他国の人たちとかなり同じ立場にいるだろう。文化も言葉も変わっているだろう。そのことを気にするのが無駄じゃないのは、木工職人が長持ちする椅子を作るのが無駄じゃないのと同じである。

実際、長持ちするのは、単なる椅子や文章の偶然的な質ではない。長持ちするのは、あなたがいい仕事をしたというサインである。

これらはすべてシンプルに書くことの本当の利点であるが、どの利点も私がシンプルに書く理由ではない。私がシンプルに書く主な理由は、シンプルに書かないと気分を害するからだ。あまりにも複雑に思える文を書いたり不必要に知的な言葉を使ったりすると、それは私にとってシャレているように思えない。ぎこちないように思える。

効果のために複雑な文やシャレた言葉を使いたいと思うときは当然ある。でも、あなたは複雑な文やシャレた言葉を偶然で使うべきではない。

私の文章が最終的にシンプルになるもうひとつの理由は、私の書き方である。私は最初の下書きを素早く書いてから、すべてをちゃんとしようと下書きを編集するのに何日も費やす。この編集の多くはカットすることで、カットすることがシンプルな文章をさらにシンプルにする。


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