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新型コロナ肺炎について、ツイッターをやらない人のための~ その7封じ込め


隔離と個人情報

パンデミックに対処する方法は二つしかありません。
一つは、大勢の人にウイルスの抗体を保有させる、ワクチン接種です。
もう一つは、感染者の隔離です。
WHOは、連日の会見の席で、叫ぶように訴えています。

「検査、検査、検査をしてください。そして、感染者の隔離を!」

WHOは、中国で犯した失敗を取り戻そうとしているようです。


先日、封鎖に成功したイタリアの村が紹介されていました。(以下、ウオール・ストリート・ジャーナルの記事から抜粋)

「イタリア・ミラノ郊外の小さな町、コドーニョ。人口約5万人。ここは、イタリア国内で初の新型コロナウイルス感染者が出た町だ。すぐに次々と芋づる式に感染者が見つかり、感染者の発見は、ミラノやイタリア全土へ広がった。翌日、地元当局は外出を禁止令を出し、一帯は封鎖した。それから3週間。コドーニョの新たな感染者は1日当たり数人となり、終息しつつある」

イタリア コドーニョ



やはり、ここでも、大事なのは初期の封鎖です。

中国では、武漢と湖北省の失敗を参考にして、対策を練り直しました。早くから軽症者でも家族から引き離して隔離をしたので、ウイルスの封じ込めは成功しています。上海や北京、香港では、徐々にですが、以前の生活に戻りつつあります。


韓国、シンガポール、台湾の3か国は初動が早く、かつ、繰り返しの検査と完全な隔離を行ってきたので、感染拡大が止まってきたように見えます。今では、米国の感染症の専門家が、封じ込めに成功した例としてこの三つの国を上げるほどです。

韓国、ドライブスルー型で検査

(でも、本当に封じ込めができるかどうかはわかりません。理由は、この後に書いています)

シンガポールは、超ハイテクな、そして「明るい北朝鮮」と呼ばれるように一党独裁の中央集権国家です。なんと、感染を疑われた人は全員、スマートフォンの情報を政府の衛生局へ提出しなければなりません。いつ、どこで、誰と会い、何を食べ、どこで眠ったか、相手の名前や店の名前、アパートの部屋番号まで、全部、局に把握されてしまいます。でも、不平を言う人はいません。2012年に鳥インフルエンザが流行した時、プライバシーを優先した結果、感染を拡大させた苦い記憶があるからでしょう。


下の図は、シンガポールの感染の経路を表す、ツリーと呼ばれる系統図の一部です。このような徹底した調査と検査の結果、武漢のデータにはなかった有益な情報がたくさん得られました。例えば、

① スーパースプレッダーは、全く無症状でも10人以上に感染させる。

② 治療後、PCR検査で陰性になっても、他の人を感染させる。

③ ウイルスは、感染者の身体の中で早くから増殖していて、症状が出る直前が一番多い。

④ ウイルスは、肺>下気道>鼻>咽頭 の順に多い。糞便にも多い。

などがあります。

ツイッターの画像 その21

↓ 一番上は、テレビのニュースで紹介されたクラスターのツリー。判りやすいように簡略化されています。 下の二枚は論文からのツリーの一部。

シンガポール ツリー その1

シンガポール ツリー その2

シンガポールのツリー その3

↓ 論文
https://infographics.channelnewsasia.com/covid-19/coronavirus-singapore-clusters.html




封じ込めは無理


成功しているように見えるシンガポールや韓国でも、どこからか湧いたように感染者が出てきています。やはり、封じ込めは難しいのです。

それに、そもそも、新型コロナウイルスは8割の感染者で感染経路が追えません。封じ込めは可能なのでしょうか?


新型コロナウイルスのようにパンデミックが起きた場合、感染拡大を止める為には、三つ条件が必要だと思います。

① 感染力が強くない

② 流行初期で感染者がまだ少ない

③ 感染した人を全て見つけて隔離できる

上の条件をクリアできれば封じ込め可能なはずです。逆言えば、上の三つの条件が欠けると、完全な封じ込めは不可能です。


新型コロナウイルスを上の条件に当てはめてみましょう。①の感染力(Ro)は2から4くらいなので、2.5と仮定します。

次に、②の封じ込めを始める時期です。

具体的には何人くらいの時なら封じ込めが可能と思いますか?答えは40人まで、です。ちょうど、上に挙げたイタリアのコドーニョとその周辺の町が、封じ込められるマックスの人数となります。

イタリアの大都市ミラノやEU各国は、最初の感染者数が多すぎて封じ込めできません。もちろん、日本もできません。

でも、シンガポールは? シンガポールのように、徹底的に感染経路を追っているから封じ込めができているのでは?

答えは、「シンガポールでも封じ込めできません」

数学的に検証した論文があります。

論文では、たとえ、追跡調査が100パーセントできたとしても、発生から時間が経てば感染者は増えてしまい封じ込めは失敗する、と結論付けられています。

シンガポールや韓国の成功は一時的なことだと思います。数か月後、半年後には、感染者は再び増加傾向となるでしょう。

この新型コロナウイルスは、感染者を全て見つけることは、そもそも無理なウイルスなのです。国や自治体は、それを了承の上で、終わりの無い「モグラ叩きゲーム」を続けなければなりません。

↓ influenzerさんに教えていただきました。

ツイッターの画像 その24

ツイッターの画像 その27

ツイッターの画像 その26

↓ 論文



医療現場が崩壊する


厚生省 対策はピークを遅らせる

上の図は、2月に厚生労働省の加藤大臣が、新型コロナウイルスの対策を述べた時の資料です。流行のピークを遅らせて感染者数の増加をなだらかにすれば、医療現場の崩壊は起きない、と説明しました。テレビでも、この図はよく使われています。

しかし、これは大きな間違いです。


厚生省が示したパネルは、こちらを基にした物でしょう。これは、世界中で出回っているグラフですが、故意にミスリードを招く悪質なグラフです。いや、グラフと呼べる物ではありません。ただの「イメージ」です。しかも、ミスリードに導く、悪質な「イメージ」。


ピークシフトで その3

縦軸は縦軸の感染者の人数。パンデミックでは倍々で感染者が増えるので、普通、縦軸は、1、10、100というように人目盛が10倍になる対数表示です。横軸は時間です。何も書かれていないので、一応、日としてみます。そして、医療設備のキャパシティを表す点線が入っています。

もしも、本当に赤い山を医療のキャパシティ以下に抑えるなら、下の図のようになるのです。

ピークシフトで その2

↓ Sato Hiroshiさんのブログ【詳しく説明されています。日本語です】


↓ Herman氏のツイート

「驚くほど多くの科学者が、学校の閉鎖や旅行の自粛やイベントの取り止めの背後にある理由を説明していない。

それは人々が感染するのを防ぐのではなく、人々があまりにも速く感染するのを防ぐためなのです。」

ツイッターの画像 その26


そう、ピークシフトすれば医療現場の崩壊が防げると思うのは間違いです。押し寄せる患者が病院のキャパシティを超えれば、現場が対応できなくなることは必須です。


  平成25年の厚労省の資料には「正しいピークシフトの図」が

あります。  これ ↓ です。

平成25年 厚労省のpdf  ピークシフトの正しい図

加藤大臣が掲げたピークシフトの図と見比べてください。ちゃんと「医療提供のキャパシティ」を表す横線があり、山をなだらかにしても、その線を超えてしまうことが描かれています。こちらの方が、現実なのです。


1ッか月前に、米国の医療現場の崩壊を危惧して、警鐘を鳴らした学者がいました。

Liz Spechtさんは、米国の病院協会の会議で配れた資料についてのツイートしています。日付は3月6日です。

「イタリアと同じように感染が確認された10%の人に入院が必要と必仮定すると、5月8日頃までに、米国内のすべての病院のベッドが満杯になります。これは、隔離されていない(陰圧室でない)一般病室のベッドです。」

「入院が必要な人を5%にすれば、ベッドが一杯になるのは5月14日。2.5%でも5月20日には満床になる」

↓ Liz Spechtさんのツイートまとめ

2ツイッターの画像 その26



米国、リアルタイムのピークシフトのグラフ


アメリカでは、増え続ける入院患者が医療現場のキャパシティを追い越してしまうのか? 或いは、持ちこたえるのか?

米国全体と各州をリアルタイムで予測し、公開しています。

オレゴン州やワシントン州、カリフォルニア州は、比較的早くから都市封鎖や人の移動の制限を行いました。その効果が、ピークシフトの山に現れています。

オレゴン州にお住まいのHiranuma Yuriさんのツイートをお借りします。

グラフの赤い横線は供給できる総ベッド数。緑の横線はICUの総ベッド数。それぞれの色の点線が、必要と予想される数。

オレゴン州はとニューヨーク州の違いをご覧ください。

注:グラフは4月3日現在の物です。「医療リソース」は病床やICUなどの事。

ツイッターの画像 その52

ピークシフト 米国全体 4月2日

ツイッターの画像  その53

ピークシフトのグラフ ニューヨーク州 4月3日

ツイッターの画像  その54

ピークシフトのグラフ オレゴン州 4月3日


グラフで可視化されると、ニューヨークが大変な状況だということがよくわかります。

さて、東京や名古屋、大阪は、どうなるのでしょうか?


その7、終わり

(その8へ続く)







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