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Kog #1

 “Kog”という英単語はない。あるかと思ったらなかった。なので気に入ったので、タイトルにしてみた。
 “Kog”は「こぐ」である。チャリンコを漕ぐ、の「漕ぐ」である。I kog a bicycle, である。

 世の中、大変である。てえへんだてえへんだ、底辺だ。コロナ禍で、私自身、もう一ヶ月もテレワークというものをしているし、電車の乗り方も忘れつつある。外に出るときには必ずマスクをつけて不審者の如くだし、そしてここしばらく、誰とも会ってない。
 そんな自分が、世界がこんなことになる、まさに直前にしたことと言えば。
 それは、自転車を買ったのであった。ちょっとした計画とか、未来の希望を持って。

 自転車を漕ぐというのは、人生を駆け抜けることに似ている。なんてなことは多分、人が言葉を紡ぐようになってからもう、何億人も言っているであろう。
 フランクオーシャンも”Biking”で歌っていた。忌野清志郎だって歌ってるに違いない。使い古されたフレーズである。しかしそれでも、私はやはり、そのフレーズに惹かれたのである。

 それでまず、私がしたことは、とにかく街に溢れる自転車を見る、見まくることだった。世の中にはどんな自転車があって、どれが格好いいのか。それまでの私にとって、自転車は単に移動の手段であって、どの形がいい、みたいな拘りなどは大してなかったものだから、改めて色々見るのは、とても新鮮だった。BMX、マウンテンバイク、クルーザー、ロードバイク、ミニベロ、ランドナー。片っ端から自転車の写真を撮った。YouTubeでありとあらゆる動画を見た。
 初めは、キャリアの付いたクルーザーの類が欲しかったのが、BMXになんとなく惹かれ始めて、だが結局買ったのは、型落ちのマウンテンバイクだった。
 マウンテンバイクにしたのには、一つ理由があって、荷物を自転車に搭載してソロキャンプに行きたくなった、のである。その場合、ロードバイクは早いが、タイヤが華奢で砂利道なんかを行くには不利だし、変速ギヤのないBMXでは遠乗りが大変である。それで、グラベルバイクという、太めのタイヤの付いたクロスバイクを最初はチェックしていたのだが、それから色々と乗る場面や遊び方を考えた挙げ句に、マウンテンバイクに落ち着いたのである。
 マウンテンバイクといえば、フロントにサスペンションがついているものが一般のイメージだと思うが、遠乗りする、という目的を考慮して、サス無しの、フルリジッドのマウンテンバイクにした。そして、クロモリフレームである。それはやはり、高校生時代にブリヂストンのロードマンに乗っていた、昭和生まれの男として、クロムモリブデン鋼のフレーム、ってのはひとつの拘りなのである。
 そういう紆余曲折を経て、数年ぶりに自転車を買った。わけである。

 ところが突然、絶妙なるタイミングで、世の中がこんな風になり、外出自粛ということになった。従って現状、なかなか大手を振って自転車に乗る(妙な表現である)訳にもいかないのだが、週に一回くらい買い物も兼ねて、外をサイクリングするのは、不要不急の外出でないとは言わせない、という(私としては至って)正当な理由により、週末は三十キロ程度、外を走っている。
 あとは、一日十時間くらい部屋にこもって仕事したあと、家の裏にある廃墟団地の敷地内で、二、三十分、スタンディングとかウィリーの練習をしている。毎日ハードに鍛錬したい気持ちは山々なのだが、歳なので気持ちに身体がついて行かない。なので、短期集中である。さっと行って、前回より出来ていることが確認できれば、直ぐさま帰る。それでも帰るとあちこち痛い。昨晩も手首を痛めて、ロキソニンの湿布を貼るなどしている。

 そんな具合で、自転車を買うまでのこと、今の現状においての自転車生活について書いてみた。自転車についてはもう少し書きたい事がある気がするが、それはまた次回にする。

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