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「SF」×「下水道」で未来を想像せよ

今年で3回目の開催となる「東京地下ラボby東京都下水道局」のワークショップが11月27日に都内で開催されました!

<東京地下ラボについてはこちらの記事をご参照ください>
https://note.com/tokyogesuido/n/n7b04a8add562

今年参加する学生は、15名。美大生から医学部生まで、独自のアウトプット手法を持った、超クリエイティブな面々が集まってくれました!!
(ワークショップが始まる前から話し声が聞こえる様子に、とてもワクワクしました、、、)

ではここから、実際のワークショップの内容について、ご紹介していきたいと思います。

目次
1.「2070年の世界観をもとに、下水道を拡張せよ」
2.< WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所> SFプロトタイピングとは?
3.<SF作家 小野美由紀さん> フィクションを考える
4.ワークショップ① グループワーク
5.ワークショップ② 発表
6.ワークショップ③ 講評

1. 「2070年の世界観をもとに、下水道を拡張せよ」

今年の東京地下ラボのテーマは、「下水道の可能性を、想像力によって拡張する」。

そこでまず最初に、全体モデレーターの酒井博基さんから、こんなテーマを与えられました。

「2070年の世界観をもとに、下水道を拡張せよ」

下水道は私たちの暮らしに、あって当たり前のもの。でも、もしなかったら?
あたりまえにある暮らしのインフラの魅力を若い人が伝えること。これが、東京地下ラボの目指しているゴールです。

確かに下水道の魅力って、普段考えることがないですよね。私もそうです。だからこそ学生が、想像力を使って、未来の下水道のあり方を考えてみる。それは、私たちの未来の生活を考えることに直結することなのかもしれないなと感じました。

ワークショップでは、その「想像力」を形にするために思考法や知識をグループワークを通して学んでいきます。

ここで出てくるのが、「SFプロトタイピング」の手法。

・・・・SFプロトタイピング、何それ?聞いたことのない言葉に、「なんか未来っぽいことなんだろう!!」と私は思っていました。笑 
ここで、今回の豪華講師であるWIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所の方々から「SFプロトタイピングとは」を説明していただきました。

2.「SFプロトタイピング」とは

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WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所さんがいうSFプロトタイピングとは、
「SF(サイエンス・フィクション/スペキュラティブ・フィクション)を用いて未来を構想、それを起点にバックキャストし、「いま、これから何をすべきか」を考察する技法」だといいます。

では、なぜ未来を考えるのにSFプロトタイピングが重要なのか。
そこには3つの特徴があります。

一つ目は、「サイエンス・“フィクション”/スペキュラティヴ・“フィクション”だからこそ自由に発想できる」こと。
二つ目は、「複数の未来(Futures)を描くことを通じて、未来予測ではなく『未来の可能性』を拡張できる」こと。
三つ目は、「物語(ナラティヴ)を通じて、『未来の社会で暮らす人々』を精緻に描ける」こと。

現代社会がより複雑で、未来を予測するのが難しいからこそ、自由な発想で、大胆に未来を想像する。また、その想像力を持つこと自体が重要であるとのこと。
自分たちの今の行動次第で、未来がどうなるかが左右されるからこそ、長期的に未来を考えていくことの大切さが込められています。SFという単語から、突飛な手法なのでは?と思っていましたが、想像力を養う目的に、感銘を受けました!
未来がどうなるかわからない、ではなく、未来は自分たちで作っていくんだという意識が大切なのかもですね。

そのために、
 1.仮説(問いやテーマを起点に、未来の世界を想像する)
 2.科幻(サイエンスフィクションとしてのストーリーを描く)
 3.収束(その未来に辿り着くための変化点を探る)
 4.実装(プロダクトやサーヴィスの実装に臨む)
の4つのフェーズを通じて、未来をプロトタイプしていきます。
今回は、通常6ヶ月ほどかけて行うワークショップの1Dayバージョンとして、
1.仮説、2.科幻と、3.収束の入り口までを体験しました!

この「SFプロトタイピングの流れを体験する」ことが、
ワークショップ、1つ目のゴールです!

3. フィクションを考える

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この後、今回のワークショップ、二人目の講師である、SF作家の小野美由紀さんから、自己紹介と作品を作る上でのアドバイスをいただきました。
(プロのSF作家さんから教えていただけるなんて、超豪華ですよね!!)

「2070年の自分は、どんな世界を生きていると思いますか?」と、おっしゃる小野さん。自分がどんな風に暮らしていくのか、あるいはどんな暮らしをしたくないか。どうやって生きていきたいか。

2070年、今から約50年後の未来へ、自分の欲望やニーズを盛り込むことで、クリエイター独自の世界を想像できるようになることを教えてくださいました。
フィクションはただの妄想なのではなく、今の現実世界のメタファーでもある。

とても刺さるアドバイスの数々に、学生も真剣な表情でメモを取っていました。
(私も思わずメモを取ってしまいました、、)

4. ワークショップ① グループワーク

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その後は早速、グループワークが始まりました!
チームでの自己紹介から始まり、東京都下水道局の方々から「下水道」について紹介していただき、知識をインプットしていきます。

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東京都下水道局の方々には、下水道の目的から役割、歴史、メカニズム、現状から課題までをお話しいただきました。
自分たちの暮らしの背景にあるインフラについて学ぶことができ、なるほど、と知らなかった発見ばかりでした。

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下水道に関することを事前に学んだことがある学生からSF作品が大好きな学生まで、参加者それぞれの立場から、知識を吸収し、アウトプットのためのアイデアを膨らませます。

ワークショップの2つ目のゴールである、「下水道の抽出したい部分を知る・得る」に向けて、みんなでインプットをしていきます。

ここで、今日のワークショップでできた4つのチーム名について、ご紹介!
各チーム、自己紹介で話した共通点からチーム名を考えていました!!

1. チーム 「00」
2. チーム 「考え中」
3. チーム 「途上国」
4. チーム 「Taro Okamoto」

まずは、下水道の話を聞いて、自分が面白いと感じた視点をグループで共有していきます。
絵に書き起こしている人から、とにかく文字で書き起こす人まで、みんなそれぞれの視点と角度を持って考えていました。

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その後はそのアイデアを「世界観構築カード」というものを使い、自分のアイデアとカードに書かれたアイデアを掛け合わせる。

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最後は出来上がったカードとアイデアをグループで共有していきます!ここでは、なぜそのアイデアが思い浮かんだのか、どうしてそれが重要なのか、午後の発表に向け、グループとして共感できるポイントや方向性を決めていきます。

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本当にオリジナリティーあふれる、たくさんのアイデアと想像力が生かされた話が各グループで飛び交っていました!!

例えば、
「2070年の未来では地球が竜宮城のようになって、下水道が家の上に設置されている」
「インスタで食事ではなく、排泄の写真をアップするようになる」
「月面と地球を行き来できるようになる」
「地球が砂漠化して、下水道がいらなくなる」
「自分の中で水が生産できるようになる」
・・・・などなど!!

ここで一旦、午前の部は休憩、お昼ご飯タイムへ・・・・
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午後からも引き続き、ワークショップに。
発表に向けて、よりアイデアを深堀りし、形にしていきます。
SFプロトタイピングの手法に沿って、物語作りにいよいよ挑戦です!!!

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ここでもとても面白い話が飛び交います・・・・・。
「下水道の川でヴェネチアを作りたい」「トイレパーティーができて、お金持ちだけがトイレを楽しめるようになる」「食糧危機によって、排泄が難しくなることから、食事より排泄が上位になる」「トイレの景観都市を考えるようになる」「地下と地上、地球外で格差が進む」
下水道とSFの切り口から、自由に発想していきました。まさに想像力の極みですね笑!!!!!

しかしみんな初めてのSF作品のシナリオ、苦戦する姿も見られました。
そこで、再び小野さんからの注目すべきアドバイスをいただきました。

1.「物語は基本的に主人公が変化するもの」
最初のストーリーが始まる状況で、何か困難や欠けている状況が物語の過程で解決されていくといいます。だからこそ、考えるストーリーの世界観では何が問題で何が欠けているのかをしっかり考えていくのが良い。

2.起承転結は独立しているわけではなく、交互に作用している
ストーリーの前後は、自転車の後輪と前輪が回るような関係。主人公が行動したら、何か新しい出来事が起き、それによってまた主人公が変わる。

3.主人公が何を不満にしていて、何を変えたいと思っているのか
ここを考えるために、世界観を深堀りすることと、登場人物の誰が何を考えているのかを考える必要がある。

WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所の方々や東京都下水道局の方々にも、アドバイスをいただきながら、各グループ、アイデアを練り出していきます!

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最終発表に向けて、もうひと頑張り・・・!

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5. ワークショップ② 発表

1日かけたワークショップでのインプットとグループでのアウトプットのもと、いよいよ全体への発表です!
各グループ、少し緊張?しながらも、自分たちが作ったSF作品を発表していきます。

今回の記事ではその内容を少しだけご紹介!

最初の発表者は、チーム「考え中」
テーマは、「壮大なSF」。

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主人公が家族で大阪万博に行くと、今、世界が水不足の状況に陥っており、自律分散型の下水道が必要になっていることを知ります。しかしそのための微生物は存在しません。
ここで第三次世界大戦が発生!!でも、南極あたりの水が綺麗なことから、微生物が発見され、戦争は終了。自律分散型の下水道ができるのではないかという希望が生まれます!!!!主人公は、この世界の状況に問題意識を持っているため、「インフラが整備されれば、水問題の世界問題は解決されるのではないか」と、微生物の科学者に。
しかし・・・・。

2番目の発表者は、チーム「Taro Okamoto」
テーマは、「食糧不足、地球温暖化が進み、地下帝国が生まれている世界」。

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主人公は元農家の女の子。食糧不足によって、排泄が神格化されている世界のため、排泄の気持ち良さがわかりません。この世界では排泄によって格差があるので、とあることから仮面トイレというパーティーを目にした女の子は、初めてトイレの存在を発見し、「こんなことがあるのか!」と、どハマり。そこから、トイレクラブに通って遊ぶようになってしまい・・・・・。

3番目の発表者は、チーム「途上国」
テーマは、「南米沈没」。

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この世界では、お金持ちはサイボーグで貯水槽の中で暮らしています。一方、お金のない人たちは下水道、サイボーグへの憧れを抱きながら生活。主人公のニーナは人間で、お金持ちのサイボーグに憧れています。そこでサイボーグになるために、ニーナは旅へ。旅の中でサイボーグや人間に出会い、お金を集めていきます。ニーナは、遂にサイボーグになれるのか?!・・・・。

最後の発表者は、チーム「00」
テーマは、「砂漠化するディストピア」。

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水不足に地球が陥ることで、地下人と地上人の暮らしができるという世界観。地下から地上にテクノロジーを送らなければ生活ができない中で、地下人がテクノロジーを独占。戦いへと発展していきます。
主人公は地上の人間で、姉は地下でテクノロジーの研究のトップを勤めています。主人公は姉を殺すことで、争いをおさめようとし・・・・。

いかがでしょうか?「下水道」×「SF」から、各グループ全く異なるストーリを仕上げていて、本当に面白い!!!各チーム、小野さんと東京下水道局の方々からのフィードバックを受け取りつつ、良い点や改善点も探ることができました。
初めてのSFプロトタイピングであるにも関わらず、各チーム、メンバー、それぞれが想像力を働かせ、コラボレーションしていく姿が素晴らしかったです!!!!

6.ワークショップ③ 講評

最後に、全体への好評を小野さんと東京下水道局の方々からいただきました。

小野さんからは、「世界観とテーマは別」というアドバイスや、
「もし~だったら」に自分独自のメッセージを盛り込み、テーマや世界観を作ることが良い、という言葉をいただきました。未来を考える上で、自分たちの時代が抱えている課題を結びつけていくと意義のあるものになるだろうとのことです。

また、「作家にとって取材はとても重要」と、翌日のフィールドワークへのアドバイスもいただくことができました!

東京都下水道局の方々からは、配布資料にある下水道の事業を見るともっと良くなるかもしれないというコメントや、SFと現実の融合の発生が新しいものを生み出すのかもしれないという、下水道のあり方を広げていくための可能性についても多くお話しいただきました。

最後は各チームで記念撮影をして解散!
フィールドワークも楽しみです!!!