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岸田ひろ実さんと一緒に考える、真のダイバーシティ社会の実現 -後編-

ダイバーシティという言葉を当たり前のように使うようになってきましたが、人によって定義も様々です。そこで、Tokyo Cross Point主催の「とうきょうみらいゼミ」にて、株式会社ミライロ、日本ユニバーサルマナー協会理事の岸田ひろ実さんに「真のダイバーシティ社会の実現を目指して」というテーマでお話を伺いました。

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岸田ひろ実さんと一緒に考える、真のダイバーシティ社会の実現 -前編-

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海外のユニバーサルマナー

仕事で海外に行く機会が増えて、気づいたことがたくさんあります。最先端のユニバーサルデザインの視察と、障がいについての法律を学ぶためのスタディーツアーを企画してハワイに行ってきました。

ハワイでは自分が障がい者であることを忘れていました。建物はバリアフリーにすることが法律で定められていて、合理的な配慮についても法律で定められています。どんな小さなお店でもバリアフリーで、お手洗いに困ることもありません。

アメリカって暮らしやすいなーと思っていたら、ニューヨークでは全く違ったんです。車椅子で困っていても誰も声をかけてくれないし、助けてもくれない。娘とライブに行った時も、一番後ろの席になって何も見えません。

そこでニューヨーク在住の日本人の方が話しかけてくれたんです。「何してるの?そんなところにいたら見えないでしょ?」って。「でもしょうがないですから」と答えたら、「ダメよ、ちゃんと言わないと。何も言わないと、そこでいいからそこにいるとみんな思ってるのよ」。

そして大声で、「車椅子の彼女が見えないから前に行かせてあげて!」と言ってくれたんです。そしたらみんなすぐに快く通してくれて、見えるところまで移動させてくれて。それからはニューヨークでの過ごし方が変わりました。

ハワイほど親切ではないけど、ドアを開ける習慣があるようでみんながドアを開けてくれるんです。それは障がい者だからじゃなくて、困っている人がいたら助けるのが当然という文化があるから。ニューヨークでは必要以上に特別扱いされないのが、心地よくもありました。

日本とアメリカの違いは、法律がきちんと整備されていること。そして障がいがある人が外出しやすい環境が整っているので、人々も街中で配慮することに慣れています。

アメリカと全く違ったのがミャンマーです。50年前の日本と同じと言われているので、道もガタガタで、エレベーターもありません。バリアフリーという意識がなく、街はバリアだらけです。

しかしミャンマーに1週間いた間に自分で車椅子をこいだのは10分以下でした。常に誰かが車椅子を押してくれたからです。でも日本の「過剰」とは少し違うんですね。

ミャンマーには「輪廻転生」という考えが根付いていて、障がい者は前世で罪を犯した罰を受けているという考えがあるのでまだ障がい者差別が残っています。同時に徳を積むことで来世で幸せになるという考えもあるので、多くの人が助けてくれるんです。

2040年の東京に必要なのは?

これからの日本に必要なのは、無関心でも過剰でもない、「さりげない配慮」です。さりげない配慮とは、気づいたらすぐに行動に移すこと。迷ってないで、すぐにさっと声をかけてください。

正しい「声がけ」について知ることも大切です。「大丈夫ですか?」と聞く人が多いんですが、「大丈夫ですか?」「できますか?」と聞かれると、人は迷惑をかけたくない気持ちから「大丈夫です」「できます」と答えてしまうんです。

声がけの時は、次のように聞いてみてください。

「何かお手伝いできることはありますか?」

こう聞かれると、素直に手伝って欲しいことを伝えられるんです。サポートが必要なければ、そう伝えることもできる。

私が考える多様性とは、「みんなそれぞれ違う」と理解すること。性別も見た目も、育った環境も違います。違うということを知り、相手の視点に立ってみることが大切です。

素晴らしい人生の鍵

私がいつも心がけているのが、いつでも笑顔でいることです。楽しくない時やうまくいかない時にも笑顔でいると、自然とプラス思考になって前向きになれます。

空元気でも、嘘の笑顔でもかまいません。笑顔でいると自分だけでなく、周りの人にもいい影響を与えます。まずは笑顔でいる時間を少しでも増やすことを心がけてみてください。

質問コーナー

質問「少し前にコンビニから成人雑誌が撤去されたことがニュースになりました。表現の自由や多様性を考えると、社会のこうした動きをどう思われますか?」
岸田さん「ダイバーシティの観点では、都合の悪いものや悪い影響を与えるとされているものも、受け入れるべきだという考えがあります。排除をするのは簡単ですから。自由な社会には、選ぶ自由も選ばない自由もあるべきです。何でもかんでも排除するのでなく、何を選ぶべきか判断できる教育をすることが大切です
質問「小さい子どもは障がい者の人を見ると失礼なことを言ってしまうことがあるんですが、子どもにはどのようにユニバーサルマナーを教育するのがいいでしょうか?」
岸田さん「障がいのある子どもだけ学校を別にしたりせずに、本当に小さい頃から一緒に学ぶことしか解決策はないんじゃないかと思います。息子は2歳から障がいのない子供と同じ学校に通っていて、小さい頃から一緒に過ごしてきた息子の友達は、自然と息子を受け入れサポートしたり一緒に過ごすようになりました。はじめはもちろん戸惑う子どももいますが、それは子どもの素直な反応ですから。なるべく小さい頃から自分と違う子どもと過ごす機会をつくって子どもたちに慣れてもらうこと、そして子どもたちに説明できる大人になることが大切だと思います

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★今後のTokyo Cross Pointのミッション★
①障がいの有無に関わらず、小さい頃から一緒に過ごす中で、「違い」を理解し合えるよう、インクルーシブ教育の実現に向けた、専門性をもった教員の育成などの環境整備について、政策提言をしていきます。
②働く場においても、誰もが相互に理解を深め、社会の一員として共に活動しながら支え合うソーシャル・インクルージョンの考え方を普及させ、これまでの福祉的な就労支援の枠を超え、誰もが支えあいながら、経済面のみならず様々な価値を創出する社会へとパラダイムシフトをおこすべく、まずはソーシャルファーム(※)の実現に尽力していきます。
※ソーシャルファームとは…事業からの収入を主たる財源として運営しながら、就労困難者と認められる者を相当数雇用し、その職場において、就労困難者と認められる者が他の従業員と共に働いている社会的企業。