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『男はつらいよ29 寅次郎あじさいの恋』と『ルパン三世』1-4「脱獄のチャンスは一度」/世文見聞録30
今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。
○第29作『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』(前半部)
木暮林太郎:夢のシーンの「雀のお宿」のアニメは“白組”が手掛けていたんだな。
川口世文:それなんかは序の口で、今回はイレギュラーなことをたくさんやっている。タイトルバックの途中で芝居が入ったのもはじめてだし、何よりも話の後半まで寅さんが柴又に帰ってこない!
木暮:京都で“人間国宝”加納作次郎と出会うところは“殿様”パターンで、いつもと同じ感じなんだけど。
川口:『寅次郎と殿様』からちょうど10作目なんだよ。翌朝、目が覚めて「旅館」と間違えるのは池ノ内青観の逆パターン。そして、そこにはもうマドンナがいる。
木暮:最初はよそよそしい感じだった“かがり”が初めて笑顔を見せるところまでで、ちょうど30分になる。久しぶりに神懸《が》かった30分間を見た気がする。
川口:とはいえ、そこでは終わらないけどね。加納作次郎という老人は、青観とか“殿様”みたいに奇矯な人物ではないけど、かがりに説教したり、寅に追いかけさせたり、図らずもキューピット役になっている。
木暮:そうなんだよな。かがりもそこで大いに反省しているから、わざわざ丹後までやってきて、しかも自宅に泊まることになった寅さんには何とか気持ちを伝えようとする。最大の“イレギュラーなこと”はこれだよな。
川口:誤解を恐れずにいえば“サスペンス”を感じた。
木暮:おれはむしろ“悲劇性”を感じたね。だから前半でもうヘトヘトになっちゃった(笑)。
川口:寅が柴又に帰って寝込むのも無理なかったんだ。しかし、話はさらにつづく。ここからはいわばマドンナのリベンジ──それに対して寅はどう抵抗したのか?
木暮:満男役が吉岡秀隆に変わったことが生きてきた。
川口:そして、ここがシリーズが“後半”に入る分岐点になったのかもしれないな。
○『ルパン三世パート1』第4話
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木暮林太郎:スケールの大きな話と小さな話が交互に来るのは意識的にやっていたんだろうな?
川口世文:だろうね。今回の話は後者だけど、パート1を象徴するエピソードの一つだ。パート4の第13話「ルパン三世の最期」がこれへのオマージュだったと思う。
木暮:ロジカルに考えるとかなり無理があるんだ。捕まっていきなり刑務所に移送されて裁判があったかどうかもわからない。拘束衣もいい加減、カギも適当、死刑執行の日時が事前にわかるのもおかしい。でも、この話の魅力はそこじゃない!
川口:何というか……“感情的な整合性”が取れているんだよな? この言葉はあまり使いたくないけど“人間が描けている”──。
木暮:あまり使いたくないなぁ(笑)。でも、ルパンが死刑になるぐらいなら脱獄してもらいたいという銭形の心境なんかは、その後のシリーズを決定づけているよな。
川口:最初はルパンを信頼していた次元がちょっと焦るところとか、お宝の箱の鍵を手に入れるためにルパンの脱獄を早めようと4回も頑張った不二子が、死刑執行目前になって本音を語るところとかね。初回のエピソードでもよかった話をここに持ってくるのがニクい。
木暮:不二子のドレスのデザインもすごかったぞ。
川口:ワルサーを海に投げる画を部屋に飾りたい。
木暮:ルパンが「屈辱」を晴らそうとしながら「生と死の境い目」を楽しんでいる感じもよかった。とはいえ、剃った髭だけを使って、どうやって入れ替わったのかはよくわからないんだけど……。
川口:だから、そういう整合性はどうでもいいんだよ。
木暮:あと、あの“坊主”が、どんどんリッチになっていった理由もよくわからない。
川口:きっと“時の流れ”を描いていたんだよ(笑)。
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