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『男はつらいよ10 寅次郎夢枕』と『ルパン三世』6-10「ダーウィンの鳥」/世文見聞録11

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○『男はつらいよ 寅次郎夢枕』(前半部)

木暮林太郎:前作での“スタイル完成”は決定的だな。いよいよ夢のシーンもそれらしくなってきた。「マカオの寅」には苦笑したけど。

川口:とらやに戻ってきた寅さんは前回よりも逃げ足が速い。「あっ!」といわれてパッと逃げる。しかもあんなところに朝日印刷の通用口があるとは知らなかった。

木暮:あれって家族の「攻防戦」だよな。裏口から近づいて悪口をいう現場を押さえようとする寅さんと、それを知ってあえて“ホメる”作戦の家族。ホメた側はやりすぎたと思っているのに、寅さんは見事に引っかかる。

川口:すっかり和やかになって鍋を囲んで、御前様が来て、あれよあれよと嫁探しの話に展開するのがうまい。しかも翌日の夜には全員玉砕(笑)。一本だけ電話がかかってきてからがまた笑わせる。

木暮:出版関係のセールスだとか、商業高校を早めに卒業しましたとか、おいちゃん苦し紛れの説明が最高だ。

川口:でも、寅の名前を出した途端におしゃかになる。

木暮:いちばん“つらい”のは誰かという話になって、最後はしんみり出ていくパターンだな。今回もきっちり30分。ここだけ切り取って“ミニシリーズ”にできる。

川口:実は今回気になったのはその後の展開でさ。寅が次に帰ってくるまでの“つなぎ”の10分が実にしっかり作られていて驚いた。

木暮:ああ、あの田舎のおばあさんが出てくるシーン?

川口:あれ、田中絹代だぜ。“つなぎ”というにはあまりに豪華だよ。おまけの舎弟の登が再登場して、今回は寅が置き手紙をして先に出立する。それが前回のパターンの裏返しになっているわけだ。クラシック音楽の使い方も含めて、これまたちょっと研究の余地ありなんだよな。

木暮:おいおい、結局、最初の30分だけ見ればいいって話じゃなくなっちゃうのかよ。

○『ルパン三世パート6』第11話

川口:押井守脚本の2本目。前回同様かなりの“うんちく”が詰まっている。ネタとしては面白いけど使いようがなかったアイディアを棚卸しした感じもある。

木暮:「始祖鳥」の化石そのものの怪しさに関しては興味深く見たけど、ほぼそれだけで前半が終わってしまったな。今回もあれが全部ウソってことはないよな?

川口:さすがにそれはないだろう。ただ、レプリカじゃない「始祖鳥」を大英自然史博物館から盗むにしても、それほど魅力的な“お宝”には感じないなと思っていたら、ちゃんとその“裏”をかいてくれたのはよかった。

木暮:いつものルパンを期待しているとあの結末は難解に感じるんじゃないか?……「ミハイルがミカエル」といわれても、わからない人には全然わからない。

川口:“夢から醒めない夢オチ”みたいな雰囲気もあるしね。前回のヘミングウェイの話に比べると、かなりファンタジックに寄せてきて、“幻の押井ルパン”と呼ばれる3作目の映画の構想に近づいてきたんじゃないかな?

木暮:ひょっとして、この流れを“助走”にして、もう一度挑戦するってこと?

川口:案外、この「パート6」の先にあるのはそれなんじゃないかという気がしてきた。

木暮:でも、それをやっちゃうと現状のルパンの流れは“確信犯的に”そこで終わってしまうかもしれないぜ。

川口:それはそれでいいんじゃないの? アニメ化50周年記念に“緑ルパン”を復活させて、なおかつ“幻”の映画のリベンジで締めくくるというのは悪くないだろ?

木暮:まあ、相変わらず素人の予想だけどな。

川口:そんな当たらない予想を繰り返しているうちに、来週はもう前半の「大詰め」になるらしい。

木暮:そうなのか。「ルパン対ホームズ」に関してはまだ何もはじまっていなかった気がするけど(笑)。


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