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『男はつらいよ7 奮闘篇』と『ルパン三世』6-6「帝都は泥棒の夢を見る 後篇」/世文見聞録7

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○『男はつらいよ 奮闘篇』(前半部)

木暮林太郎:今更だけどタイトルと内容が一つずつズレていないか? 前回が『望郷篇』かと思ったら『純情篇』で、今回が『純情篇』かと思ったら『奮闘篇』だった。

川口世文:聞くところによると、脚本が出来上がる前にタイトルだけ決めることもあったらしい。

木暮:前回の「空撮」につづいて、今回も江戸川の「水上撮影」だったからさ、また寅さん帰ってこないのかと心配になったけど、案外、冒頭30分で話が収まったね。

川口:寅さんの実母のお菊さん、派手な恰好だったな。ミニスカートにすごい首飾り(笑)。今回はこのお菊さんやマドンナの花子が先にとらやに来て、それを追いかけるように寅さんが来るという変則パターンの積み重ね。

木暮:第1作のマドンナも再登場してきたし。

川口:そうそう。タイミングよく彼女がやってきたことで寅さんはとらやを出ていかない。

木暮:その後、さくらたちとケンカしている最中に屁をこいたとか、「嫁探し」に出かけてしまったシーンなどがあえて描かれていないのも面白かった。

川口:シナリオの書き方の引き出しが多いんだよ。

木暮:“帝国ホテル”で母親がしゃべっているときに寅さんが後ろでふざけていたの、あれはいつもなら江戸川の土手でやっているサイレントギャグだったな。上着の袖の裏地が抜けるシーンはバカバカしかった。

川口:だけど、それが母親の「おまえは脳が足らん」というセリフにつながる。そして、まさか後半の展開を暗示しているとは誰も思わなかっただろう。

木暮:今回のマドンナはかなり“繊細な”キャラだからな。今じゃ作れない話かも。だけど、寅さんの愛情って基本的には誰に対してもああいう感じなんじゃないか?

川口:おれもそう思う。なぜヒロインを“マドンナ”と呼ぶのか、その秘密はまさにそこにあるんだよね。

○『ルパン三世パート6』第7話

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木暮:次元は結局誰だったんだ?

川口:調べてみたら山中峯太郎という作家が書いた軍人探偵“日東の剣侠児”本郷義昭陸軍少佐というキャラクターだった。

木暮:別の小説に出てきた架空の人物だったのか?──知ってたか?

川口:山中峯太郎は知っていたけど、本郷義昭は知らなかった。この話を観た人の“認知率”が知りたいなあ。でも、これはこれで勉強になったけど。

木暮:『ルパン三世』のキャラのままの人物と、江戸川乱歩の小説のキャラになった人物と、山中峯太郎の小説のキャラになった人物がいたわけか。正直、ややこしい。

川口:それが“ミステリー”というものだよ、木暮くん。しかし、30分×2回ではやはりキツかったな。

木暮:大時計は大時計のままだったし(笑)。あれもミスディレクションというやつか。

川口:最後の種明かしの部分はかなり唐突だったね。

木暮:実写映画だったら絶対に“ディレクターズカット版”が出ていただろうな。

川口:仮にもう1話あったら、どうなっていただろう。もうちょっと謎を引っ張ったり、キャラ同士に葛藤が生まれたりしたんだろうか?

木暮:せめて3つのタイプのキャラクターが紛れていることをもっと早く開示してもらいたかったな。こっちがそれを推理する楽しみが生まれる。

川口:それはそうだったかも。ルパンも明智も頭が良すぎて、謎を楽しんだり葛藤したりするヒマがないんだ。

木暮:“ディレクターズカット版”はなくても、小説版は出るんじゃないか? それぐらい描き切れていない部分がありそうだ。

川口:確かに。それは期待してもいいかも。


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