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『男はつらいよ3 フーテンの寅』と『ルパン三世』6-2「探偵と悪党」/世文見聞録3

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○『男はつらいよ フーテンの寅』(前半部)

木暮林太郎:今回の“最初の30分間”もよくできた脚本だったな。おまえがいった意味がやっとわかってきた。

川口世文:そうだろ? 完全にドラマ1本分の話だろ?

木暮:今回はまたジャケットのデザインが濃い茶のチェック柄に変わるし、冒頭に江戸川も出てこないし、柴又に帰ってこないパターンなのかと思わせておいて、店のそばから電話をかけるというミスディレクション──。

川口:そこに食いついたか?

木暮:縁談の相手に注文をつけるシーンもよかったよ。

川口:あれは完全に落語だね。音声だけでも楽しめる。

木暮:緊張して「川千家」の座敷で待っていると、相手は昔なじみの女性でしかも妊娠している。今度ばかりは寅さんも怒っただろうと思ったら、強引に二人に祝言の真似事をさせて、挙げ句にハイヤーで熱海に送りだす。

川口:ぎりぎりこれだけで1本の映画になる。

木暮:起→承→転までがきれいに決まっているもんな。そして「結」がケンカ。博にコテンパンにやられるのが「つらい」──ここでタイトル回収(笑)

川口:撮影スケジュールの都合じゃないかと思うけど、ここまでさくらが登場しないこともあって、今回は行くとこまで行っちゃった感じ。

木暮:最後に江戸川の土手で、さくらにだけは理解してもらえる。そこがいい。普通ならここでエンディング。

川口:今回はレインコートにマフラーまでしていたな。

木暮:そして、例によって「ひと月後」──毎回微妙に表現が違う。ここから「本編」というのが凄いよ。いわば前段の30分は落語でいう「まくら」なんだな。マドンナが絡んでこない「寅さんの近況報告」から話に入る。

川口:すべての基本が“落語”なんだ。

木暮:その「まくら」だけ楽しもうという趣向だな?

川口:そう!──そういうことだとおれも今わかった。

○『ルパン三世パート6』第3話

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川口:残念だったな。リリーはルパンの“隠し子”じゃなくて死んだワトソンの娘でした。

木暮:考えてみれば『ルパンの娘』は別のドラマだもんな。しかし、ルパンがワトソンを射殺したっていうのはありがちなフリだよ──わかった、犯人はホームズだ!

川口:もう余計な“予想”はしなくていいから。

木暮:しかも、ワトソンは実は生きているんだ。

川口:下手な予想も数撃ちゃ当たる──そんなことよりジャケットの色が緑になった話をしていなかった。

木暮:それは「アニメ化50周年」だからだろ?

川口:それはわかるけど、てっきり舞台は日本に戻ってくるんだと思っていた。「敵」もホームズじゃなくて明智小五郎でよかった。何しろアルセーヌ・ルパンは「黄金仮面」だったんだから“三代目黄金仮面登場”にすればすんだ話だ。

木暮:伊→仏→英と移動するのはごく自然じゃないか。

川口:だったらジャケットは青でいいじゃん。ユニオンジャックに緑はない。イタリアに戻るならわかるけど。

木暮:だから“大人の事情”だってば。

川口:いや、そこをあえて緑である理由をしっかり脚本に盛り込んでくれることを期待する。

木暮:青いジャケットの最後の一着が破けるとか?

川口:じゃなくて、もっと話に絡んできてほしいんだ。

木暮:例えば? パート2から5をなかったことにするなんていうのは無理だぞ。

川口:確かにそうだな。時間軸も繋がっているし、パラレルワールドでもなさそうだし。

木暮:下手な予想も数撃ちゃ当たる。

川口:青いジャケットを着たルパンが黄色い染料のなかにドップリ浸かるとか?……ダメだ、発想が貧困すぎて自己嫌悪になる。


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