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『男はつらいよ11 寅次郎忘れな草』と『ルパン三世』6-11「真実とワタリガラス」/世文見聞録12

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(前半部)

木暮林太郎:これまでになく“厳しさ”を感じたね。

川口世文:そういう“テーマ”を乗せてきたからね。

木暮:寅さんの父親の“27回忌”のシーンまではいいんだ。おいちゃんの葬式と勘違いしたり、御前様のお経に飽きちゃったり、いちいち寅さんの反応が“先読み”できて、シリーズを観てきた人ほど楽しめる。

川口:ふざけすぎて、さくらは怒るけど、寅を追い出すほどじゃない。次に“ピアノ騒動”が控えているから。

木暮:「ピアノ一つも買えないのか?」という寅さんの不用意な言葉は笑うに笑えないんだよな。

川口:「何でいってくれなかったんだ?」っていわれてもあれは困るよね。

木暮:がっくりきて「北海道にでも行きたい」とつぶやいた博じゃなくて代わりに寅が行く皮肉。しかも牧場で倒れて、さくらが迎えに行くことになる。このあたりにも“苦さ”を感じたな。

川口:結果、最初の30分ですっきり終わらず、中盤まで話を引きずるんだよね。本物のピアノに手が出ない生活をしているさくらたちと対比するように、もっと厳しい労働環境に置かれている牧場の生活が描かれる。

木暮:リリーだってそうだ。一見寅さんと同じような放浪生活かもしれないけど、全然救いがない。作品の底にこれまで描かれなかった“現実”が透けて見えてくる。

川口:オイルショックの直前の公開なんだけど、かなり不景気だった世相を反映させているのかな?

木暮:あるいは、そういうテーマを語っていいシリーズに成長したと考えたのかもね。

川口:マドンナを牧場の娘に設定していたら全然展開が変わったと思うんだけど。

木暮:でも、こっちが正解だな。リリーが持つ“影”が作品にもたらした“苦さ”こそが重要だったんだよ。

○『ルパン三世パート6』第12話

川口:年末に“二本立て”で放送して一気に話を決着させるというのが最大のトリックだったわけだ。

木暮:ちょっと何をいっているのかわからない(笑)。

川口:初回の「エピソード0」は本当に第0話だった。今回はそれを含めてきっと全25話なんだ。そういう「シリーズ構成」そのものが、予断を許さない奇妙な流れを生み出していたということだよ。

木暮:そこに感心するのはおまえだけだと思うけどな。

川口:とりあえず今週は第12話だけを語っておこう。

木暮:夜の場面が多くて画面が暗かったな。ホームズが“攻め”てルパンが“逃げ”る──そういう役割分担なのはわかるが、どっちか一方でも話は成り立ったよな?

川口:相変わらずルパンは逃げてばっかりいる。おれは『名探偵コナン』を観ているような気分にさせられた。

木暮:「ルパン対ホームズ」じゃなく「ルパン対コナン」だってこと?

川口:そうじゃなくて作品の雰囲気が似てきた。ミステリーがテーマになるとどうしても“謎解き”に興味が向かうし、一つ一つ手がかりを整理したりするシーンがホームズ的というか、コナンの印象を引きずってみえる。

木暮:「レイヴンの財宝」もずいぶん“謎”を引っ張っているしな。半分に破れた絵画も、真っ黒な部屋も結局、罠でしかなかった。とはいえ、財宝の正体は何かという“謎”はルパン的なんじゃないのか?

川口:まあ、いつもルパンだ……とはいえ、それが何であるにしろ、旧来の『ルパン三世』の枠組みからはみ出さない。いっそのこと『ルパン三世VS名探偵コナン』をシリーズでやってしまえばよかったんだ。

木暮:それならいっそ「ホームズ対コナン」にしちゃえばいいんじゃないか?

川口:ルパンはどこに行っちゃうんだよ?(笑)


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