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横着者のための『ルパン三世』シリーズの歩き方

「ルパン祭り2019」がはじまったようなので、『ルパン三世』シリーズの「文脈」を最短で理解したい「横着者」の皆さんのための「歩き方」ガイドです。下記の3つの方針で書き進めます。

・アニメ作品のみを論じる(実写映画2本はあえて含めない)
・合計視聴時間を24時間(人生のたった1日!)以内に収める
※単純にテレビアニメ1話を30分、テレビスペシャル・映画は2時間として計算する
・シリーズが「文脈」がわかる作品を選択する(ほかにも「名作」はたくさんある)

①1971年「テレビシリーズパート1」(緑ジャケット/合計約2時間)
 全23話の「パート1」は全部観て損はないが、ここではあえて大隅正秋が演出した通称「大隅ルパン」を確認するに留めよう。対する「宮崎(高畑)ルパン」の成分は『カリオストロの城』1本で十分に摂れるからである。「大隅ルパン」と呼んでいい計8話からさらに4話に絞り込むと、下記のようになる。

第1話「ルパンは燃えているか・・・・?!」(すべてのシリーズの原点)
第2話「魔術師と呼ばれた男」(「白乾児(パイカル)」登場篇)
第5話「十三代五ヱ門登場」(「石川五ヱ門」初登場篇)
第9話「殺し屋はブルースを歌う」(不二子の元相棒「プーン」登場篇)

②1977~80年「テレビシリーズパート2」(赤ジャケット/合計約2時間)
 再放送によって「パート1」が再評価され、新たに開始された新シリーズ。ルパン三世の基本的なイメージは3年間155話に及ぶこのシリーズで完成した。しかし全話を追いかける必要はない。強いてあげるなら下記の4話。特に最終話はルパン三世の「実存」を揺るがそうとした最初の試みといっていい。

第1話「ルパン三世颯爽登場」(「パート1」第1話との対比が面白い)
第99話「荒野に散ったコンバット・マグナム」(テレビアニメ初のステレオ放送)
第145話「死の翼アルバトロス」(演出・脚本:照樹務=宮崎駿)
第155(最終)話「さらば愛しきルパンよ」(演出・脚本:照樹務=宮崎駿)

③1978年:劇場版第1作『ルパンVS複製人間』(赤ジャケット/約2時間)
「パート2」放映中に公開されたアニメ劇場版第1作。昨今の『名探偵コナン』や『ドラえもん』のように「劇場版」ならではのスケール感がある。宿敵マモーもルパンの敵役としては究極の1人といっていい。

④1979年:劇場版第2作『カリオストロの城』(緑ジャケット/約2時間)
「ルパン三世」の作品をたった一本だけ挙げろといわれたら、かなりの人数が投票するであろう名作だが、個人的にはこの作品は「宮崎アニメ」の文脈で語られるべきだと思う。つまり、宮崎駿であればルパン三世シリーズであることを禁じ手にしても、これに準ずる名作は作れたということだ。

⑤1987年:劇場版第4作『風魔一族の陰謀』(緑ジャケット/約1時間)
 OVAとして製作されたものが劇場でも公開された。この時点で「声優総とっかえ」の実験に取り組んだ異色作。新規キャストも超豪華なのだが、最後まで違和感が拭えない。『カリオストロの城』と今作のあいだには「テレビシリーズパート3」と劇場版第3作『バビロンの黄金伝説』(どちらもジャケット色:ピンク)があるが、ここではどちらもスキップしてしまおう。

⑥1989年:TVSP『バイバイ・リバティー・危機一髪!』(赤ジャケット/約2時間)
 この作品から20年近く、ルパン三世といえば毎年恒例のテレビスペシャルという時代がつづく。極論だが、ルパン三世は30分枠がいちばん語りやすく面白いのだ。前回に述べた『名探偵コナン』や『ドラえもん』のように、テレビと映画では話のスケールが異なる作品とは違って、ルパン三世の場合はいつも30分でやっていることに延長線上に「長編」を置くのはどうしても無理がある。これは3作目以降の劇場版もまったく同じだ。

⑦2008年:OVA第3作『GREEN vs RED』(緑&赤ジャケット/約2時間)
 劇場版第4作『風魔一族の陰謀』はOVA第1作としてもカウントされ、今作とのあいだには「白乾児(パイカル)」が再登場する『生きていた魔術師』(2002年)もあるがスキップしていい。今作も個人的にはあまり面白くない(というかよく意味がわからない)意欲作(?)で、ルパン三世の「実存」を揺るがそうとした試みの第2弾になる。

⑧2009年:TVSP特別編『ルパン三世VS名探偵コナン』(赤ジャケット/約2時間)
 稼げるコンテンツとして現時点では「名探偵コナン」のほうが格上かもしれないが、この頃はほぼ対等だった。非常に面白い試みであり、マンネリ化していたTVSPを活性化させてくれたといえる。2013年には『THE MOVIE』も公開されたが、栗田貫一を除く「旧キャスト」だったことも含めて、内容的にはこちらのほうが面白かった。またW大野(大野雄二・大野克夫)によるサントラも楽しめる。

⑨2012年:テレビシリーズ『峰不二子という女』(緑ジャケット/合計約2時間)
「LUPIN the Third」と表記され、あくまでも峰不二子が主人公(ルパンが登場しない回もある)のスピンオフ。「新キャスト」による初めてのテレビシリーズで、監督も脚本も女性、音楽は大野雄二の代わりに菊地成孔。初の深夜アニメでもあり、かなりアダルトな作品。好き嫌いが分かれそうなので、ここでは話の全体像が理解できる4話を挙げる。

第1話「大泥棒VS女怪盗」
第10話「死んだ街」
第12話「峰不二子という女(前篇)」
第13(最終)話「峰不二子という女(後篇)」

⑩2014年:劇場版スピンオフ第1作『次元大介の墓標』(緑ジャケット/約1時間)
「LUPIN THE IIIRD」と表記され、『峰不二子という女』の流れを汲んだ「イベント上映」版第1弾。その後も主役を変えてつづいているが、「新キャスト」に代わってからも一人だけ続投している次元大介役の小林清志に敬意を捧げてこの作品をチョイス。監督・脚本はいずれも男性。ジェイムス下地が新たな「ルパン三世のテーマ」を手掛けた。

⑪2015~16年:テレビシリーズパート4(青ジャケット/合計約2時間)
 30年ぶりの本家テレビシリーズ。舞台をイタリア国内に限定し、ルパンの花嫁となるレベッカとMI6の諜報員ニクスを準レギュラーに配置。さらに全体を貫く緩やかなストーリーもある巧みな構成で魅力的なシリーズとなった。このシリーズも全話(24話+日本未放映回2話)観て損はないが、入門編として3つのエピソードと追加シーンを再構成した『イタリアン・ゲーム』(TVSP第25作としてもカウントされている)を勧めておく。

※『イタリアン・ゲーム』に含まれる話
 第1話「ルパン三世の結婚」
 第3話「生存率0,2%」
 日本未放映回「ノンストップランデブー」

⑫2018年:テレビシリーズパート5(青ジャケット色ほか全色/合計約2時間)
 今回の舞台は主にフランス。4~5話の連作エピソード4つと、ジャケットの色がそれぞれ異なる7話で構成される最新テレビシリーズ。ここではラストの「EPISODE IV」を勧める。最後の最後にルパン三世の「実存」を揺るがそうとした試み第3弾が決行される。

※「EPISODE IV」に含まれる話
 第21話「時代遅れの大泥棒」
 第22話「答えよ斬鉄剣」
 第23話「その時、古くからの相棒が言った」
 第24(最終)話「ルパン三世は永遠に」

 以上、12種類22時間(全作品では200時間を超えると思われるので、圧縮率約10分の1)をチェックすれば『ルパン三世』50年の「文脈」をざっくりと理解することができる。「ルパン祭り2019」と合わせてお楽しみください。

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