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『男はつらいよ24 寅次郎春の夢』と『ルパン三世』6-24「悪党が愛すもの」/世文見聞録25

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第24作『男はつらいよ 寅次郎春の夢』(前半部)

木暮林太郎:寅さんの“鏡像”的な男性キャラの設定、外国人がとらやにホームステイをする、さくらの横恋慕する人物が現れる、母と娘のダブルマドンナ……どれか一つのアイディアだけで十分に一作品成立するのに、今回はそれを全部ぶち込んでいる。

川口世文:ハリウッドの脚本家が関わると、これぐらい面白さを担保しないと不安だったのかもしれない。結果的に四倍ぐらい“濃く”なったわけか。だとするとハリウッドでリメイクした場合は十二作が限界だな(笑)。

木暮:外国人はともかく寅さんの“テキヤ”仲間が上京して下宿するパターンはこれまであってもよかったな。

川口:一応、旅先で“初代ポンシュウ”に会うけどね。

木暮:せっかく母と娘どちらもマドンナ足りうるキャスティングにしたんだから、わざわざさくらに惚れさせる必要はなかった気もする。ちょっともったいなかった。

川口:そのためにマイケルは旅先で「坂東鶴八郎一座」と会うんだもんな。完全に寅の“お株”を奪っている。

木暮:以前の「不如帰」と同様、今回は「蝶々夫人」が伏線になるわけだ。寅の「夢」のチャイナタウンに対抗するように、さくらとオペラシーンまで演じていたし。

川口:マイケル・ジョーダンという名前が、今となっては二重、三重にバカバカしい。

木暮:「私、タイガーです」という受け答えや、アメリカ嫌いの寅さんが「尊王攘夷」だったというのも笑った。妙におばちゃんに好かれたり、何度も頭をぶつけたり、“日米文化比較”的なギャグはやりつくしている。

川口:それだけじゃない。こんなにアイディアが盛り込まれているのに恒例の“まくら”をきちんとやっているのは“邦画の意地”を示したのかもな。

木暮:二階の部屋いっぱいの“ブドウ騒動”ね。あれもハリウッドに対抗して予算をかけたのかな?(笑)

○『ルパン三世パート6』最終話

木暮林太郎:ルパン──あれ、絶対に死んでいるよな?

川口世文:いきなり、そこか? 確かに『カリオストロの城』オマージュの撃たれ方だったけど。

木暮:背中のほぼ真ん中に弾丸が抜けていたぞ。間違いなく肺か心臓をやられている。窓の外に落ちて、そこで“仲間”に再会してからの話はさ、全部死ぬ間際にルパンが見た幻覚だったんだよ──それがおれの結論。

川口:今回はやけに主張が強いな。

木暮:だって、トモエのモットーは「狙った獲物は必ず殺す」なんだぞ──それぐらいの着地はさせてくれよ。

川口:“トモエ”もすっかりおばちゃんになっていて、昔の面影はなかった。しかもすっかり“妄執”に取りつかれていたし……彼女がもし「パート1」に出てきた誰かだったら、まだ描く意味はあったと思うんだけど。

木暮:誰かって誰?

川口:今はパッと思いつかない……男性だったら確実に“ミスターX”だった(笑)。

木暮:「パート1」への“円環”は閉じなかったな。

川口:“緑ジャケット”の因縁話も語られなかった。

木暮:あのジャケットがルパンの血に染まって“赤”に変わるんだってずっと信じて注目していたんだけどな。

川口:そんなわけもなく……ルパンの“本当のルーツ”が隠された箱も燃えてしまったし。まあ、ルパンのキャラクター設定が“アンタッチャブル”だってことは自明なんだから、こういう終わり方しかなかったんだよ。

木暮:リブート成功の「バットマン」がうらやましい。

川口:実写作品じゃないことが『ルパン三世』の最大の強みであり、また弱みでもあるってことなんだな。

木暮:50年かかってわかったことって、結局それだけだったのか(苦笑)。

川口:半年間“期待”しつづけてお疲れ様でした(泣)。


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