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『男はつらいよ8 寅次郎恋歌』その2と『ルパン三世』6-8「ラスト・ブレット」/世文見聞録9

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○『男はつらいよ 寅次郎恋歌』(前半部その2)

川口世文:先週は最初の20分だけ語ったけど、今週はそのあとの30分ぐらいについても話をしよう。

木暮林太郎:本来なら博の「ハハキトク」の電報が来るところからはじまってもおかしくないんだ。前作だっていきなり寅の母親が柴又にやってきたんだし。

川口:2作目に出てきた寅の母親が前作の第7作、1作目に出てきた博の父親が今回の第8作に登場してくる。

木暮:これが「完結篇」といわれても不思議じゃない。

川口:博とさくらが通夜に出ると、なぜかそこに寅さんが来るのがいいね。その後、コップとお菓子で丁半博打をやろうとしたり、カメラを向けて「笑って」といったり、葬式という場で不謹慎な笑いを取るのは“定石”だ。ところが寅がいない席だと急に“兄弟ゲンカ”になる。

木暮:ケンカというよりも母親に対する“見解の違い”って感じだな。話はずっと平行線。ここまでシリアスな雰囲気は初めてかもしれない。

川口:さくらが柴又に帰ってきて、義父を心配して電話すると、またまた寅さんがいる。これもいい。博の父との会話は対照的にしみじみした雰囲気。

木暮:さっきの“緊張”を完全に緩和して、徐々に本来の路線に戻していくわけだな。

川口:ここで有名な“リンドウの花”の話を聞いて、同じ話を柴又に帰って家族にする。落語にも同じ構造の話があるけど、落語の場合は必ず話を間違える。ところが寅の場合は“間違えない”。

木暮:間違えてないのに家族にその真意が伝わらない。

川口:一つの語りの発明かもしれないな。“寅のアリア”と呼ばれる名場面もここで確立されたんじゃないかな。

木暮:結局さくらに「つまり、結婚したいってこと?」って看破されちゃうけどな。

川口:“それをいったらおしまいだよ”(笑)

○『ルパン三世パート6』第9話

木暮:ルパンと次元しか出てこない回を観ると、初期のルパンっぽくていいなぁ。

川口:今回は銭形も出てこなかったな。

木暮:不満そうだね?

川口:どうも今シリーズは肝心な“ルパンファミリー”がオミットされることが多い気がする。

木暮:しかし、ようやく大塚明夫=次元をフィーチャーした回だし、いつになく“相棒”もしっかり描かれていたじゃないか。

川口:相棒?……ああ、マグナムのことね。

木暮:耐用年数を超えてフレームにひびが入った357マグナムでどう戦うか──という話の引きは良かった。

川口:それは同意するけど、それだけに余計にホームズやリリー・ワトソンを出さないでほしかった。

木暮:おれは別に気にならなかったけどな。次元と因縁がある相手のブラッド・ロークにはもうちょっと頑張ってもらいたかったけど。あれじゃアストン・マーチンも形無しだ。

川口:だけど、レイヴンにリリーが狙われていることを示すだけで、別に「ルパン対ホームズ」の本筋に関わる話でもないし、無理に絡ませなくてもよかったんだぜ。

木暮:そうでもしないとルパンが少女誘拐事件に関わる話にできなかったからじゃないの?

川口:そんなのいくらでもできただろう。むしろ3年前じゃなくて20年ぐらい前の話にして、大人になった“あの少年”が本編に絡んでくれればよかったんだ。

木暮:そういう考え方もあるけど、彼が再登場しないと決まったわけじゃないし。

川口:いや、もう出てこないね、きっと。

木暮:えっ、ブリュートン先生も?

川口:そう、ブリュートン先生も!


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