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利他学1

「利他学」(小田亮、新潮社、2011年)P16-18から要約

四つの「なぜ」

 なぜ、人間は他人に対して親切にするのだろうか。人間に限らず、動物一般の行動について、「なぜ」そんなことをするのだろう、ということを考えるときには、四つの異なる考え方がある。これは、動物行動学の創始者の一人であり、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞したニコ・ティンバーゲンが提唱したものだ。

 四つの「なぜ」とは

①その行動が起こる仕組みは何なのだろうか。
②その行動にはどんな機能があるのだろうか。
③その行動は個体の一生のうちに、どのように発達してくるのだろうか。
④その行動は、進化の歴史においてどのような過程を経て今に到っているのだろうか。

という疑問である。専門的にはそれぞれ

①至近要因
②究極要因
③発達要因
④系統進化要因

などと言ったりする。

 これらは、メカニズムかプロセスか、時間軸が長いか短いか、という分け方もできる。「仕組み」と「機能」はどちらもメカニズムであり、「発達」と「歴史」はプロセスである。しかし、「仕組み」は短い時間軸で行動を眺めたものであるのに対し、「機能」は長い時間軸で眺めている。

 具体的には、ある動物の行動があったときに、それを心理や神経系の働きなどによって説明しようとするのが「仕組み(至近要因)」についての説明であるのに対し、その行動がどのように個体に利益をもたらしてきたのか、ということを考えるのが「機能(究極要因)」についての説明である。

 また、「発達要因」は個体の一生という時間軸のなかで行動が発現してくる過程を考えるのに対し、「歴史(系統進化要因)」の方は同じ過程についての疑問でも、個体の一生よりもさらに長い時間軸に沿ってみてくものだ。

 これら四つの問いは、それぞれ別々の視点から同じ行動を眺めているのであり、どれが正しいというものではないし、混同してはいけない。

 ところが、「なぜ」を考えるとき、「仕組み」についての答えで終わってしまうことがよくあるのだ。困っている人を助ける人を例にして考えてみよう。なぜ、その人が困っている他人を助けたのかというと、困っている人を見て助けようと思ったからだ。もう少し詳しく言うと、困っている人がいるという情報が目という感覚器官から入り、神経系によって脳へ運ばれ、処理されて、助けなければならいという感情が働き、それが運動系に伝わって何らかの援助行動を引き起こしたのである。

 確かにこれは一つの説明だし、心理学という分野がやっているのは、ほとんどこういった人間の行動の「仕組み」についての説明である。心理学では利他行動は「援助行動」あるいは「向社会的行動」などと呼ばれることが多く、どのようば場面でどういった感情が働いて、このような行動が発現するのか、という記述に終始している。しかし、それだけでは答えになっていない。なぜ、人間はそのうよな「仕組み」があるのだろうか。また、なぜその「仕組み」はそのような特徴をもっているのだろうか。


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虚無と懐疑の狭間/他称障碍者/自称変態/相当困っている人/INTP/不老不死希望/全体主義(国のため社会のため引いては人類の生き残りのため)が嫌いです。それじゃ「動物(遺伝子容器)の論理(正義)」です。人類にとって最も理性的な選択は繁殖せず自ら死に絶滅していくことだと思います。

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小田亮 著「利他学」
小田亮 著「利他学」
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