ブラオケ的吹奏楽名曲名盤紹介~吹奏楽の散歩道〜  #4 「ディズニー音楽と吹奏楽と①」

これを読んで下さっている吹奏楽人の方々は、自分が楽器を手にして一番最初に演奏した曲が何か、覚えているだろうか。


私がTubaという楽器を始めたのは小学校4年生。(Tubaという楽器との出会いは実はもっと前なのだが)

「兄(3つ上)がやってたから。」という割とありふれた単純な理由で始めたのだが、実はこれも何日も迷いに迷って、ついには入部届提出期限の朝、学校に出る直前までめちゃくちゃ悩んだ結果なのである。

もしあそこで「いや、なんか小っ恥ずかしいからやめとこう、、兄貴と違うことやってみよう」となっていたら私の人生は全く違うものになっていたただろうし、こんなコラムも書いてないだろうし、音楽を通じて知り合った人にはほとんど出会わずに今どんなことをしているのだろうか、、、と考えると末恐ろしくなる。。。

そんな人生の大きなターニングポイントを小学校4年生、若干9歳で迎えていたのである。

そんな私(小4)がTubaを手にし(これも実は最初はユーフォから始めたのだが、いい加減脱線が過ぎるのでやめておくことにする。)初めて乗った本番が、地元の団地の夏祭り。

そのお祭りの中で近隣の小中学校やボーイスカウトや消防団の楽団やらが団地の中をパレードと称して練り歩き、その後商店街の広場でミニコンサートをやる、といったことが毎年恒例で行われていて、まだこの楽器を始めて3か月の”小4の俺”は、Tubaはパレードで歩くのはキツかろうという理由でコンサートの方に乗ることになったのだ。

その時に演奏したのが今回ご紹介する「ディズニー・メドレー」。


中高で吹奏楽をやっていた人、今でも現役で吹奏楽を続けている学生、社会人、さらにはプロアマ問わず、必ずと言っていいほど、いや、ここは”必ず”と断言してしまおう。何かしらの”ディズニーもの”は演奏したことがあるだろう。

吹いていても、コンサートで聴いていてもディズニーの曲、音楽というのは何と楽しいものなのだろうか。

その楽しさを味わえてしまうのも吹奏楽の魅力の一つと言えよう。


今でこそ”ディズニーもの”の吹奏楽アレンジ譜面は世の中に溢れかえっていて、何をやろうかと迷うほどだが、私が吹奏楽を始めた約30年前は数えるほどしかなく、その中でも一番有名だったのが、私が初めてやった「ディズニー・メドレー/arr.岩井直溥」だ。


出版はNew Sounds in Brass(以下NSB)の第9集。



1981年の出版で、なんとまだディズニーランドができていない頃!そして出版から40年以上経った今でも、世代を超えて日本中あちこちで演奏される名アレンジであり、まさに日本の吹奏楽界における“ディズニーもの“の元祖となる曲なのだ。


正直解説するまでもない名アレンジなのだが、一応曲の中身を見ていこう。以下の7曲から構成。


・ミッキーマウス・マーチ

・小さな世界

・ハイ・ホー

・狼なんかこわくない

・いつか王子様が

・口笛吹いて働こう

・星に願いを


冒頭、ティンパニロールからミッキーマウスマーチをモチーフとしたファンファーレのイントロダクションに始まり、木管高音のきっかけ、バスクラのベースラインに導かれてお馴染みの旋律が奏でられる。

やはりディズニーといえばミッキーから!と言うことなのだろう。

マーチが終わると、オーボエのブリッジから今度は落ち着いた雰囲気で始まる“小さい世界“。まずはフリューゲルホルンの甘いソロとはまぁ何ともオシャレじゃないですか!

その後tuttiで盛り上げたあと突如、金属音が7つ。

白雪姫といえばハイホー!ここは他の曲とは比較的オーソドックスなアレンジで進むも、最後はジャジーに終わる。

この後の“狼なんか怖くない“は今度はディキシーアレンジ!古き良きアメリカの雰囲気を是非とも楽しみたい。

ウッドブロックの叩きでテンポが落ちると、トランペットソロのブリッジに続くのは、“いつか王子様が“。

原曲は白雪姫が王子様を想って美しい歌声を響かせるのだがこのアレンジではユーフォニアムのソロ。

一見ギャップがありそうなのだが、ユーフォニアムの柔らかい響きが曲にマッチし、決して曲を殺さない、この曲屈指の大変だ美しい場面となっている。

後半は木管楽器にメロディーが移るその前では、テナーサックスがアドリブソロを聴かせる。

ここは普段裏でサウンドを支えている中音域隊の腕の見せ所だ。

次の“口笛吹いて働こう“は今度は打って変わってジャズアレンジのTbソロで。ちょっと取ってつけた感があるのだが、これも巨匠岩井のこだわりの一つなのか。

最後は木管高音のブリッジに続き、ディズニー屈指の名曲“星に願いを“。

ここは小細工一切なしのアレンジで、ディズニーの世界感を盛大に締めくくる。

とあるバンドではこの部分だけをアンコールに、コンサートの締めの定番としているところもあるくらいだ。


こうして改めて振り返ってみると、全ての楽器に目立つ場面が出てくる。そしてディズニーの曲の良さも相まって、聴く人だけでなく、プレーヤーにも楽しんでもらえるようにという思いがよく伝わるアレンジになっている。

こりゃ世代を超えて演奏し続けられるのも頷ける。


出版当時のディズニー需要がどんなもんだったのかはわからないが、その後のディズニーランド開演は日本のディズニー人気を大きく後押ししたことは間違いないだろう。

それは吹奏楽の世界にも波及し、このディズニーメドレーも日本中で演奏され、聴衆、プレーヤー両方が楽しめるレパートリーとして大人気を博した。

その後、同じくNSBから1989年には待望の“ディズニー・メドレーⅡ“出版される。

アレンジャーこそ違えど、ディズニー音楽の楽しさを十分に発揮したこれも名アレンジだ。

その後、1992年には“メインストリート・エレクトリカルパレード“、1994年にはメドレーの第3弾となる“ディズニーメドレーⅢ“も出版され、その後は現在に至るまでほぼ毎年と言っていいほど、NSBでディズニー音楽のアレンジが出版され、各バンドの演奏会の定番ジャンルの一つ“ディズニーもの“として確固たる地位を築いていくことになった。

他にもご紹介したいアレンジは沢山あるのだが、それはまた今度のネタとして取っておくことにする。


ところで、まだTubaを初めて3か月の”小4俺”の「ディズニー・メドレー」はどうだったのか。

当然のことながら吹けるわけもなく、たった数回の合奏で冒頭の「ミッキーマウスマーチ」が何となく、チョロっと吹けた程度。指使いすらまだわからん中、隣の先輩の指をカンニングしようとするも、ほとんど吹けずに終わってしまった。

その時の貴重な写真があったのでついでに貼っておく。



 

なくて無になってるか、吹いてるフリをしているかの図。

いっちょ前に”1,2”を押しているが、多分何もわかってない。。

だって口が明らかに吹いてないもの。。

(文:@G)

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