ブラオケ的クラシック名曲名盤紹介 〜オケ好きの集い〜  #8 『マーラー:交響曲全集』

 今回は、名盤紹介として、DECCA社から発売されたリッカルド・シャイーとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるマーラーの交響曲全集を紹介したい。

 シャイーによるマーラーの交響曲は、1986年から2004年に掛けて録音されており、第1番から第9番までがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)、第10番がベルリン放送交響楽団(現在のベルリン・ドイツ交響楽団)による演奏となっている。シャイーはRCOとは密接な関係にあり、RCOの音楽監督に就任した1988年から2004年までの間に第1番から第9番までの録音を、ベルリン放送交響楽団の首席指揮者を務めた1982年から1989年までの間に第10番を録音した。各交響曲の録音時期については下記の通り。

交響曲 第1番 ニ長調『巨人』:1995年5月

交響曲 第2番 ハ短調『復活』:2001年11月

交響曲 第3番 ニ短調:2003年5月

交響曲 第4番 ト長調:1999年9月

交響曲 第5番 嬰ハ短調 :1997年10月

交響曲 第6番 イ短調『悲劇的』:1989年10月

交響曲 第7番 ホ短調『夜の歌』:1994年4月

交響曲 第8番 変ホ長調『千人の交響曲』:2000年1月

交響曲 第9番 ニ長調:2004年6月

交響曲 第10番(クック第3稿第1版):1986年10月

 シャイーがRCOの音楽監督に就任してからは、RCOが持つ緊密なアンサンブルと高度な技術力に加え、シャイー特有の表現をRCOに植え付けており、その成果が今回ご紹介するマーラーの交響曲全集で特に効果的に表れていると言っても過言ではない。これまで、多くの指揮者によりマーラーの交響曲が録音されてきたが、シャイーとRCOによるマーラーは、一線を画した解釈を施しており、それが見事に表現されている。それを私が最初に感じたのは第5番である。そもそも、最初にシャイーとRCOの録音を聴いたのは第5番で、友人から興奮した様子で『この録音凄いよ!』と言われて、早速CD屋さんに駆け込んでCDを購入したのだが、冒頭のペーター・マスース氏によるトランペットのソロからして、度肝を抜かされたのを記憶している。くっきりとしたコントラストが効いた表現であり、シャイーのオペラ仕込みの特徴が見事に反映された録音である。木管や弦の深みある繊細な表現、金管や打楽器の特徴的な響きは必聴であり、マーラーをあまり聴いたことが無い人であれば、尚更シャイーとRCOの第5番は聴いて頂きたい。

 また、第3番も非常にオススメしたい録音の1つである。管楽器、弦楽器、打楽器、声楽が見事に調和し、その上でオケの高い技術とシャイーの表現が合わさることで、最初から終楽章まで大変美しい演奏となっている。特に、第1楽章のヨルゲン・ファン・ライエン氏による表現豊かなトロンボーンのソロ、第3楽章のバックステージから響くポストホルンのソロ(実際はトランペットでの演奏)、第6楽章のバスドラによる豊かな拡がり、金管による美しいコラールは必聴である。

 それ以外には、例えば、第6番終楽章のハンマーの強烈な打撃、第8番の広大な音場再現など、どの交響曲を引っ張り出しても、どれも素晴らしいと言わざるを得ない。マーラーに詳しい人であれば、既にシャイーとRCOの録音は聴いたことがあるかも知れないが、もしマーラーをあまり知らないという人であれば、是非シャイーとRCOの録音は聴いて頂きたい。

 なお、交響曲全集は、それぞれの交響曲ごとにバラ売りもされており、バラ売りの場合は交響曲以外も収録されていることがある。それぞれのCDにおける交響曲以外の録音は下記の通り。
第1番 :ベルクの『ピアノソナタ』(マーラー編)
第2番 :交響詩『葬礼』
第3番 :J.S.バッハによる管弦楽組曲(マーラー編)
第6番 :ツェムリンスキーの『メーテルリンクの誌による6つの歌曲』
第7番 :ディーペンブロックの『大いなる沈黙の中で』
もし上記作品を通じてシャイーとRCOの魅力を感じたいということであれば、是非バラ売りのCDでも聴いて頂きたい。

(文:マエストロ)

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