見出し画像

スター・ウォーズ フォースの覚醒 全50チャプター徹底ガイド

●はじめに
2015年12月18日に全世界同時公開された「エピソード7」こと『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、「シークエル」と呼ばれた新たな3部作の第1章だ。デジタル映像の可能性を極限まで追求したプリクエル三部作から一転、この新章はクラシック三部作と同様にフィルム撮影に回帰した。可能な限り実物大のセットを組んで撮影された映像は、画素ではなく粒子が描き出す、まぎれもない『SW』なルックの映像だ。Blu-rayに収録された本編は2D版(Blu-ray3Dでもリリースされた)で、公開時はドルビーアトモスやIMAX12.1chサラウンドだった音声は4K UHD Blu-ray版ではドルビーアトモス収録で、BD版では7.1chDTSマスターオーディオ音声で収録されている。7.1ch版でもドルビーアトモスやDTS:Xへのアップミックス再生を試みると、劇場公開に匹敵するイマーシブなサラウンドを体験可能だ。ということでこの記事では、本編のチャプター全50箇所について、日本版Blu-rayからはなぜかオミットされてしまったチャプタータイトルもあわせて、見どころと聴きどころをネタバレ全開でご紹介していきたい。

●CH1:Opening Logo
配給会社が20世紀FOXからディズニーに移行したため、おなじみのアルフレッド・ニューマン作曲のファンファーレがなくなり、本作は無音のルーカスフィルムロゴからスタート。ちょっとさびしい幕開けに感じるのは僕だけではあるまい。

●CH2:The Force Awakens
それでも「昔々、遙か彼方の銀河系で…」に続いてあのメインタイトルが鳴り響けば、もう胸の高まりは止まらない。しかし、その出だしに違和感を感じた方も少なくないのでは?実はこれまでと違い、今回はメインタイトルの出だしにティンパニのロールが入っておらず、個人的にはやや拍子抜けに感じてしまった。と同時に、「ルーク・スカイウォーカーが消えた」から始まるタイトルクロールが、いともあっさりと物語を『EP6/ジェダイの帰還』の先へと進めてしまったことに、軽く衝撃を受けたのも事実。『EP5/帝国の逆襲』がいかにドラマティックな展開を見せようとも、『EP3/シスの復讐』がどんなに悲劇的な幕切れを迎えようとも、結局はイウォーク祭りで『スター・ウォーズ』サーガが締めくくられてしまう時代は、これで終わりを告げたことになる(イウォークLOVEな皆さん、ごめんなさい)。

●CH3:The First Order Approaches
タイトルクロールが終わると画面が青い惑星へとパンダウンし、画面下部より巨大な戦艦の影が現れる。これまでになかった登場パターンだ。これは新3部作における暗黒面の象徴=帝国軍の残党によって組織されたファースト・オーダーの戦艦で、その揚陸艇にストーム・トルーパーを乗せて砂漠の惑星ジャクーに向かっている。その間、レイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)が率いるレジスタンスの腕利きパイロット:ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)は、ロア・サン・テッカ老人に接触、ルークの居場所を示す地図を受け取る。「銀河を長いこと旅してきた中で、多くの悲惨な現状を目にしてきた。ジェダイなくしてフォースのバランスは保たれない」と語るテッカについて、劇中でほとんど説明はない。しかし彼は『EP2/クローンの攻撃』と『EP3』の間に勃発したクローン大戦の頃からジェダイの思想に共鳴し信仰を続け、『EP6』で帝国が壊滅した後のルークによるジェダイ再興にも協力してきた人物である。

●CH4:Village Raid
テッカの村にストーム・トルーパーが侵攻を開始する。トルーパーたちのブラスターの発砲音が四方八方から鋭く響き渡る。この村が狙われた理由は、住民たちがテッカ同様にジェダイの信徒だったからである。Xウィングを破壊されたポーは、『EP4/新たなる希望』のレイアよろしく、ルークの居場所の地図を球体ドロイドのBB-8に託す。そしてトルーパーの中にも、新3部作の主役のひとりであるFN-2187=フィン(ジョン・ボイエガ)がいる。その目の前で死んだ仲間が、血の付いた手で彼のマスクに触れることで、キャラクターをさりげなく目立たせているのが巧い。

●CH5:Kyro Ren
かつてのダース・ベイダーを思わせる暗黒面の戦士、カイロ・レンが登場。彼は最大の特徴とも言える十字のライトセーバーで、テッカ老人を殺害してしまう。新章の鍵を握る重要人物に見えたテッカがあっさり退場となるが、果たしてこんな小さな出番だけのために、ベルイマン映画の名優マックス・フォン・シドーをキャスティングするだろうか?『EP8』以降でも重要な役割を果たすのではないかと筆者は思っていたりするのだが、『EP1/ファントム・メナス』ではやはり罷免されるためだけに登場する銀河評議会議長・ヴァローラム役に名優テレンス・スタンプがキャスティングされた過去もあるので、予断は許されないところ。そしてカイロと共に村人を皆殺しにするのは、銀色のストームトルーパーことキャプテン・ファズマ(グウェンドリン・クリスティ)だ。そのインパクト大のビジュアルはファンを熱狂させ、さぞや大活躍を見せてくれるかと思われたが…。

●CH6:FN-2187
フィンがはじめて素顔を見せるチャプターで、ファースト・オーダーの捕虜となったポーがスターデストロイヤーに連れ去られる。このリサージェント級スターデストロイヤーはかつての帝国軍のものを基に設計されており、ドッキングベイのデザインも酷似。

●CH7:Rey
本作のヒロインとなるレイ(デイジー・リドリー)の登場。彼女のマスクのゴーグルは、帝国軍のストームトルーパーのそれに見える。また、メニュー動画にも使われている、戦艦の廃墟をレイがロープで降りるロングショットには、TIEファイターと帝国軍のシャトルの残骸も画面中央に。かように本作、『EP4』〜『EP6』のクラシック三部作世代に向けた”接待”が過剰なまでに詰め込まれている。

●CH8:Niima Outpost
惑星ジャクーでスクラップ集めをしながら生計を立てているレイ。彼女がスクラップを売りに来る、交易所ニーマ・アウトポストのジャンク商人の名前はアンカー・プラット。演じているのは何と、J.J.エイブラムズ版『スター・トレック』のスコッティや、『ミッション:インポッシブル』シリーズのベンジー役で知られるサイモン・ペッグである。

●CH9:Rey At Home
レイが住むのは『EP5』で反乱軍を苦しめた四足歩行のAT-ATの中。今年12月公開のスピンオフ『ローグ・ワン』の特報にも登場している。そしてここでは、『EP4』でルークが青いミルクを飲むように、レイが食事をとるシーンを見ることができる。彼女が食べているのは、アンカー・プラットがスクラップと交換したポーション・ブレッド、つまりパン。粉に水をかけるとパンになる一連の映像はCGではないというのが驚きだ。AT-ATの足に背を持たれてパンを食べるレイが被るのは反乱軍パイロットのヘルメットで、その持ち主は女性Xウィングパイロットのドスミット・ラエ大尉。

●CH10:Saving BB-8
タトウィーンのジャワズのようなスクラップ業者・ティードーに捕まっているBB-8をレイが助ける。ティードーが乗った4本足の生き物・ラガビーストをはじめ、多数のクリーチャーがCGではなくアニマトロニクスで表現されており、映像のルックをクラシック三部作に近づけている。日本語字幕では細かく訳されていないが、レイのセリフにはジャクーの各エリアの固有名詞が入っている。

●CH11:Interrogation
カイロ・レンがポーを拷問する装置は、『EP5』でベイダーがハン・ソロに使われたものによく似ている。さらにカイロの横に浮いている自白装置も、『EP4』でレイアに使ったものに似ている。

●CH12:Unker’s Offer
アンカー・プラットはレイが連れたBB-8を見て、破格のポーションをオファーする。ここではレイがBB-8に話す「家族を待っているの」というセリフに注目。その家族とはいったい誰のこと?

●CH13:Jailbreak
ジャクーの村人の虐殺を目の当たりにしたFN-2187=フィンは、ポーと共にファースト・オーダーからの脱走を決意。スター・デストロイヤー内の逆三角形の通路は『EP4』のデス・スターの独房のフロアを思わせる。そしてドッキングベイの床には、同じくデス・スターにもいたスケート靴のようなマウス・ドロイドが走り回っているのがオールドファン的にはツボ。

●CH14:TIE Fighter Escape
本作で登場するタイ・ファイターは、漆黒のボディが宇宙空間に映える。飛行やブラスターの発射は『EP4』当時のアナログ録音素材を、ハイファイかつ重厚感ある現代的な音へリマスターして制作されたという。ここは7.1chサラウンドの大きな聴きどころのひとつで、音場に飛行の軌跡が見えるかのようにハッキリとした移動感を楽しめる。このチャプターで、FN-2187は「フィン」と呼ばれることに。「よろしく!ポー!」「よろしく!フィン!」という掛け合いが何とも気持ちが良い。さてここで、カイロがフィンのことを話す場面で「(ジャクー侵攻時の)あの村にいた奴だ」と字幕が出る。実は劇場公開時の字幕は「あの村の出身だ」となっていたが、これは単純な字幕の修正なのか、それとも意味をあえてボカしたか?つい深読みしたくなる。

●CH15:Marooned On Jakku
ポーとフィンのタイ・ファイターは撃墜され、ジャクーの砂漠に墜落。タイ・ファイターを飲み込む流砂については、CH10でのレイの字幕化されていないセリフ「Keep away from the Sinking Fields in the north.You’ll drown in the sand.(北にある流砂地帯に気をつけて。飲み込まれるわよ。)」で語られている。流砂に飲まれて大爆発するタイ・ファイター、その特殊効果を手がけたのは『007 スペクター』終盤でも大爆発エフェクトを手がけ、ギネスブックに載ったクリス・コーボールドだ。この爆発音はドルビーサラウンド再生すると、高さ方向への広がりをたっぷり感じることができる。

●CH16:Crossing Paths
ニーマの交易所に水を求めて迷い込んだフィンは、レイとBB-8と出会う。ポーのジャケットを着たフィンを見つけたBB-8は、フィンを泥棒扱いして電撃攻撃。その姿はまるで『EP6』のR2-D2だ。

●CH17:Marketplace Chase
BB-8の地図を追うファースト・オーダーは、タイ・ファイターとストームトルーパーをニーマに派遣。ここからIMAXカメラで撮影された映像になり、まるで視力が上がったかのような錯覚に陥るほどの高精細になる。BDではシネスコ画角のままだが、IMAX上映館では上下に画面が拡大し、凄まじい臨場感を味わえた。ドルビーサラウンド再生では、レイ・フィン・BB-8を追うタイ・ファイターの飛行音がトップスピーカーの間を飛び回る!逃げ込もうとした新鋭宇宙船を破壊されたレイが、「もうポンコツでもいいわ!」と駆け込むのは、放置されていたオンボロの貨物船!そう、我らがミレニアム・ファルコン、実に『EP6』以来の本格的な銀幕復帰である(実は『EP1』〜『EP3』のプリクエル3部作でも、隠れキャラ的に登場してはいたのだ)。

●CH18:The Falcon Flies Again
レイは見事な操縦テクニック(すでにフォースが覚醒しているとしか思えない、でなければ彼女はニュータイプである)でタイ・ファイターの追撃を交わし、『EP4』以来の登場となる銃座にはフィンが乗り込んでこれを迎え撃つ。銃座のモニタに移るグリッド式照準がたまらなく懐かしい。ここはドルビーアトモス再生の最高の聴きどころで、特に戦艦の廃墟内でのチェイスシーンはスピード感満点の移動表現だ。ジョン・ウィリアムズの音楽も最高潮の盛り上がり。

●CH19:Introductions
ファースト・オーダーを撃退し、宇宙へと脱出したミレニアム・ファルコン。レイとフィンは健闘をたたえ合い、ここではじめて自己紹介しあう。とはいえレイのフルネームはここでも、そして最後までも明かされない。彼女の出自の秘密が明かされるのは、次章以降のお楽しみ?しかしこのファルコン内部の見事な再現には驚くばかり。BDの高画質ではその絶妙な「くたびれ感」が説得力たっぷりだ。

●CH20:Kyro Is Updated
劇場での3D上映では、画面手前にぐぐっとスターデストロイヤーの先端が飛び出して驚かされた。フィンを取り逃したと聞いてブチ切れたカイロは、怒りのあまりライトセーバーを起動してコンソールを破壊する。この中二病的なキャラクターは、何とも新鮮。頼りない悪役という声もあろうが、本作はまた彼の成長の物語でもあるのだ。さて彼のライトセーバー、画面ではよく見えないが、玩具での造形を見ると束の部分がベイダーのそれに酷似している。そのサウンドは「パワフルだが不安定」というJ.J.エイブラムズ監督のイメージを受けて、まさに破裂寸前な、チェーンソーのアイドリング音のようなイメージで制作されたと、本作のサウンドデザイナーのひとりであるウィル・ファイルズは語っている。

●CH21:Fixing The Falcon
不調に陥ったミレニアム・ファルコン。床下に潜り込んで修理するレイと、整備部品をキャッチボールするフィンの姿は、まるで『EP5』のハン・ソロとチューバッカのようだ。BB-8の「サムアップ」も見もの。そうこうするうちに、謎の貨物船にファルコンは捕獲されてしまう。牽引音が頭上高くにサラウンドするのも面白い。

●CH22:”Chewie,We’re Home"
ファルコンに乗り込んで来たのは、ハンとチューバッカだった!このシーンの撮影風景が特典メイキングに収められているが、その歴史的な瞬間を現場スタッフたちが幸せそうに眺めている光景が感動的ですらある。「あなたがハン・ソロ?」とレイに聞かれたハンは「昔のハナシだ」と返すが、これはハリソン・フォードが実生活でファンに声をかけられたときに、実際に言っている言葉らしい。さらにレイが「ケッセル・ランを14パーセクで飛んだ船!?」と聞くと「12だ!」と言い返すハン。一見さんには何のこっちゃ、という会話だが、これは『EP4』のタトウィーンの酒場での会話のリフレイン。この後、コクピットでの懐かしそうに微笑むハンの表情に、胸がいっぱいになったのは僕だけではあるまい。

●CH23:Corellian Standoff
犯罪組織グアヴィアン・デス・ギャングとカンジクラブに詰め寄られるハン。カンジクラブのタス・リーチとラズー・クイン=フィーを演じるのは『ザ・レイド』のヤヤン・ルヒアンとイコ・ワイス。公開時には日本語字幕担当の林完治氏をネタに、林カンジクラブなんて盛り上がっていたファンたちも。そして遂に、決めゼリフ「I’ve got bad feeling about this(イヤな予感がする)」も登場!

●CH24:Rathter Mayhem
実はファースト・オーダーの手先だった犯罪組織グループを宇宙怪物ラスターの暴走で煙に巻き、ファルコンで脱出に成功するハンたち。ラスターの大暴れをドルビーサラウンド再生すると、その咆哮の船内への響きがさらに臨場感を増すのでお試しあれ。宇宙船内を無数の触手を蠢かせて動き回るラスターは、韓国SF映画『第7鉱区』を思い出すが、あまりSWらしくないデザインとも言える。逃げ込んだファルコンがなかなか光速に入れないのも、シリーズのお約束の光景。その最中フィンがふと手に取ったのが、『EP4』でルークがライトセーバーの訓練に使ったシーカー・ボール!まだそこにあったのね(笑)

●CH25:Supreme Leader
新3部作における悪の黒幕、最高指導者スノークの登場。かつての銀河皇帝パルパティーンの登場シーンと同様、地を這うような低音のコーラスをバックに、巨大な姿のホログラムがハックス将軍(ドーナル・グリーソン)とカイロを圧倒する。そこで語られる衝撃の事実、カイロはハンとレイアの息子だった!

●CH26:”It’s All True"
ハイパースペースで不調に陥ったファルコン。そのエンジン音やコクピット内に鳴り響く警報音など、懐かしい効果音が次々と甦る。さらには『EP4』でR2とチューイが対戦していた、あのモンスターチェスまでも完全再現だ。BB-8が託されたルークの地図をホログラフで表示させると、その音も同様に音場に浮かぶという、細部まで凝りまくった音作りだ。ここでハンが語るのは、その後のルークがたどった運命だった。若い世代のジェダイを育てようとしたルークだが、ある少年の裏切りですべてが失敗に。大きく傷ついた彼は責任に耐えかねて姿を消し、最初のジェダイ寺院を探しに行ったのだという。ハンはレイとフィンに、ジェダイやフォースについて、最初は信じられなかったが、すべて本当に存在すると話す。そこは『EP4』で、若きハンがフォースについて語るオビ=ワン・ケノービ老人を鼻で笑ったあの場所だった。

●CH27:Meeting Maz
ハンたち一行は、緑の惑星タコダナにあるマズ・カナタの城へ。その酒場の入口には無数の旗が掲げられており、画面中央にはあのボバ・フェットの甲冑に刻まれていたマンダロア戦士の紋章も。タトウィーンを思い出させる雰囲気の酒場で、スカ風の楽曲「ジャバ・フロウ」を演奏しているバンド「シャグ・カヴァ」、そのボーカルの正体はJ.J.エイブラムス本人だ。マズは本作におけるヨーダ的なスタンスの人物で、フォースとの強い繋がりを持ち、長命を生き抜いてきた伝説の女海賊という設定で、モデルはJ.J.監督の恩師の女性。この役柄をモーションキャプチャで演じるのは、『それでも夜は明ける』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したルピタ・ニョンゴである。一方スターデストロイヤーの艦内では、カイロが祖父ダース・ヴェイダーのマスクに語りかける。光の誘惑を感じ続ける自分を、暗黒面へと導いて欲しいと。あなたが始めたことを終わらせるために、と。焼けただれたベイダーのマスクは、エンドアで荼毘に服された後、どうやって彼の手元にたどり着いたのか?ちなみに「タコダナ」という名前は、J.J.が初来日時に宿泊した「高田馬場」に由来する。ウソのようなホントの話である。

●CH28:Discussions Of Destinies
暗黒面との戦いの歴史をマズがレイたちに語るシーン。プリクエル3部作の「シス」、オリジナル3部作の「帝国」、そして新3部作の「ファースト・オーダー」と、形を変えて存在し続ける暗黒面との戦いは、未だ続いているのだ。そしておそらく、新3部作終了後も暗黒面との戦いは続いていくことだろう。ディズニーが止めない限り。

●CH29:Visions In The Force
本作と過去6部作を結ぶ最重要チャプター。フォースに導かれたレイが見つけたライトセーバー、それは『EP3』でアナキン=ベイダーを倒したオビ=ワンが拾い上げ、『EP4』で老オビ=ワンがルークに手渡し、『EP5』ではクラウド・シティでの対決でベイダーがルークの右腕ごと斬り落としたものだ。そんなライトセーバーをなぜ?と聞かれたマズは「良い質問ね、答えは今度」。これに手を触れたレイに、強烈なビジョンの奔流が流れ込んでくる。ここではベイダーの呼吸音のほかに、ヨーダとオビ=ワンの声も聞こえてくる、濃密なサラウンド音場を味わえる。実はこのシーンのために、ヨーダ役のフランク・オズとオビ=ワン役のユアン・マクレガーが新たにセリフを収録していた。特に最後の「レイ、これがお前の第一歩だ」というセリフについては、前半の「レイ」は老オビ=ワンを演じたアレック・ギネスのセリフから抽出されたもので、後半は新録されたものという、2人のオビ=ワン役者の共演となっているのだ。そしてこのビジョンの中で、カイロたちレン騎士団が大量虐殺を行ったカットが入っている。その画面右上をよーく見ると、うっすらと『EP6』のジャバ・ザ・ハットの城によく似た影が見えるのだ。ここはタトウィーンなのか?横たわる夥しい数の死体は誰のものなのか?さらに、飛び立つ宇宙船を泣きながら見送る幼いレイのカット。ここで彼女の手を引く人物は公開時には謎だったが、Blu-rayの英語字幕のト書きでその正体があっさり明かされてしまっていた。ジャンク屋のアンカー・プラットだったのだ。ではレイをアンカーに預け、宇宙船で旅立った人物とは誰なのか?

●CH30:Starkiller
ドルビーアトモス音場に響き渡るハックス将軍の演説の後、凄まじい重低音を伴って発射されるスターキラー基地からの赤き熱線。J.J.映画おなじみのレンズフレアと共に宇宙へと伸びゆく巨大な光が、次々と共和国の星を焼き尽くすその光景は、かつてのデス・スター以上に『機動戦士ガンダム』のソーラ・レイに近いイメージと言えるかも。その攻撃を受けた星々が崩壊する音が、観客の頭上に悲しく響く。ちなみにスターキラーという名前は、『EP4』制作スタート当時のルークのフルネームである、ルーク・スターキラーからとられている。

●CH31:First Order Invasion
ファースト・オーダーの大軍勢がタコダナを襲撃!タイ・ファイターの大群の飛行音、マズの宮殿の崩壊音がホームシアターを揺るがす。その最中、フィンはライトセーバーを起動させ、タイマン勝負を挑んできたストームトルーパーと激突する。ドルビーサラウンド再生では起動音がトップスピーカーからも鳴り響き、高く伸びた光刃を見事に表現。そしてこのストームトルーパー、フィンに「Traitor!(裏切り者!)」と叫ぶ様があまりにもキマっているため、ファンからはそのセリフをもじって「TR-8R」と呼ばれるまでの人気者に。

●CH32:Resistance To The Rescue
絶体絶命のハンたちのもとに、勇壮なマーチと共にポー・ダメロン率いるXウィングの大軍勢が飛来!タイ・ファイター群との一大空中戦は7.1chサラウンドが全開で、特にポーの見事な操縦テクニックにぴたりとシンクロした飛行音は、もう快感というしかない。

●CH33:Kyro Finds Rey
森の中に逃げ込んでいたレイのもとに、カイロのライトセーバーの音がじわじわと近づいてくる様を、サラウンドでリアルに体感。カイロのフォースで身動きできなくなるレイのシーンでは、フォースの重低音に加えて不穏なSEが音場を漂い、観る者まで不安な気分に。

●CH34:Reunion
レジスタンスの揚陸艇が到着。そこに乗っていたのは、レイアとC-3PO(アンソニー・ダニエルズ)だった。静かに流れ出すレイアのテーマがファンの郷愁を誘う。実はオリジナル3部作のキャスト復帰を聞いた際、いちばん不安だったのがキャリー・フィッシャーだったが、揚陸艇から降り立った姿は、「ああ、年齢を重ねたレイアがここにいるんだなあ」と素直に受け止めることができてホッとした次第。だけどセリフを話す声を聞いた時には、あれ?酒焼け?と感じるほどの、ハスキーなしゃがれ声には軽いショックも。そう言えばドロイドのはずなのに、C-3POの声もさすがに老けた気が。。。これが30年の時を重ねるということか。ちなみに3POの左腕が赤い理由は、マーベルコミック「STAR WARS SPECIAL: C-3PO #1」で語られている。これ、泣けます。このシーンをドルビーサラウンド再生すると、上空でまだ空中戦が続いていることがよくわかる。

●CH35:Resistance Base
イリーニウム星系のレジスタンス基地は、かつてのシリーズも撮影された、イギリスのパインウッドスタジオに建設されたセット。Xウィングやミレニアム・ファルコンなどはCGではなく、実物大のプロップがずらりと並んで壮観だ。その作戦司令室も『EP4』終盤のヤヴィンの反乱軍基地そっくり。そして遂にR2-D2が登場!だが彼はルークが消えて以降、スリープ状態で動かなくなっているという。カイロ・レンと化した息子・ベンについて、ハンとレイアが言葉を交わすシーンも印象的。ダース・ベイダーの虜となったベンを、彼らは叔父のルークに預けたが、これが最悪の展開に。息子と直面することから逃げるように、ハンもレイアも自分も世界に閉じこもってしまった。その間にスノークがベンを暗黒面に引き入れてしまったのだ。「あの子の心にはまだ光がある」というレイア。「ルークはジェダイだけど、あなたは彼の父親よ」。

●Ch36:Rey Imprisoned
スターキラー基地の拷問室で、レイは覚醒しつつあるフォースでカイロを圧倒する。カイロがヘルメットを置いた灰は、彼がかつて葬った敵の遺灰だという。カイロが探るレイの脳内イメージである「海」と「島」は、本作のラストに登場する島のことだろう。そうなると彼女は、過去にルークと共にあの島を訪れていることになるのだが…?レイは監視のストームトルーパーをフォースで操って脱出に成功するが、このストームトルーパーを演じているのは、何とジェームズ・ボンドことダニエル・クレイグ!彼がレイに吐き捨てるように言う「Scavenger Scum(スクラップ拾いのクズ野郎)」というセリフは、『EP6』で帝国軍将校がハンに言う「You Rebel Scum(反乱軍のクズ野郎)」へのオマージュ。レイの脱走に気づき、怒り狂ってライトセーバーを振り回す中二病患者・カイロ。「いまヤツに近づくとヤバいぜ」とばかりに逃げる2人のトルーパーがオカシい。

●CH37:Resistance Briefing
レジスタンス基地ではスターキラー基地の攻略会議は、『EP4』や『EP6』のデススター攻略会議さながらの光景。その中に『EP6』のアクバー提督がいるのがうれしい(アクバーの声を演じたエリック・バウアーズフェルドは、2016年4月に亡くなっている)。捨て身の攻撃に出撃しようとするハンとレイアの会話は『EP5』『EP6』も手がけた、脚本のローレンス・カスダンならではのもの。そしてこれが、2人の最後の会話となった。

●CH38:Starkiller Landing
ハンたちのファルコンは、ハイパースペースからの突入でスターキラー基地のシールドを突破。低空で雪の森を突き抜ける豪快な操縦ぶりは、『EP5』の小惑星群のシーンを思わせる。しかしカイロは、ハンの存在を感知してしまった。特典映像の未公開シーンには、ファルコン船内に乗り込むカイロの場面が収録されている。

●CH39:Base Infiltration
フィンとハン、チューイの3人はスターキラー基地に潜入。潜入時にハンが脱ぎ捨てるコートにご注目を。基地内をさまようレイが遠目に見るのは、「T-17?完璧だろ?」「どうかな、外れだね」と世間話をしている2人のストームトルーパー。実はロバート・ダウニー・Jrとヒュー・ジャックマンが演じているという噂?ちなみに『EP4』には、デス・スター内で「VT-16知ってるか?」「見てないが、面白いらしいな」と立ち話をするトルーパーがいた。フィンたちはキャプテン・ファズマを捕まえて、基地のシールドを解除させることに成功。彼女をどうするかという会話の中で、ハンが「ダストシュートはあるか?」「ゴミ粉砕機は?」とたたみかけてくるのは、もちろん『EP4』のあのシーンのこと。

●CH40:X-Wing Attack
シールド解除を受け、Xウィングの編隊がスターキラー基地へ突入!タイ・ファイター軍勢との大空中戦が展開する。ここではレジスタンスのパイロットに、ランド・カルリジアンと共にファルコンに乗り込んだパイロット:ナイン・ナンがいるのにご注目を!無数の機体が音場を飛び交う、ドルビーアトモス再生の大推薦チャプター。

●CH41:Rejoining Rey
レイとフィンたちが再会、スターキラー基地を脱出。潜入時にハンが投げ捨てたコートを、さりげなくチューイが拾ってあげるのが何ともイイ。受け取るハンの表情もまた絶妙なのだ。空中戦を見上げるハンたちの頭上を、戦闘機群の飛行音が飛び回るサラウンド感もチェックポイント。

●CH42:Into The Oscillator
スターキラー基地の中心攻撃ポイント、オシレーターの内部に直接乗り込むハンたち。その内部は『EP5』終盤で、ベイダーがルークの腕を切り落とす巨大な通風孔にあまりにもそっくり。その既視感にはファンなら誰しも胸騒ぎを覚えたに違いない。その不安はカイロたちが乗り込んでくることで、ますます大きくなるのだ。

●CH43:Father And Son
通風孔に渡された細長い通路の上で、ハンとカイロ・レン…もとい、ベンは遂に再会を果たす。ハンは父親として、息子と向き合うことを決意するが…。通路を照らす光の変化の演出、そしてエモーショナルな音楽が素晴らしく、SWサーガ屈指の名場面に仕上がったと言えるだろう。ベンがハンを光刃で貫く、凄まじい低音が観客の心をも揺るがす。ハンはそれでも、息子の顔にそっと触れた後、底知れぬ孔へと落下していく。「ありがとう、父さん」と呟くベンは、この瞬間、真の暗黒面の使者カイロ・レンとして大きな成長を遂げたのだ。そんなカイロを怒れるチューイが狙撃し、オシレーターを内部から爆破する。

●CH44:Dark Forest
雪が降る森へと脱出したレイとフィンの前に、ライトセーバーを手にしたカイロが立ちはだかる。撃たれた傷跡を殴る行為は、暗黒面の力を呼び起こそうとしているという説もある。フィンもライトセーバーで戦いを挑むが敗退。雪に埋もれたライトセーバーをフォースで引き寄せようとするカイロだが、それは彼の目の前をすり抜け、レイの手中に。高らかに鳴り響くのは『EP4』アレンジのフォースのテーマ。帝国に惨殺されたオーウェン叔父とベル叔母の姿を目撃したルークが、タトウィーンを捨ててジェダイになることを決意する瞬間に流れた旋律だ。ここでこのメロディが使われた理由は、もう書くまでもないだろう。

●CH45:Oscillator Breached
オシレーターに最後の攻撃を加える、ポーたちXウィング編隊。猛スピードでトレンチを飛行する編隊は、もう完全にデス・スター攻略のリプライズだ。『EP6』クライマックスと同様、ポーはオシレーター内部に突入して急所を爆撃することに成功。

●CH46:Forest Duel
レイとカイロがライトセーバーで激突。『EP1』の頃のように洗練されてはいないが、『EP4』の老オビ=ワンとベイダーの戦いよりは遙かにパワフル。光刃がぶつかり合う衝撃音も、観客にびしびし伝わってくる。レイの初ライトセーバー戦は、勢い圧しなのが説得力たっぷりだ。現場では実際に光るライトセーバーのプロップで撮影が行われていており、照り返しのリアルさはそこに起因するもの。光刃の激突音も身体に響いて素晴らしい。シリーズ伝統の「右手斬り」は今回はなかったが…これほどまでにオマージュをブチ込んできたスタッフのことだ、きっと次回で誰かの手が斬り落とされるに違いない?

●CH47:Cataclysm
崩壊寸前のスターキラー基地、凄まじい地鳴りと警報音が四方八方で鳴り響く。倒れたフィンにすがるレイの前に、チューイが操縦するファルコンが救出にやってくる。かくしてスターキラー基地は内部崩壊から凄まじい爆発を起こし、ファルコンとXウィングの編隊は辛くも脱出、レジスタンス基地に生還する。レイアとレイは初対面のはずだが、フォースの交流がなせる業か、お互いの存在と感情を共有しているかのように抱き合う。しかしここでは、ハンを失ったチューイがレイアの顔を見ても、リアクションがあっさりし過ぎていたと、J.J.監督は反省しているらしい。

●CH48:Made Whole
わずかな秒数ではあるが、ひとり悲しむチューイの姿が映し出される。そして遂に、R2が長い眠りから醒める。まるでスターキラー基地の崩壊を待っていたかのようなのが、ちょっと気になる。それでいいのかルーク(笑)。R2に隠されていた地図とBB-8の地図を組み合わせると、ルークの星への道筋が明らかに。

●CH49:Finding The Master
眠り続けるフィンに別れを告げ、レイはチューイとR2とともに、ルークの星に向かうことに。レイアはレイに「フォースと共にあれ」と言葉をかけるが、これは本作でこのフレーズが使われた唯一のシーン。離陸するファルコンに手を振るC-3POの右腕が、よく見ると赤から金色に戻っている。これは3PO役のアンソニー・ダニエルズが赤い腕を気に入らず、現場でJ.J.と議論を重ねた結果の折衷案なんだそう。そして多くの人々の艱難辛苦の果てに手に入った地図の割には、ファルコンはだいぶあっさりとルークの星に到着した印象だが…ここで遂に、レイはルーク・スカイウォーカーに出会う。その義手の右腕、メカがむきだしになのも気になるところ。ライトセーバーを手にしたレイを、ルークは複雑な表情で見つめる。その胸中にある思いとは一体?SWには珍しい、空撮のパンニングショットで本作は幕を閉じる。

●CH50:End Credits
おなじみ丸ワイプとファンファーレで始まるエンディングには、やっぱり「ああ、『スター・ウォーズ』を観たなあ」という気持ちになり、心地良い余韻が楽しめるはずだ。しかし本作に続く『EP8/最後のジェダイ』と『EP9/スカイウォーカーの夜明け』のことを考えると・・・むむむ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?