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SDSノート_17-18「ソーシャルダイブ・ラボ」集中ウィーク

こんにちは。ソーシャルダイブ・スタディーズ(以下 SDS)、コーディネーターの工藤大貴です。今回は8/18と8/21に実施されたソーシャルダイブ・ラボとその補足回のレポートです。前回までのSDSについては下記をご覧ください▼
5月29日に始まった、ソーシャルダイブ・スタディーズ(SDS)もいよいよ佳境。ゲストのみなさまと、初開催で全貌が見えないなかで果敢にSDSへダイブした1期生のみなさまには感謝の気持ちしかありません。

SDSは参加者1人ひとりが東京を舞台にしたアートプロジェクトを企画立案することが特徴のひとつです。アートやクリエイティブ業界の方ばかりではないので、多くの参加者が手探りの試み。9月25日に行われる企画発表会に向けて、この週は企画立案のサポートを担当する青木彬さんとともに、みなさんのアイデアを深掘りする1週間となりました。

今回は私、工藤からその記録をご紹介します。


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8月18日、この日は完全オンライン開催。SDS統括の宮本武典さんと企画立案をサポートする青木彬さんが、それぞれオンライン上で参加者たちの企画に対してフィードバックをおこないました。

自身の問題意識や興味関心から、移動式アートギャラリーを発案するひと、食と街とアートをつなぐひと、野花をギフトするアイデアを考えるひと、さまざまです。

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周りの参加者への宮本さん青木さんの言葉が、実は自分の企画の参考になることもあったりして、90分というレクチャー時間全部で学びを深めていきます。そんななかで印象的だった参加者の声を列記してみます。

・「社会のなかで肯定される場所をつくる」

・「小さなアクションで見なれぬ景色を変えてゆけるか」

・「1つの場所で偶発性を生むのか、巡りながら体験するのか」

・「日本のドーム建築は外国のモスクのように壮大なものだけでなく、かまくら的な小さな存在もある」

・「アートプロジェクトのなかにひそむ包摂と排除を見出したい」

参加者のバックグラウンドが多様だからこそ、それぞれの立場から発せられる言葉にハッとすることが多いです。

なかでも、私が興味深く思ったのは小谷さんのプロジェクトです。入院患者の食事のプレートにポストカードを添えるというアート企画。小谷さんはまず、病院に勤めるご家族から聞いたエピソードを話してくれました。

「患者さんに食事を配る時、病院側で添えている(おそらく1人ひとりの食事メニューが異なるため、間違いをなくすため)患者さんのお名前とそれぞれの食事内容が書かれたカードがあるんですけど、それを集める人がいるらしいんです」

理由はきっとそれぞれだと思います。日1日の闘病の記録を残したいひと、病院側のちょっとした気遣いが嬉しくて捨てられないひと、変化が少ない病室で変化を感じられる食事とそのカードが楽しいひと、食事の栄養バランスを知っておきたいひと...。

カードを集める思いはいろいろありますが、人のちょっとした気持ちの揺れがそこに現れているような気がして、その小さな動きに着目したことが面白いなぁと感じました。

小谷さんの話を受けて青木さんがご紹介したのが「チア・アート」という取り組みです。

もともと、筑波大学が近隣病院と協働でおこなってきたアート・デザインプロジェクトがNPO法人へと発展したとのこと。医療現場は関わっていくのに少し時間がかかるかもしれないけど、息の長い企画になるといいですね。

ふと私が思い出したのは秋田県にかほ市で行われている「まちびと美術館」という取り組み。にかほ市出身の故・池田修三さんという版画家の作品を街中に展示する企画ですが、昔からこの街では池田さんの版画が愛されていて、家々で飾れてきました。生家である池田医院の待合室も同様で、愛くるしいカラフルな版画が無機質な空間にかかっています。

その街に根ざしたアーティストとの協働などであれば、地域や医療現場の理解も得やすいのかもしれません。

NHKで放映されている「病院ラジオ」も、患者さんと家族や病院外のひとをつなぐコンテンツです。SDSでレクチャーをしてくださった山崎亮さんは、先行事例を調べる大切さを話していました。それぞれの企画に類する取り組みを知ることから気づくこともあるのかもしれません。

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8月21日は、150文字に思いを詰めこんだステイトメントと企画詳細(いつ、どこで、どんなことをやりたいのか)を持ち寄った参加者たちへ、宮本さん青木さんによる企画のフィードバックをおこないました。1か月後に迫った企画発表会に向けて、日に日にブラッシュアップが進んでいきます。

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私が印象的だったのは寺本さんの詩にまつわる企画です。中野重治さん著『夜明け前のさよなら』を街で朗読するという内容で、シンプルゆえに企画実施の可能性が高いこともいいなと思います。

正岡子規の生地でもある愛媛の松山市には俳句ポストが多数点在しています。どなたでも俳句を書いて投函することができ、その歴史は半世紀におよびます。俳都とも呼ばれる松山では、市民が文芸と接する機会をこのように長い間着実に設計しています。これをアートと呼ぶのかはわかりませんが、1つのデザインであり、まちづくりだなと感じます。

詩も俳句もどこか難しかったり面白みが伝わらないことがあって、ニッチになりがちだと感じることが多いので、今までそういった分野に関心がなかったひとにも響く企画になると素敵だなと思いました。

先日、又吉直樹さん・せきしろさん著『蕎麦湯が来ない』を読みました。自由律俳句で日常のちょっとしたできごとを綴っていくのですが、まさに自由な表現ですらすらと読んでいけます。そういった軽快さを少し添えていくことも今回のようなアートプロジェクトでは大切なのかもしれません。

第17-18回レクチャーの記録はここまでとなります。第1回SDSもまもなく幕切れ。ですが、9月25日の企画発表会を経て、そこから実際に企画実施へ走りだすひともいると思います。東京ビエンナーレで渦のようなエネルギーを受けとった参加者が、街とアートの次の可能性をつくっていくことが今から楽しみです。それでは、またSDSノートにてお会いしましょう。

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