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ブランクーシ『空間の鳥』〜単純化されすぎて、税関で芸術品と認められず

コンスタンティン・ブランクーシ(1876年-1957年)は、ルーマニア出身の革新的な彫刻家。対象の本質を捉え、単純化した形態で表現することに成功しており、対象の形態から完全には離れない独自のアプローチをとっています。また、彫刻とその台座を一体の作品として捉え、共に制作することで作品全体の調和と統一感を重視しました。

その代表作である『空間の鳥』では、飛び立とうとする鳥をプロペラ型に抽象化して表現しています。作品は、約1.3メートルの高さで、中央に丸みを帯びた黄金色の細長いブロンズ製で、先細りの形状をしていました。その単純化したフォルムゆえに、展覧会展示用に輸出された際、税関では美術品と認められず工業製品と判断される騒動が起きてしまいます。

コンスタンティン・ブランクーシ《空間の鳥》1926年(1982年鋳造) ブロンズ、大理石(円筒形台座)、 石灰岩(十字形台座・ジグザグ形台座)
コンスタンティン・ブランクーシ《空間の鳥》(1926、鋳造は1982)横浜美術館所蔵

アメリカで開催される展覧会のために、ブランクーシの『空間の鳥』がニューヨークの大回顧展に向けて輸入されました。展覧会のキュレーションは、ブランクーシの長年の友人であり支援者でもある芸術家マルセル・デュシャンでした。

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