見出し画像

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『ヒュラスとニンフたち』〜絵の撤去後に残された貼り紙

『ヒュラスとニンフたち』は、1896年の作品。この作品は、オウィディウスやその他の古代の作家たちの記述に基づいて、ギリシャ神話における悲劇的な若者ヒュラスの物語の一場面を描いています。ヒュラスは、イアソンとアルゴナウタイの探求の一員として、彼らの冒険に同行していた時に、水を汲みに行った際に水のニンフたちに誘惑され、最終的には彼らによって水中に引き込まれるという物語です。この伝説は、古代ギリシャ文学や芸術において頻繁に取り上げられており、ヒュラスの物語は、美と若さの移ろいやすさ、自然の魅力とその危険性といったテーマを象徴しています。

描いたのは、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス。ちょうどラファエル前派と同時期に活躍していた神話や文学作品に登場する女性を題材にしたことで知られるイギリスの画家。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『ヒュラスとニンフたち』1896年 マンチェスター市立美術館

2018年のイギリスのマンチェスター市立美術館による絵画の撤去騒ぎが起きます。突然この『ヒュラスとニンフたち』が撤去され、この絵のポストカードも販売から外されます。『ヒュラスとニンフたち』が展示されていた場所には、「ギャラリーは、私たち全員に影響を与えるジェンダー、人種、セクシュアリティ、階級の問題が絡み合った世界に存在しています。どのようにすれば、芸術作品がより現代的で適切な方法で語ることができるのでしょうか?」という貼り紙が残されました。21世紀の現代文脈において、コレクションに関してどのような議論が交わせるかを問う内容でした。

ここから先は

617字
ヴェルデさん、かるびさんなど美術ライターも参加していただきました。それぞれの切り口のいろいろな読み物がが楽しめます。

アートな読み物

¥100 / 月 初月無料

いろいろとアートのまつわる読み物を不定期で投稿していきます!

皆さまのお気持ちは、チケット代、図録代とさせていただきます。