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ルーベンス『キリスト昇架・降架』〜『フランダースの犬』に見る日本人と欧米人の文化観の違い

『フランダースの犬』は、画家を夢見る少年ネロと彼の愛犬パトラッシュの物語です。日本でもアニメーションにもなってました。物語の最終回、ネロは絵のコンテストに参加しますが、残念ながら落選してしまいます。しかし、彼の才能を見抜いた審査員がネロを引き取り、将来を支えようとしますが、すでに時遅し、家賃が払えず、ネロとパトラッシュは家を引き払った後。吹雪の夜、行く当てのないネロは街の教会に向かいます。普段見るにはお金がかかり、見ることのできないルーベンスの絵にかかっていたカーテンが開いていて、絵を直近で観ることができました。見ることが念願だったネロはその前で横たわり、ネロを追ってきたパトラッシュもそばに寄ってきます。その絵の前で、ネロとパトラッシュは、天使たちに迎えられてしまいます。この悲劇的なエンディングは、多くの見た方に涙をもたらし、『フランダースの犬』は日本の人々に愛される作品となりました。

ピーテル・パウル・ルーベンス《キリスト昇架》1610年 - 1611年

物語のクライマックスでネロが見たとされる『キリスト昇架』『キリスト降架』を描いたピーテル・パウル・ルーベンス。

ピーテル・パウル・ルーベンス《キリスト降架》1611年 - 1614年

17世紀初頭のフランドル出身の画家、ルーベンスはバロック美術を代表する画家として知られます。23歳でイタリアへと旅し、ティツィアーノやカラヴァッジョといった巨匠の作品を研究し、その影響から豊かな色彩感覚と劇的な表現を、また、ルネサンスの名手、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロの作品を通じて、人体の描写や作品の構図における深い理解を得ました。32歳で故郷のアントウェルペン(アントワープ)に戻ると、彼は自らの工房を開設。その後、多くの優れた作品を生み出しましたが、中でも『キリスト昇架』と『キリスト降架』は、バロック期の宗教画としての頂点と評されるもので、これらの作品はルーベンスの名を不朽のものとしました。

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