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スタンラン『Tournée du Chat noir』黒猫のポスターで知られるモンマルトルの丘の伝説のキャバレー

「ル・シャ・ノワール(黒猫)」は、ロドルフ・サリが1881年11月にモンマルトルの丘に作ったキャバレーの名前。1896年にテオフィル・アレクサンドル・スタンランが制作した「トゥールネ・デュ・シャノワール」のポスターで特に有名で、数多くの複製が作られています。このポスターは、ベル・エポック時代のパリを象徴する美しいイメージの一つとなり、観光客向けの店舗では多くの商品にそのデザインが使われています。店名の「黒猫」は、エドガー・アラン・ポーの小説「黒猫」に由来しているとも、サリが物件を見に訪れた際に、偶然その場に黒猫がいたことがきっかけとも伝えられています。

ポスター上部には「Prochainement」(近日上演)、「Tournée」(巡業)、「CHAT NOIR」(キャバレーの名前)、「Rodolphe Salis」(キャバレーのオーナーの名前)が記載されています。

スタンランによる『ル・シャ・ノワールの巡業』1896年

このポスターは、幅40センチメートル、高さ62センチメートルのカラーリトグラフで、黄色と赤の背景に黒猫が描かれています。猫の頭部は赤い後光に囲まれ、その中には中世の雄叫び「モンジョワ!サン・ドニ!」をもじった「モンジョワ・モンマルトル」という標語が刻まれています。

キャバレー「ル・シャ・ノワール」とは?

「ル・シャ・ノワール」は、19世紀末のパリ・モンマルトルでロドルフ・サリスが開いた、世界初の近代的キャバレーとされるナイトクラブです。1881年にオープンし、客はテーブルでアルコールを楽しみながら、ステージ上のバラエティショーを観賞できました。全盛期には、芸術家たちのサロンであると同時に、賑やかなミュージックホールとして機能し、パリの文化的発信地としての地位を確立しました。また、1882年から1895年まで同名の週刊誌を発行し、文学やモンマルトルのニュース、政治風刺などが掲載され、当時の知識人や芸術家に大きな影響を与えました。1897年に閉店しましたが、「ル・シャ・ノワール」はキャバレー文化に大きな影響を残しました。

「ル・シャ・ノワール」には、多くの著名人が集いました。例えば、ダンサーのジェーン・アヴリル、詩人ポール・ヴェルレーヌ、作曲家クロード・ドビュッシーやエリック・サティ、歌手兼コメディアンのアリスティド・ブリュアン、画家アンリ・リヴィエール、ポール・シニャック、そしてアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックなどがその一部です。

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