スワローズ初優勝の立役者となった鈴木康二朗投手の訃報に触れて思うこと

1970年代初旬から1980年代にかけて、スワローズとバファローズで活躍した鈴木康二朗投手が、2019年に亡くなられていたことが報じられた。


鈴木康投手は、自分が幼少期だった頃からスワローズで活躍し、80年代前半にトレードでバファローズへ移籍してからも抑え投手としてタイトルを獲得するなど、一時代を築いた選手である。


一般的な鈴木康投手のイメージは、1977年にジャイアンツの王貞治選手に、MLBのハンク・アーロン選手の本塁打記録を更新する通算756号本塁打を被弾した投手だろう。


だが、いちスワローズファンとしては広岡監督が率いて球団初の2位となった1977年、球団初のリーグ優勝・日本一を成し遂げた1978年の活躍など、スワローズが新たな歴史を切り拓いた時期を支えた好投手というイメージである。


自分はファンになった頃のスワローズは、投高打低のイメージがあった。松岡弘投手、安田猛投手、浅野啓司投手の先発三本柱は、リーグでも有数だったと思う。だが、1976年のシーズン終了後に、浅野投手が倉田誠投手とのトレードでジャイアンツへ移籍した。当時の自分はチーム有数の先発である浅野投手をジャイアンツにトレードしたことに疑問視するとともに、交換相手の倉田投手はピークを過ぎていた印象があった為、全く納得していなかった気がする。


浅野投手がトレードで抜けた1977年に、広岡監督はそれまで先発としての実績がほぼ皆無だった鈴木康投手を先発ローテーションの一角に据えた。鈴木康投手が王選手に756号を被弾したのはこの年だったが、先発として14勝(9敗)を挙げた。前年まで通算2勝しかしていなかった鈴木康投手の台頭は、広岡監督の選手に対する優れた目利きの一例だろう。


スワローズは1978年に初優勝・日本一となった。その要因として、投手であればエースの松岡弘投手がクローズアップされることが多い。この年に松岡弘投手が大活躍したのは間違いないが、春先の松岡弘投手は結果が振るわなかった。その為、広岡監督はシーズン中にも関わらず、松岡弘投手に約1カ月間のミニキャンプを課した。スワローズはエースの松岡弘投手が不在の状況で、ペナントレースを戦っていた。


松岡弘投手が不在の時期に、鈴木康投手が月間MVPを獲得する活躍をしてチームを支えた。個人的にはこの年の6月初旬に開催された神宮球場ジャイアンツ戦で、船田選手や角選手の活躍で勝ち越したことで、初めて優勝を意識した。当時は初の開幕投手に指名された安田投手と鈴木康投手が中心的存在だった。


1978年の鈴木康投手は13勝3敗で最高勝率投手となった一方で、ペナントレースの大一番や日本シリーズで好投した印象は乏しい。日本シリーズでは第3戦に先発したが5回3失点で敗戦投手(ブレーブスの足立投手が完封)。スワローズが王手をかけて挑んだ第6戦も先発したが、3回に大量6失点して再び敗戦投手となった(ブレーブスの白石投手が圧巻の投球)。


その後も1980年に二桁勝利を挙げるなど、先発を中心に活躍していた。だが、1982年のシーズン終了後に、バファローズの井本投手とスワローズの鈴木康投手と柳原選手のトレードでバファローズに移籍。鈴木康投手はバファローズ移籍後は、中継ぎ・抑えとして大活躍した。かたや、スワローズが獲得した井本投手は期待に応えられず、僅か2年で退団となった。


スワローズのトレードを振り返ると、個人的には1978年シーズン後のマニエル選手・永尾選手と神部投手・佐藤選手・寺田選手の2対3のトレードと1982年シーズン後の鈴木康投手を含む2対1というバファローズとの2件のトレードは、結果的に大失敗だったと思う。この2件のトレード失敗が、初優勝翌年の最下位と1981年から10年連続Bクラスとなった遠因だとさえ感じている。


鈴木康投手は松岡弘投手、安田投手程には語り継がれていない感があるが、スワローズの球団史を彩る投手の一人に数えられると思う。外見はスマートな雰囲気でタフな投手だった。個人的にはスワローズ背番号「21」と聞いて思い浮かぶのは鈴木康投手である。


亡くなられてから3年以上が経過しているようだが、リアルタイムで鈴木康投手の活躍を観ることができたいちスワローズファンとして、哀悼の意を表したい。

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従来はフリーブログでしたが、今後は対象読者を限定する形で運営します。商業メディアでは深掘りされにくい印象のあるスワローズに関して、自分なりの私感を記せればと思います。新規の方はAmebaブログの過去記事(https://ameblo.jp/yuujin0929/)に目を通した上で、読んでみたいと思っていただけるようであれば幸いです。

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