8年経っても忘れられない味

牛ほほ肉のラグーソース

ドナで食べたミートソースの味が、地震のとき仙台で食べたラグーソースの味に似ていた。

じつは、地震の翌日でもいくつかの飲食店は営業していた。
プロパンガスの中華料理店なんか普通に開店していたし、メニューも通常メニューだったと思う。
ガスと食材が尽きるまで。

やがて仙台市中心部も復電し、お水が出て、都市ガスが戻った。
でも物流だけはガタガタだった。
飲食店も閉まったままのところが多かったけど、当時の職場の近くのトラットリアがあいてた。
メニューはスパゲティふたつだけ。
・アーリオオーリオ
・牛ほほ肉のラグーソース
牛肉とか豪華でしょ?
あっ、これ、でも、日持ちするやつだ、ってすぐ気がついた。
明日も明後日もこれを出すんだ。
牛ほほ肉のラグーソースは少なくて、しょぼくて、お肉なんか殆ど入ってなくて、でもとっても美味しかった。

じつは未だに仙台に行くときそのお店が残ってるか確認する。
人気店だからひとりではなかなか入れないけど、ちゃんと生き残っていることを確認してる。
牛ほほ肉のラグーソースは、じつは定番メニューではないことがあとでわかった。
二度と食べられない味だ。
そのせいだろうか、ほかのお店でもラグーソースがあったら注文してしまうし、この味に近い味だったら泣きそうになる。

塩おにぎり

最近コンビニでもよく出てきている「塩おにぎり」も地震のとき食べた味だ。

https://www.lawson.co.jp/recommend/original/detail/1328592_1996.html

当時の職場も例によって壊滅的な被害を受け、1ヶ月くらい仕事がなかった。
仙台市中心部で2番めにいいビルだったこともあってビルは無事だったけどソフト面、インフラ、働く人たちが壊滅的な被害を受けてた。
2週間くらい経って、出勤が可能な人たちは出勤して片付けをすることになった。節水のため、全員スッピンだ。

八乙女から来ていた職場のおばちゃんが自身も被災したにもかかわらず、職場の人たちにおにぎりを配っていた。
でかいおにぎりだ。
復電が比較的早く、ごはんを炊くことができたのだという。
おばちゃんはおにぎりを配りながらこんなことを言った。
「具がなくてごめんね」
その発言はあまりにも衝撃的で、わたしはいただいたおにぎりをかみしめながら泣いてしまった。
不思議なもので、咀嚼すると反射で涙が出るしくみがあるらしい。

8年が経ったいまでも、その塩おにぎりを超えるおにぎりを食べたことがない。

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