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写真はエロスか 〜写真が持つエロティシズムとは〜

こんにちは、路上写真家のTokyo Street PIX/TPIXです。

今日は、写真が持つ神秘な力について考えてみたいと思います。

タイトルにもある「エロス」という言葉だけを見てしまうと、「性的」「エロい」「エロ写真」など卑猥なイメージを抱いてしまうかもしれませんがそうではなく、写真というメディアが、単なる性的表現に限定せず、欲望や生命力、人間の本質に迫るものとして捉え、写真とエロスについて深掘りしてみたいと思います

写真表現の基本のひとつとして、ヌード写真に限定せずとも、単なる景色や情景を撮った写真においても「性的な色っぽさ」を感じることはないでしょうか。

エロスといえば、プラトンが『饗宴』の中で、人間が「美」を求める欲望と位置づけ、肉体的な欲望から精神的な高みへと導く力を持つものであり、人間の探究心や創造性、自己超越を促す原動力とされています。

これは視覚芸術でもある「写真」にも通じるもので、写真を観たときの視覚的快楽を超え、より深い感情や思索を促し、美や真実、あるいは人間の存在を探究するエロスな側面が写真を見る行為に潜んでいるとも言えるでしょう。

撮影:Tokyo Street PIX.  @田町

では、写真におけるエロティシズムの構造とは何でしょうか

まず、被写体そのものがエロティシズムではなく、撮影者と被写体、そして鑑賞者との間に生まれる「関係性」そのものがエロティシズムといえます。

これは、カメラという装置を通じて、現実の一部を切り取り静止したイメージに変換することで、鑑賞者に「見られるべきもの」「見せたいもの」を提示します。

この提示には、必ず撮影者の意図や感情が反映されており、写真はその意図を視覚的に表現する一種の「欲望の媒体」として機能します。

鑑賞者は、撮影者がこの被写体を通じて伝えたいことは何なのかを解釈し、自らの欲望や感情と対話することが、プラトンが言及したエロス的な「美を追い求める行為」に通じるものです。

特にポートレートでは、被写体であるモデルと撮影者、鑑賞者の関係が強化されるジャンルですので、理解しやすいと思います。

モデルの肉体的な魅力に限らず、その人が持つ「内面的な欲望や個性」に対する興味や共感が生まれ、写真が「知りたい」「触れたい」という根源的な欲望から、更にその背景にある「未知の領域」までより深く感じたいと思う欲望さえ誘発することを知っておいたほうが良いでしょう。

この根源は、 “欲望と不在” という写真の二重性が、写真のエロティシズムを形作る要素となります。

写真は現実を切り取ることでその瞬間を永遠に残すことができますが、同時にそこには存在しないという「不在」をも意識させます。

撮影:Tokyo Street PIX.  @有楽町

例えば美しい風景写真を見ても、その瞬間にあったはずの風や音は感じることはできず、鑑賞者はその不在に引き込まれてしまいます。

この「不在の意識」こそがエロス的な経験であり、さらなる「欲望」を感じさせることに繋がります。

また、写真はその欲望を未完のままにし、次の瞬間、次のイメージを求めることを仕向けます。これが「渇望」です。

今日のお話は少し哲学的な方向になってしまいましたが、この渇望こそがエロスの本質であり、写真というメディアが持つエロティックな側面ではないかと考える今日この頃です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。またお会いしましょう。路上写真家のTokyo Street PIX/TPIXでした。

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