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#おうちでプライド2021振り返り!~社会運動とエンターテインメントが、日本でももっと手を組めたなら~

こんにちは。はじめまして。臼田廣子と申します。
私は東京レインボープライド(以下TRP) エンターテインメント局(以下エンタメ局) 局長を務めています。
私は日々コンテンツ&イベントの制作プロデュース、アーティストマネージメント等の業務を行う小さな会社を経営しています。バタバタ走り回っています。それが本職です。

そしてTRPの中枢である「執行部」の一員になって早5年。過去に新宿2丁目で数年イベントを開催していたことがきっかけで、TRPと縁をしました。LGBTQシーンが長い歴史をかけて放ってきた「エンタメカルチャー」に魅せられたひとりです。性自認は女性、パンセクシュアルです。

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さて、TRPのエンタメ局。それはどんな部局かと言いますと、簡単に言うと「エンタメ性」のあるイベントや動画コンテンツなどを企画・制作する部署、といった感じでしょうか。

具体的には、毎年GWに代々木公園で開催している「プライドフェスティバル」のステージ制作や、TRPのYouTubeチャンネルの動画コンテンツの一部制作他、広告効果が高く娯楽性を内包するようなコンテンツプロデュースを行います。

具体的に言うと、去年から始めたTRPチャンネルで、すなっくニューレインボーはそのひとつです。

タレントさんやアーティストさんのキャスティング・ブッキング、ステージなどのイベントの場合は、音響さん照明さんなどの関連業者のアサインや調整も担当業務ですね。

そして、企画力も結構重要で、「こんなコンテンツが必要だね、あったら良いね、楽しいね、拡がるね」とゼロから1を生み出し夢を膨らませて実現に導く役割を担っています。TRPのミッションに寄り添い、必要と思われるコンテンツ発案はどんどん行なっていきますが、まだまだ足りてはおりません。そして私の勉強も追い付いてはおりませんが生み続けるしかありません。そんな状況にあります(笑)
ちなみにこのエンタメ局は、2019年に組織されました。コンテンツを企画してみたいよ!プロデュースしてみたいよ!という方、絶賛募集中です。
代々木公園のステージの様子はこちら↓↓(TRP2019)代々木公園のステージの様子はこちら↓↓(TRP2019)来年代々木公園のステージの様子はこちら↓↓(TRP2019)


ここで私とTRPの関係性をサラっと時系列でお伝えしますと…
【TRP2013】 
自社のアーティストが司会を担当させて頂きました。
アーティスト:キムビアンカ 
(知っている人もいらっしゃるかと思います)

【TRP2014】 
同じく司会続投

【TRP2015】 
ステージキャスティングの一部を担わせていただきました
(清水ミチコさん、IMALUさん)

【TRP2016】
アーティストのアテンドを行っています(Charaさん)

【TRP2017】 
代々木公園 プライドフェスティバルステージ部門・部門長に。
ステージ全体のプロデュースとキャスティングを行いました。
(中島美嘉さん)

【TRP2018】 
同じくステージ部門長・プロデュース続投。
浜崎あゆみさんにご出演いただいた年ですね。
エンターテインメントの底力を感じた年でした。

【TRP2019】 
エンターテインメント局発足、局長着任兼ステージ部門長続投。
これまでの代々木のステージ演出を変化させ、世間一般に開催されている「音楽フェス」に近いステージ演出にトライしました。
そしてプライドウィーク内に「Youth & Family Pride」というイベントも立ち上げ、開催しましたね(今のYouth Pride Japanの前身です)。
これはニューヨークで毎年プライド月間に開催されているイベント「Youth Pride」に感化されて制作をスタートしました。

FireShot Capture 016 - (33) 【TRP2021】東京レインボープライド 10年間のあゆみ - YouTube - www.youtube.com


そして、TRP2020。コロナウイルス打撃。

まさかのプライドフェスティバル開催中止。TRPとしては、急遽かつ初のオンライン開催への舵切りをしました。この時は緊急事態宣言下で、日本だけでなく世界がどうなっていくかも分からないそんな状況の中で、何がなんだかもうよくわからないままに制作とキャスティングの半分を行いました。

2週間ちょっとで作ったオンラインイベントTRP2020「#おうちでプライド」はこちら↓↓↓


そして、Pride Monthの最後の週末。
4月24日、25日に開催したTRP2021「#おうちでプライド2021」のダイジェストムービーができました!本日公開なので、こちらもぜひご覧ください!

TRP2021「#おうちでプライド2021」

さて、ここまで読んでくださった方の中には、
「なんでTRPにエンタメ性が必要なの?LGBTQ当事者のための人権活動団体でしょ?社会運動でしょ?TRPは当事者のための団体なのだから、芸能人はいらなくない?」
と感じた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

実はこれ、何かコンテンツを放つたびに、本当によく寄せられる皆様からの言葉なのです。「LGBTQ当事者じゃないタレントをなぜキャスティングするのか、当事者でかためるべきでは?」と。今年は例年にも増して、多くのこのようなお言葉をいただきました。
毎年いつもいつでもこれらのご意見を浴びながら、それでも制作をやめないTRP。そして私(笑)それにはしっかりとした理由があります。


まず理由「1」。
私たちTRPのメンバーは皆、未来を良くしたい、社会を良くしたいとまっすぐに思っています。その想いで結束しているチームです。
社会を良くする。それは、LGBTQ当事者であるなし関わらず、皆が生きやすい社会を作る、という意味です、そのためにはまず何を行う必要があるのか。突き詰めていくと、当事者・非当事者が共に互いの存在を知り、正確な知識や情報を伝え合い、理解し合うこと、その上で変わらなければならないことがでてきたら、変えていきましょう、ということだと思っています。

しかしそうは言っても現実問題、互いの違いや悩みを知る、認める、受け入れる、ってとても大変。それ以前に、ほとんどの人が、日々自分のために生きていて、自分のことを幸せにするので精一杯なのではないでしょうか。
他人のことはどこかでやっぱり他人事。どうだっていいや、関係ない。だって現実社会は荒波だらけ。生きるってそんなに簡単なことじゃない、わかっちゃいるけど理想的にはいかないですよ、自分のことだけで精一杯よ!と。

私だってそんなことはしょっちゅうです。でもそれでもそこに抗って、そんなことはわかっているけれどそれでもなんとか「他者が抱える問題」を「自分事」に意識して欲しい、そうじゃないと誰もが生きやすい社会は作れない。そのためには、「多くの人のアテンションを引きつける何か」を催さなければなりません。ハッとしていただかなくては。あ、そうか、それは大事なことだ、自分も知って理解しておかなきゃいけないな、と。
そのための、エンターテインメントの存在、著名な人たちの存在なのです。

私たちが招くタレントさんやアーティストさんのファンだから知った、でも、ちょっと気になるから遊びに行ってみようと思っています、ライブを観たいです、でもなんでもいいのです。
他人事に少しでも当事者意識を持ってもらい、LGBTQという単語に触れてもらうこと、空気を感じてもらうこと、まずはそんなきっかけとなればいいのです。
そしてそのきっかけを作ることが本当に難しいのです。だってみんな自分のことで忙しいのですから精一杯なのですから。そんな大変な「きっかけ」として一番膨らませやすいのがエンターテインメントの力なのです。著名人の影響力をお借りして、情報を一斉に撒き散らし煽りアテンションをひくこと、そうやってまずは他人事だった方々に振り向いてもらう。そして近づいてきてもらう。そして、「可視化」が進むのです。

そして理由[2]
主に「著名タレントではなくLGBTQ当事者を出演させるべきでは?TRPはLGBTQ当事者のためのイベントでしょ?」と投げかけられる声に対して。

皆さんに今一度考えていただきたいことがあります。

これまで出演してくださった方々の中に、カミングアウトできずにいるLGBTQ当事者がいらっしゃったとしたらどうしますか?そう考えたことはありますでしょうか?公にはしていないけれどもしそうだったとしたら、皆さんの言葉はその方にどう伝わったでしょうか。その皆さんの言葉が相手を傷つけてしまうことにはならないでしょうか。

パッと見ではわからない他者の柔らかい部分。そこには配慮を持って丁寧に接していきましょうと、これは再三私たち自身が世間に訴えてきたことですね。でもそれとは逆の行為になってはいないでしょうか。

社会に理解し受け入れて欲しいと強く願うあまりに、自分たちの行動や言動が非当事者に対して逆差別的なアクションに発展してしまうこと、当事者・非当事者という強い区別意識を持ってしまうこと。これは今までLGBTQ当事者が置かれてきた立場から考えたら仕方のないことかもしれません。
ですが、このような強い区別意識は、例えばエンタメ業界の中で生きるタレントやアーティストをカミングアウトから遠ざける理由にもなっているなと私は感じています。
当事者・非当事者は交わることができないのではないか。つまり、カミングアウトをしてしまったら、自分は今いる非当事者の多い世界から追い出されてしまうのではないか。区別されてしまう恐怖。それはイコール「仕事がなくなるかもしれない」という恐怖に繋がるのです。だから、カミングアウトはできない。それを選択するしかない。そういう考えに至ってしまう方々はいるのです。

そんな世界をも私は変えていきたいのです。これはTRPの執行部本部会議で、日々散々私が訴えていることです。私は「当事者」「非当事者」という単語が苦手です。こういう単語そのものが壁を生み出してしまっている気がするのですが、この単語を使わないとこの文章も書けない。それが歯痒い。それが現状の今、2021年てことですね。

欧米では、社会活動とエンターテインメントのエンゲージメントが力強く成されている光景をしばしば見せつけられます。そのスケール感は素晴らしい。
例えば6月のプライド月間になると、多くのアーティスト、タレント、モデル、俳優、文化人、アスリートがレインボーを掲げる、そして多くのプライドイベントに出演を表明しています。SNS上が虹で染まります。記憶に新しいところで言えば、2019年のニューヨークプライド。レディガガさんやマドンナさんがライブやスピーチを当たり前のように行う姿は記憶に新しいところではないでしょうか。

エンターテインメントの世界に生きる著名人たちの影響力は、いわばガソリンです。「情報を効率的に撒き散らしていく」「伝播させる」ためにより速く走りたい、多くの人を巻き込みたい。そんな時にお借りしたいガソリンなのです。彼らはその「影響力」に磨きをかけ続けているプロなのですから、共に歩むことができたのなら最高のサポーターとなってくれるのです。

ああ、はじめてこんなに真面目にかたーく文章を書きました。気付いたらこんなに長くなっちゃいました、すみません。文章を書くって難しいですね。TRPの中で一番パヤパヤしているので、こういう時こそ真面目に書かねば、と気合入れたらこんなにカチコチ(笑)

TRP2021の振り返りのはずが、全然本題に到達できておりません(笑)色々裏話があるのにー!!それはまた次回に書かせていただきます。

東京レインボープライド エンターテインメント局 局長 
臼田廣子