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スマホからシニアを笑顔に!地域コミュニティを活性化するためのデジタル活用支援をやってみた~小金井市×東京都の挑戦・後編~

東京都と区市町村が連携して進めている”デジタルデバイドの是正”に向けた自治体モデル事業を通して、モデル自治体の一つである小金井市の皆さんとデジタルを活用した”地域コミュニティ活性化支援”に取り組んできました。
前回の記事投稿から2ヶ月を経て、実際に地域にお住まいの高齢者の方々を対象に相談会などを開催し、その成果を検証することができました。今回はその実施結果をお伝えしていきます。

小金井市 コミュニティモデル概要

オーダーメイドの相談会をやってみた

当初、この事業では市民の中から集めた講師と教わる側の高齢者の方が多数集まるようなスマートフォン教室を想像していましたが、令和4年1月からまん延防止等重点措置が都内に適用されたことを受け、不特定多数が対面で集まることによる感染リスクを避けながら進めることとなりました。
その結果、スマートフォンの活用に関心が高い小規模な地域の活動団体を対象に、十分な感染症対策をしたうえでスマートフォンの講師と受講者が1対1で向き合う「相談会」形式で行うプログラムとして組み直していきました。


「相談会」形式のメリットは、一人ひとりの不安に丁寧に向き合うことで参加者が教わる内容を自分事として受け止めやすく、さらには双方向の会話を通じてスマートフォンは楽しいものだと感じてもらいやすい点にあります。そこで事前に参加者の方にアンケートに回答いただき、その内容とレベルに合わせて受講者と対話を重ねる「オーダーメイド形式」で行いました。

事前アンケートの形式例

このように「今知りたいこと」を事前に棚卸ししてもらうことは、参加者が限られた時間を効率的に使うことにも、支援者が相手の悩みを解決する具体的な回答を準備しておくことにも有効です。

具体的に挙がったつまずきポイントと対処方法
・自分では画面をタッチしているつもりなのに、うまく動作しない
→ 入力補助ツールとしてタッチペンを使うことで操作しやすくなることを紹介し、その場で解決
・写真が綺麗に撮れない
→カメラ編のマニュアルと撮影ゲームを通して撮影のコツを習得
・画面のアイコンが消えてしまって見つからない
→長押しと移動方法を伝え、隣のページに移動していないかを一緒に確認
一方でデジタル利用経験が浅い高齢者を対象とする場合、講師が考える「原理」や「普通」をストレートに伝えてもうまく伝わらないことがほとんどです。そこで、「難しかった」、「よくわからない」という印象を持たれないように、生活シーンの中での活用法を具体的に説明したり、日ごろのモヤモヤを取り払い、ご自分で操作体験を積み重ねていけるように配慮して進めていきました。
(実際に今の悩み事の解決や新しい体験ができて笑顔でお帰り頂く姿は大変印象的でした。)

スマホ教室運用マニュアルより

今回有用性が確認されたガイドラインは東京都デジタルサービス局のホームページを通じて公開し、どなたでも利用頂ける形にしていきます。

オンラインコミュニティー形成の後押し

「相談会」や「教室」を通じて地域の活動団体単位でスマートフォンの学びに取り組むメリットは、オンラインコミュニティーを立ち上げるベースとなる機能や操作法を身につけ、スマートフォンをより活用していこうという機運を活動団体メンバーの共通認識として獲得できる点にあります。
そこで今回は個別相談終了後にご本人の了承のもとで、その場でSNSを通して活動団体のメンバー同士が情報共有やメッセージ交換できるグループ(LINEグループ)を立ち上げ、登録するまでの短期的なサポートを行いました。

いざやってみると、団体のグループ登録からメンバーを招待して使い始めるまでに必要な操作手順を知らなかったり、SNSの利用経験の少ない方がグループに加わることへの気恥ずかしさを感じている様子が見受けられました。そうした不明点のサポートと場の雰囲気づくりを支援することで、最初は遠慮がちだった方も含めて希望者全員をオンラインコミュニティーに誘導してスマートフォン活用の可能性を感じてもらえたことは、今回のモデル事業の収穫の一つだったと思います。

参加者からの評価と振り返り

相談会実施後は、事後アンケートを通して参加者全員からのフィードバックを頂きました。事業の振り返りにおいて、受講者が好意的に受け止めていただけたのかを数値化して確かめることは非常に重要です。
その結果、今後の生活の中でスマートフォンを使ってみたいと答えた方が100%、相談会が「(難しくなく)楽しかった」と答えた方が97%という回答であり、個別相談でしっかりと話を伺いながら、「シニアが楽しく笑顔で取り組めるようにする」というコンセプトを受講者の方にしっかりと伝えることができたことが分かりました。「自分は高齢者だからデジタルは使えない」と思いこみがちな方が多い中で、受講者を前向きな気持ちに変えることができたのは本事業の収穫だといえます。
また、具体的な取り組みを通して、地域で高齢者のスマートフォン活用にむけ継続したサポートをしていくことが大切であることを改めて行政と地域包括支援センター、市民団体の中で共有できたと思います。
次の展開としてはスマートフォンの身近に支援してくれる市民サポーターコミュニティの形成を意識して、高齢者のスマートフォン利用を継続的にサポートできる環境を市や都の地域全体でさらに整えていくことが重要だと思っています。

最後まで読んで頂きありがとうございました。


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