傷だらけの、文学 4.  接待業、あるいはマーケティングされた文学


 * 戦後の文学世界、障子破りのチン太郎に始まって、俗物のからっ風野郎ミシマ、粘着少年の健ちゃん、ネオン街の裏道でひっそり咲いている一輪のケシ坊主淳之介、ペニスにピアス、そしてうまいことセールスしてはるわ春樹。

 売れない作家、小説家予備軍たちの妬みや罵声を浴びながら、でもなんだかんだいっても面白い文学業界の、明日はどっちだ。 (このフレーズ、古いな)



綺麗なホステスからポイント的に聞かれる、うがった機知
ハンサムなホストから時折聞かれる、賢い言葉
とても心地よく、客を楽しませてくれる
それはそれで、
あたり前のことで確かなお仕事をしている
その場のリラックス
でも誰もここに人生の何かを求めに、
言葉を教えてもらうために来ているわけじゃない
気分転換にはなるかもしれない

ベストセラーの裏側、
マーケティングされた詩と小説
美しい言葉が流れ、
飛び交う心地よさと愛撫するような言葉の群れ
どこかで聞いたような格言の引用みたいで
すでに故人なのに、
残された糟なのに世間受けするものをピックアップ


刑事ドラマに、大河ドラマ
そうかそのとき龍馬はそう動いたか
あぐらをかいてビールを飲み、
明日の予定を考えて、ツマミをつまむ
鼻歌まじりに気晴らしで刹那的なリラックスタイム

あるいは、もくもくと上司に忠実に従い、
最後に世間の非情さを嘆き、
世の中ってこんなモンですよ、といって去っていく

逆に、初めに世の中はこんなモンだと悟って
快樂的に女性に対して粘着性する
ボンドように楽しみながらも、
最後には女王陛下や国家のために任務遂行する
また上司にダーティーな、ため愚痴を吐きながら、
きまって最後には国家権力のために、刑事のお勤めする

初めと終わりがちがうだけで、
ご苦労さん、後でイッパイやっかの世界
気分ばらしで、心が安定したい人たちの世界
どちらも足もとをぐらつかせるような、とまどいを感じさせない

なんのことはない、
お決まりの自分かってなモラルで、
むかしのインディアン、共産主義者そしてイスラム教徒を無慈悲な過激派に仕立て
人種や民族、
主義主張のちがう者たちを知らずのうちに
単なる悪者テロリストと同じように連ねて、
娯楽アクションの名を借りながら
少しずつ自分たちの国家思想を注入していく
国策映画にすぎなかった



文句があるなら、どっかへ行けといわれてもどこに行けばいいんでしょう

そんな感じで、隅に突かれるかたちで存在する、
もういっぽうの文学
あたかも精神病棟の部屋に入った感じの
文学世界があって、
どういう訳かインテリに人気があり、
国語教科書や図書館で重宝されていた

これもどうかな、と思われた
ルネサンス以前に流行って、
教会の図書室で重宝された
神の美しい言葉と物語みたいなものだった

どちらも神と人間を描けば、いいと思っている
むかしの人は、この本には神が描かれていないといい
いまの人は、この本には人間が描かれていないという
そんな老人と子どもたちのコーラスが聞えてきそう


もう、二番煎じじゃねえか
どこにも新しいものがない
先人のいいとこばっかり言ってたら、
国民大衆には受けます
お母さんや子どもたちには、すてきねといわれるかもしれない


創造、クリエイティブといわれるぐらいだから、
最初から世間に受ける訳がない
世の中を改革しようとするものが
いまの政府から、
すてきですねといわれる訳もなく
文学形式を新しく創ろうとするものが
いまの文壇を仕切っているものから、
わあ、すてき、どうぞどうぞ、
といわれる訳ももなく、
そういわれると反対に何かワナがあるんじゃない
そう勘ぐってしまう

新しく創造するもの、
革命家とか芸術家は批判されてナンボの世界です
批判されて抑圧されて、
これぐらいでメソメソしてたら、
われわれの国民社会や芸術を、
これから引っ張ってもらうのに大丈夫かな
心配になってくる

それぐらいの覚悟を持ってほしいな
雑誌編集者から、
作家は厳しい世界だからやめたほうがいい
そんなこと、
サラリー、もらっている人からいわれて、
ビビっているやつはやめたほうがいいぞ、そんなもん

どうもお見苦しいところ、お見せしました
そんなわけで、なんの話しだったっけ



「 🎤 古いやつこそ新しいものを欲しがるもんでございます。どこに新しいものがございましょう。
 こんなことを申し上げる私もやっぱり古い人間でござんしょうかね」
鶴田浩二の懐メロ「傷だらけの人生」の歌が流れるなか、つくづく


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