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傷だらけの、文学 6.  英雄もエリート組織も、孫の世代になると凡人になるようだ




 1.

明治維新で、
江戸時代を仕切っていた御三家が崩壊して
薩摩や長州出身が代わりに仕切り
ウチが固まって来たら、
今度はエリートが現れるのは
古今東西、中国の歴史を見なくても
わかるおなじみのパターン
官僚、学問、文化
いたるところに薩摩長州よろしく、
東大閥や京大閥が出来あがる

国語文学でも、
政治家の思惑もあって官立の国立大学、
特に東京育ちで東京弁を話す
東京大学の人が適任だった
国をいろいろ地方化分散させないように、
集中一本化するためにもっとも重要な政策だった

教育でもそのように
もし勉強しないでえらい学者や作家になれると思われるなら
勉強する意味もなくなくなるし学校教育にならない
作家になるにも、
なるべくならいい大学を出るほうがいい
本筋でないと思っても、いかんなと思っても
平安時代において身分の高い人が優れていると思わせるように
平和を保つにはいたしかたないだろう

官僚出身、教育者出身の
森鴎外と夏目漱石をツートップに、
本人のがんばりもあって、
国語教育検定の理想的サンプルを推し進めていった
性表現とか反体制なところがあまりないし、
内面の思いとか人間の成長を描いて、
本人の意識とは別に、
結果的に、権力者には願ったり叶ったりだった


皆さんもふたりに負けないで一生懸命勉強して東京大学に行ってから、作家になってください
政治家と経済人からの、お願いです



ある会社の人がいっていました
選抜に迷って、上の地位に就けて
他の出身ならがまんしないけど、
いろいろブツブツいいながらも
東大出身ならがまんする
いい制度だな、と思ったそうだ

組織の単なる安定がためにすぎなくて
やがて危機でも訪れれば通用しない、
どこである実力の世界

政治、会社組織ばかりでなく、
なぜか文学分野でも見られる傾向だった



歴史を見なくても実力が認められるのが動乱期
平和な時代はどこもかしこも身分制、
いまは学歴制を重んじるのが権力者の常だった
無難なやり方だった

人間だれしも有名にもなりたいし
金持ちになって優雅な暮らしがしたい
だからといってまた武器を持って人の優位に立ち
えらくなりたいと思ったら、
また争いが始まるから、しようがない

文句いっても、だって他にいい方法ないんだもん



  2.

そんなこんなで
出身は田舎生まれでも東京の大学の育ち
出版社は東京中心
醤油味のさっぱり
淡白で食べ物はもうひとつでも
お酒はうまそう
詩人は酒がお好きで
お酒の香りとその酔いは詩の心地よい韻文の節まわしにも似て
しかして小説家はなぜか食通が多く見られ
文章の語り口はおいしい食べ物を味わっているかのようであった

おいしい食は暖かい南の国にあるなら
おいしいお酒は北の国にあるようだった
だから暖かい地方で育ったボクが
明治以降の東京中心の文学では
詩は好きなのに
小説がどうも馴染めないのがわかったような

高校生のときまで、教科書によく出てくる
東京で育った東大出身の小説が頭でわかっても
世の中に出て、
イマイチ馴染めないのがわかった
文章が上手でも、
イマイチおいしいとか、うまいなとか感じなかった

世界のどこも国ができたら、
まず考えるのは国語で一本化することで思想教育、
前にいったように日本では
首都集中の東京弁、東京育ちで、東京の官立大学
国語教育はこの3本柱が中心で推進していく検閲教科書
だから、ほんとうに地方に独自性を持っている人たちが
二十歳も過ぎて、
この3本柱が中心の小説家の本を読んで、
ほんとうにうまいと感じているんだろうか
関東周辺の人はともかく
とても疑問だ
頭でいいと思っても
からだで実感として感じているんだろうか

世界の国々で
いろいろな文学の風土があるように
先進国だから優れているわけでなく
狭い日本でも、見れば
タテに意外と長く連なっていて
東京中心の作家や出版が
特に優れているわけでもなかった
マーケティングだけが
優れているように思えるのだった

本屋に行けばアメリカの娯楽小説が溢れているし
レコード店に行けばアメリカンポップスばかり
また世界のいたるところにはアメリカのファーストフードがあった

でも世界でもっともおいしいから、売れているわけではもちろんなかった




























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