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「短編」 新しい戦争と it(イッツ)の正体


 世俗の人は、皆、人のおのれに同じきを喜びて、人のおのれに異なるをにくむ。おのれに同じけれ ばすなわちこれを欲し、おのれに異なればすなわち欲せざるは、衆よりずるをもって心と為せばなり (もともと自分が衆人よりぬきんでようとする心があるためである) 。 
  荘子 第十一 森三樹三郎訳 中公文庫63ページ


 赤く咲くのはケシの花

 上記の文章から、もう一年か
誰も読んでくれないだろうと思いながら

 風邪ウィルスの猛威は減るどころか、ますますって感じだった
ニューヨークのマンハッタンにある高層ビルの1室、
ある男が今年の資産の実績報告に目を落としていた

 まあまあかな、これから次第だな
そう言って、高給ウィスキーを口にした
これを飲むためにがんばってきた、
安い酒を飲みながらいつかはと思いながら、男は地べたからはい上がってきたのだった

 ふと立ちあがり、窓のそばに近づいて、超高層ビルから夕闇の景色をボンヤリ眺めていた
低い家屋やビルを見やって、たぶん、あすこにはさまざまな人々がさまざまな感情をもって、うごめいているにちがいなかった

 そうやって外を見ながら、静かに思いをはせていると、つけ放しにしていたテレビニュースがふと聞こえてきた
日本からの情報ニュースです、とことわっていた





 男は日本語がわからなかった
でもテレビ画面をみれば、なんとなく想像できるのだった


 最近よく目にする21世紀の妖怪、IT


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