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ポストジャニーズを担うのは、新会社かK-POPかTOBEか

ジャニーズ事務所が社名をスマイルアップに変更して、10日以上が経過しました。

10月の会見で発表された内容を踏まえると、あくまでスマイルアップへの社名変更は一時措置であり、本当に注目されるのはこれから設立され、タレントと個別に契約を結ぶエージェント会社となる「新会社」になります。

10月の会見の際には、「新会社」は約1ヶ月以内の設立を目指すとされていましたが、社名の公募期間が10月31日までとなっていることや、10月の会見直後の混乱を踏まえると、「新会社」の設立自体は11月中旬以降になるという見方が多いようです。

日本の芸能界の中心を占めていたジャニーズ事務所が、ここまでの激変に見舞われるとは1年前には誰も予想できなかったと思いますが、当然ここで注目されるのがポストジャニーズを誰が担うのかという点です。

メディアの報道から、今後の可能性を一度整理してみましょう。


「新会社」は無事に資産を引き継げるか

当然、ポストジャニーズの筆頭となるのは、11月に設立される予定の「新会社」です。

なんといっても、ジャニーズ事務所のファンクラブは会員数が1300万人とも言われている巨大な組織です。
現在は、自分達が応援しているタレントが騒動の渦中にいることでファンも傷ついていると思いますが、だからこそこれからのタレントの未来を応援する気持ちが強くなっているファンも少なくないはずです。

ただ、現時点では「新会社」は社名も公募中ですし、どのように資金を調達し、ジャニーズ事務所の資産をどう引き継ぐのかも明らかになっていません。
現在の混乱を考えると、外部の経営者の招聘は必須と考えられますが、そうした人事も見えていません。

嵐の二宮和也さんがスマイルアップを退所して、個人で活動していくことを発表した際に、「怖くなったし不安な気持ちにもなった」と告白されたように、将来について混乱しているタレントは少なくないと想像されます。

一部で報道されるように、この二宮さんの退所が他のメンバーの退所の引き金になるかどうかは分かりませんが、すぐに新会社が軌道に乗るかは不透明感があるのは事実です。

一方で、Hey! Say! JUMPが10月に初のデジタル配信を発表して話題になったり、KAT-TUNの亀梨和也さんがYouTubeチャンネルを開設し、すぐに19万人を超える登録者を集めたりするなど、あらためて所属タレントがファンに愛されていることが感じられるニュースも多々あります。

「新会社」が、設立や資産引継ぎのゴタゴタを無事に乗り越えることができれば、所属タレントの方々の活動の幅が、再び拡がっていく可能性は十分あるでしょう。
 

ポストジャニーズの筆頭は「K-POP」?

一方で、多くのメディアがポストジャニーズの筆頭として報道しているのが「K-POP」です。

実際に、いわゆるK-POPと分類される韓国の芸能事務所所属のアーティストは、今回のジャニーズ事務所の性加害騒動以前から、若い世代を中心に日本でも人気を高めています。

昨年の紅白にも多数の韓国の芸能事務所所属アーティストが出演していましたし、フジテレビは10月12日から、これまで「キスマイ超BUSAIKU!?」というKis-My-Ft2の番組を放送していた枠に、「K-POP HOUSE」という番組をスタート。

ジャニーズタレントから、K-POPタレントへの番組変更という文脈でも注目されています。

また広告主も、K-POPへのシフトは明白。

セブン-イレブンがクリスマス商戦の顔として、昨年まで4年連続で起用してきたKing&Princeから変更して、K-POPの人気グループであるSEVENTEENを起用したことは非常に象徴的です。

ライバルであるファミリーマートも、K-POPの女性人気グループであるTWICEを起用していますし、ここに来て日本においてもK-POPのアーティストの存在感が一気に増していることは間違いないと言えます。


「TOBE」がジャニーズ出身者の受け皿に?

また、K-POPと同様にポストジャニーズとしてメディアから注目されているのが、滝沢秀明さんが立ち上げた「TOBE」です。

現在のところ、「TOBE」には三宅健さんを筆頭に13名の元ジャニーズ出身者のタレントが移籍。
グループ名を変更してデビューした「IMP.」のデビュー曲も話題になり、順調な立ち上がりをしているとみられています。

特に、元King&Princeの、平野紫耀さん、神宮寺勇太さんに、岸優太さんも合流し、新しく「Number_i」というグループを立ち上げたことは大きな話題になりました。

さらに「TOBE」では、会社設立時から新しいグループを立ち上げるべく「TOBE New Star」というオーディションを実施しており、ここから生まれる新しいグループが来年にもドームでお披露目される可能性があると報道されています。

滝沢秀明さんは、もともとジャニーズ事務所でジャニーズJr.の育成を担当していたこともある方ですから、ジャニーズ事務所が立ち上げる「新会社」とライバルになる可能性は十分あると言えるわけです。
 

本当に理想の「ポストジャニーズ」とは

ただ、今回のジャニーズ事務所の性加害問題をめぐる過去のメディアの忖度などの構造を考えると、実は「ポストジャニーズ」の役割を特定の事務所が担うこと自体が、問題の本質が変わらない結果につながるリスクをはらんでいるとも言えます。

本当に理想の「ポストジャニーズ」の状態とは、「新会社」も「K-POP」も「TOBE」も、その他の事務所も含めて、違う事務所だから同じ番組に出られないとか、特定の芸能事務所を退所するとテレビ番組に起用されなくなるという古い「常識」が終わった状態であるべきです。

そのヒントとなる取り組みの一つが、日本テレビがBMSGグループの代表であるSKY-HIさんと開始した「D.U.N.K.」です。

これは、「ダンス&ボーカルシーンに垣根のない新たなカルチャーを作る」というキャッチコピーのもと、地上波とYouTubeを組み合わせた番組放映と、「D.U.N.K. Showcase」というライブイベントを組み合わせた新しい音楽番組企画。

最大の特徴と言えるのが、BE:FIRSTなどのBMSG所属アーティストだけでなく、LDH所属のGENERATIONS、HYBE所属の&TEAM、さらにはDREAMS COME TRUEなど、様々な事務所から多様なアーティストが参加し、実際にステージ上で様々なコラボを実施した点です。

最も象徴的なのは、ライブの大トリに参加アーティストが一緒になって「サイファー」を展開するところでしょう。

音楽やダンスには事務所やグループの垣根など関係ないことが、非常に良く分かるシーンと言えます。
この3月に開催されたイベントが、音楽業界関係者に大きな影響を与えています。


グループ横断コラボは今年のトレンドに

明らかに「D.U.N.K.」の取り組みに影響を受けた番組の一つと考えられるのが、7月に放送されたTBSの「音楽の日」です。
こちらの番組でも、番組後半に、事務所の垣根を越えて総勢90名がダンスコラボを展開するダンスGIFT LIVEが実施されています。

この番組内では、「D.U.N.K.」には参加していなかったジャニーズ事務所からTravis Japanが出演し、BE:FIRSTなどとコラボを実施するという歴史的な日となりました。

また、こうした流れに影響を受けてか、永らくジャニーズ事務所以外の男性グループの出演が難しいとされてきたテレビ朝日のミュージックステーションにも、BE:FIRSTやJO1が出演するようになってきています。

さらに、12月には「D.U.N.K. Showcase」の第二弾が開催されることが発表され、すでに「TOBE」から「IMP.」が初参加することも明らかになっています。

日本においても、音楽やダンスにおける事務所の垣根が明らかに溶け始めているのです。


11月設立予定の「新会社」がコラボを歓迎するかどうかに注目

そういう意味では、元ジャニーズ事務所所属タレントによって設立される「新会社」が、明確に従来のジャニーズ事務所の「常識」を払拭できるかどうかが最大の注目点と言えるでしょう。

過去のジャニーズ事務所は、事務所を退所したタレントの出演や、他の事務所の男性グループとの共演について、メディア側の忖度を引き出すような形での圧力をかけていたと報道されています。

そうした旧体制でのやり方を払拭し、「新会社」が事務所を退所したメンバーや、事務所外のグループとも気軽なコラボを実施するようになるかどうか。

「音楽の日」に出演したTravis Japanが、ジャニーズ事務所以外のグループと積極的にコラボを行っていたような姿を、今後他の番組や他のグループでも見られるようになるかが重要なポイントとなりそうです。

まずは、「新会社」がどのような体制での船出になるのか、注目して待ちたいと思います。

この記事は2023年10月29日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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