徳力基彦(tokuriki)
私たちはマーケティングのプロ集団であるP&Gマフィアとどう対峙すべきか
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私たちはマーケティングのプロ集団であるP&Gマフィアとどう対峙すべきか

徳力基彦(tokuriki)
この記事は2018年10月29日にアジェンダノートに寄稿した記事を転載したものです。

「P&Gマフィア」
この業界の一部で使われていたキーワードが、一気に日本の広告業界で幅広く使われるようになったのは、今年4月の日経クロストレンドの一連の特集記事がきっかけでしょう。

私自身は、自社で主催しているアンバサダーサミットというイベントの2017年版に、当時マクドナルドに在籍していた足立さんと、西友に在籍していた木村さんに登壇していただいたあたりで、二人ともが元P&Gであるという話を聞き、気がついたら自分が注目しているマーケターの方々の多くがP&G出身であることにビックリしたという歴史があります。

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当時知っていた人をパッと思い出せるだけでも、こんな感じ。

・元日本マクドナルドCMOでV字回復の立役者となった足立さん
・元ロート製薬マーケティング本部長で、肌ラボなどを成功に導いた西口さん
・日本コカ・コーラ副社長で綾鷹を成功させた和佐さん
・元資生堂CMLOで、現在パーセプションフローモデル啓発をリードしている音部さん
・元日本郵便で、オンラインとオフラインの可能性を啓発されている鈴木さん
・元西友で、みなさまのお墨付きなどのブランドを確立された木村さん
・元USJのCMOで、USJ再建の立役者となった森岡さん
・元J&Jのマーケ本部長で、横ばいだった多くのブランドをプラス成長させたリュウさん

冷静に考えると、全員、P&G出身者でした。

また、特に個人的に印象的だったのは、2017年に開催された第1回「マーケティングアジェンダ」での出来事。当時、P&Gのシンガポールオフィスでヴァイスプレジデントを務めていた伊東正明さんが講演され、その後、夜のバーでは自然と元P&G出身者の方々のテーブルができていました。

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そして、私はP&Gマフィアのおっかけのように、関係者の講演やセミナーを聞いてまわっているわけですが、話を聞けば聞くほど感心するのが、P&Gのマーケティングのプロフェッショナルを教育する仕組みです。

P&Gのマーケティング部門では、「ブランドマネジメント」と「人材育成」を2本柱として掲げているそうで、ブランドマネージャーが利益に責任を持ち、ブランドを中心にして各組織がフラットに協力して働く仕組みになっているんだとか。

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正直、これはかなわないな、と思ってしまう自分がいます。実際、P&Gの講演を聞いた後の日本企業の多くの担当者が「自分の会社で、これは真似できない」と感じたと聞きます。

今年9月に当社で開催した「AMNマーケティングセミナー」で音部さんにパーセプションフローモデルの講演をしていただいた際、参加者から出ていた質問でも、自社におけるマーケティング組織構造や、上司や経営陣の理解度の低さを嘆く質問が多数でていたのが印象的でした。

では、私たちはP&Gのようなマーケティングプロフェッショナル企業に、全く歯が立たないと、あきらめるしかないのでしょうか。

もちろん、そんなわけはないですよね。

私は、マーケティングが組織に根付いていない日本企業が、P&Gマフィアと対峙する上で、やれること、やるべきことは、大きく3つあると考えています。


■P&Gマフィアに学ぶ

現時点で、一番手軽に選択できるのが、この選択肢でしょう。アジェンダノートでも、元マクドナルドCMOの足立さんの「足立光の無双塾」、元P&Gで吉野家の伊東さんの「伊東塾」など、P&Gマフィアの講師に学ぶ機会を提供されています。

また、音部さんや森岡さんのように書籍を出されたり、独立してマーケティングのコンサルティングを提供されたりしている方も増えています。


■P&Gマフィアを採用する

P&Gマフィアに限りませんが、マーケティングのプロが社内にいないのであれば、外部から入ってもらうというのも重要な選択肢だと思います。

最近では、サンリオにCMOとして元西友の木村さんが入社されて話題になりましたし、スマートニュースの直近の躍進は西口さんがマーケティング担当執行役員として入社され、テレビCMに再挑戦したことが大きいと聞いています。


■“自社ならでは”の特徴を磨く

そして、個人的に日本企業が特に注力すべきだと感じているのは、ここです。象徴的だったのが、今年のマーケティングアジェンダの「愛を叫べ、意味を創れ」のセッション。

P&Gのファブリーズと、エステーの消臭力の事例を元に、会社の規模が全く違うP&Gに対して、エステーの消臭力がいかに戦ったのかという逸話が紹介されました。

これはエステーと、鹿毛さんが凄いという話ではありますが、会社の規模が違う日本企業でも、取り組み方によっては、P&Gと互角に戦えるという事例でもあります。

エステーの施策は、奇策に見えるかもしれませんが、実はマーケティングの基本の上に、エステーらしさ、鹿毛さんらしさが積み上げられていることがポイントでしょう。

伊東さんも、昨年の講演でP&Gに集まる人に共通する3つの要素として、「負けず嫌い」「天邪鬼(あまのじゃく)」「好奇心」を挙げて、特に同じデータを見ていても、それを大喜利(おおぎり)の視点で、いかに“ひねくれて”みるかが大事だと話していました。

特に、日本企業に重要なことは、横ならびで競合他社と同じような商品をつくることではなく、自社の文化や歴史に沿った、自分たちならではのマーケティングを確立するところにあるように感じます。

そういう意味では、個人的に印象的だったのは、エステーの鹿毛さんが自らのやり方の再現性をつくるために、自らグロービスで講師をし、そこで自社の宣伝チームを学ばせるという、教育の仕組みの構築にもトライされている点です。

日本では、まだ組織的にマーケティングを学ぶ仕組みがある会社は少ないように思いますが、今後はこういった取り組みがますます重要になると言えるでしょう。

ちなみに、元々「○○マフィア」という呼び方は、「ペイパルマフィア」という、ペイパル出身のOBにピーターティール氏、イーロン・マスク氏、リード・ホフマン氏など、錚々たる起業家が揃っていたことから使われるようになったフレーズです。

ただ、日本では「ペイパルマフィア」という言葉の知名度がそれほど高くないことから、「P&Gマフィア」のマフィアという単語が、一人歩きした印象を受けている人も少なくないようです。

当然ながら、P&Gマフィアとして名前を挙げられる方々は、「元P&G出身者組織」として動いているわけでもありませんし、いまでもP&Gのために働き続けているわけでもありません。

実は、あるP&Gマフィアによると、P&Gのようなグローバル企業で長く働いていると、自分が日本人であることを強く意識するシーンに多数遭遇し、最終的に日本への恩返しをしたいという思いが強くなる傾向にあるそうです。

そういう意味で、多くのP&Gマフィアが、日本企業に転身されたり、日本企業にマーケティングを教える道を選んだりしてくれるのは、日本にとって幸運なことだと言えるかも知れません。

この記事は2018年10月29日にアジェンダノートに寄稿した記事を転載したものです。
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徳力基彦(tokuriki)

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徳力基彦(tokuriki)
noteプロデューサー/ブロガー。 ビジネスパーソンや企業の、ブログやソーシャルメディア活用の可能性を日々試行錯誤してます。 アンバサダープログラムのアンバサダーも担当中。 書籍「顧客視点の企業戦略」「アルファブロガー」を書かせて頂きました。