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新規顧客と既存顧客がかぶったら:燕三条の町工場の一例

新規顧客と既存顧客がかぶったら、どうするか?

かぶるにもいろいろあります。
・依頼の案件自体がかぶる。
・依頼の納期がかぶる。

トクニ工業の場合、基本的には多くのクライアントから少しずつ仕事をもらって売り上げを構成していますので、常に複数の仕事が混在しています。
依頼の案件自体がかぶった場合、既存の取引先が優先となります。既存の取引先の場合、取引実績がありますから、新規顧客に比べ信用度が高くなります。取引条件も整っているためスムーズに売買できます。
依頼の案件自体がかぶるということは、発信元が複数の業者に見積依頼をしていることの裏付けになります。何故複数の見積もりを取るのか?慣例として複数の見積もりを取ることになっているのか?ただ安ければ良いのか?

ものづくりは、費用対効果が如実に表れます。
材料、加工、仕上げ、梱包など、どこまでの品質を求めるかによって価格は大きく上下します。
既存顧客の場合、それまでの取引実績を踏まえ、品質・価格の標準値がおよそ設定されますので、それを踏まえたうえで、見積もりが作成されます。
新規顧客の場合、品質の基準が未知数のため、自社の基準でおおよその基準を設け、注記などを加味しながら見積もりが作成されます。サンプル品が持ち込まれる場合は、それを基に算出されます。

共通認識を持つことが必要ですし、サンプル加工などを通して関係性を築いていく必要があります。いきなり大量注文を受け作成した場合、完成してから不具合点を指摘されても困ってしまいます。


依頼の納期がかぶった場合、スタッフの担当工程を入れ替えて対応します。
頻繁にあるわけではありませんが、特定の工程に仕事が集中しボトルネックとなる場合があります。多くの場合、工程が後の方になる溶接工程ですが。

ロボットを使っての溶接の場合、時間当たりの生産量が決まってきますから、許容範囲を超えて依頼が殺到した場合、ロボットをサポートするスタッフを増やして、早出・残業と稼働時間を増やして対応します。
ほとんどが手動の溶接機ですが、溶接の工程に仕事が集中した場合は、作業者を増やし、通常3人で担当している工程を5人にします。さらに溶接の協力工場などに協力を依頼しサポートしてもらいます。

このように急に増えた仕事に対応するためには、従来からある程度余裕をもって仕事を行っていなければなりません。通常業務で、仕事を詰め込んでパンパンのスケジュールをくんで行っていると、臨機応変に対応することが出来ません。別の工程をサポートするスタッフもいなければ、スタッフの突然の欠勤に対応することも出来ません。

既存顧客の仕事にばかり偏っていると、均衡縮小の罠にはまっていきます。既存顧客から既存の仕事ばかりを受注していると、安定して注文が入ってくるうちは良いのですが、いつ既存の仕事が先細りしていくかわかりません。既存の仕事が減ってから、新規の仕事を探しても条件に合った仕事が見つかるとは限りません。日常的に新規案件を受け入れる準備をしていなくてはなりません。

新規案件を受け入れるためには、来るかどうかわからない新規案件のための余力を常に持っていなければならないのです。
どれくらいの仕事量を標準とするかは業種・業界によって異なってくると思いますが、「会員限定・完全予約制」では、いつかはその仕組みが崩れていくことでしょう。
そうならないようにするために、一見さんお断りのような店でも既存顧客の紹介があれば利用可能になったりもします。ものづくりの町工場でも頑なに既存顧客に固執するのは危険です。
既存取引先の紹介であれば新規顧客を受け入れるなどの柔軟性が求められます。

仕事がかぶった、らスタッフの担当ポジションを臨機応変に変えて対応する。
サッカー型組織の一例でした。

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