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法人版事業承継税制:燕三条の町工場の一例

非上場株式の創業者から後継者への名義変更は、中小企業の事業承継において重要な課題となります。
株式をむやみに贈与や相続などによって移動させると、課税の対象なります。年間110万円を超える贈与には、贈与税が課せられます。
このような状況を考慮し、国によって「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)」が定められています。
具体的な申請手続きについては、顧問税理士や会計事務所の担当者と相談し、進めるべきです。
以下では、私の体験に基づいた事例を紹介します。

トクニ工業で「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除」(法人版事業承継税制)の申請をしたのは、2014年でした。
令和6年3月31日までは、特例措置として全株式が納税猶予の対象となっています。当時は総株式数の最大3分の2までという制限がありました。
贈与を行う前の持ち株比率としては、
創業者父(贈与者)72.0%
後継者二代目(受贈者)11.7%
でした。
贈与を行うことで、
創業者父(贈与者)17.0%
後継者二代目(受贈者)66.7%
としました。

贈与以前にも、
増資1000万円 9.5%
一年ごとの非課税枠(110万円以内)での祖母から私、妻、子供への贈与を行ってきました。例年9月に、「国税庁方式(財産評価基本通達)」に基づき計算された評価額を算定します。それに基づき非課税枠で贈与を繰り返してきました。

「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)の申請は、専門的でとても素人の手におえるものではありません。
申請手続きも多くの書類を提出があり大変ですが、毎年定期的に報告書を出す必要があり、専門家に依頼すべきものとなっています。

3年前コロナ禍の中、父は亡くなったのですが、贈与猶予から相続猶予へ切り替わりました。その際、数百万円の納税を行いました。税制が複雑すぎて理解半ばなのですが、猶予措置を使っても全く非課税になるというわけではないようです。

ただふつうに贈与税を払うよりは、はるかに良いでしょう。

国税庁 贈与税の速算表より

贈与額3,000万円  税率50%  控除額250万円  贈与税1,375万円
贈与額5,000万円  税率55%  控除額400万円  贈与税2,530万円
贈与額10,000万円  税率55%  控除額400万円  贈与税5,280万円
と高額になります。

相続税は法定相続人の構成により変化しますが、

国税庁 相続税の速算表より

相続額3,000万円  税率15%  控除額50万円  相続税442.5万円
相続額5,000万円  税率20%  控除額200万円  相続税960万円
相続額10,000万円  税率30%  控除額700万円  相続税2,790万円
となります。贈与税よりは高額ではありませんが、自社株式だけを相続するわけではありません。非課税財産枠などもありますが、その他の相続財産も含めると、税率はランクアップし税額も大きくなります。

非上場株式の創業者から後継者への名義変更は、中小企業の事業承継にとって避けては通れない課題となります。
先送りすることなく、積極的に取り組む必要があります。
また、株の贈与については、一年ごとの非課税枠を利用することができますので、できるだけ早期の対応が良い結果を生むでしょう。
より良い方法を見つけるために、情報収集を行いましょう。
また、贈与や相続の猶予措置を採用している株式を他者に売却する場合、納税の義務が発生します。
さらに、M&Aによる事業売却に応じる場合、贈与税や相続税、株式売却に伴う所得税、事務手数料など、多くの税金リスクが存在することも覚悟しておく必要があります。

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