狼男

こんにちはトクです。

本日もNOTE訪問くださりありがとうございます。

拙い文章ですが創作物語(ショートショート)を書いてみたいと思います。

その男は、ブランチをとりながら新聞を読んでいた。

今日は午後からの出勤なので、ゆっくりと朝寝坊ができた。

新聞には、また、通り魔の事件が載っていた。

男の仕事は捜査一課の刑事であった。

「最近、通り魔が多いなあ・・・。こんな奴らがいるから俺の仕事も忙しくなんだ⋯」とつぶやいた。

ここのところ立て続けに通り魔事件が相次いでいるのだった。

月に2回程度を、もう半年以上も続いているのだ。

男は、出勤の為、駅まで歩いた。

駅の売店で何気なく雑誌に目をやると「通り魔事件、犯人は狼男か?!」の文字が目に入った。

「狼男か・・・」

暇つぶしに男はその雑誌を購入した。

雑誌の記事によると、どうやら、通り魔事件は満月の夜に起こっているようだ。

「満月だから狼男か・・・」

男は苦笑した。

昔から、狼男と言えば満月の夜に変身することになっている。

「そう言えば、最近、満月を見たことがないなぁ」と思った。

最後に満月を見たのはいつの事だろうか?

記憶を手繰り寄せたが、ハッキリとしない。

夜は遅くまで残業があるし、夜空を見上げて歩く余裕なんてないなからな・・・。

満月を見た記憶がないのも当然かもしれない。

そんなことを考えているうちに警視庁の最寄り駅に到着した。

それから約2週間の朝である。

テレビのワイドショーでは、狼男の特集をしていた。

昨日も通り魔事件が発生したのだった。

「また、狼男か・・・」

「テレビも、もう少しマシな話題を提供して欲しいもんだなあ・・・」

そんなつぶやきが漏れた。

しかし、何だか今朝は疲れている。

昨夜は残業もなく、早く帰宅して午後の10時にはベッドに入ったのに。

今朝はぐったりとしている。

まるで、誰かと格闘したような疲れであった。

ちなみに、男は若い頃に武道をたしなんでいて、柔道2段、空手は3段の腕前である。

今でこそ、稽古はしていないが、そこら辺のゴロツキには負けないだけの自信はあった。

それからまた、2週間がたった。

満月の夜のことであった。

本当に狼男が出たのである。

狼男は、血に飢えた野獣のように咆哮し、ある女に襲いかかった。

と、その瞬間、女に投げ飛ばされた。

そして、数人の刑事に取り押さえられた。

女は婦人警官だったのだ。

最近、頻発する通り魔事件の犯人検挙の為に、おとり捜査中であったのである。

男を取り押さえた警察官らは、自分達が取り押さえているのが、狼男であることにビックリしていた。

その姿は、ヨーロッパの昔話で語られる狼男そのものであった。

狼男は麻酔を打たれて、警察の留置所に入れられた。

そして、一晩が過ぎた。

留置所に入れた時は確かに狼男だったのだが・・・。

男は、目が覚めた。

そして、そこは警察の留置所であった・・・。

「なんで俺が、こんな所にいるんだ⋯。記憶を手繰り寄せても、昨夜の記憶ないない⋯」

警察官達は驚いた。

「確かに昨夜捕まえたのは、狼男だったのに⋯」
 
今、自分達の前にいるのは、同僚の刑事なんのだ。

「何だかとても疲れた・・・。まるで、誰かと格闘したような疲れだ・・・」

男は、そうつぶやいた。
 
彼が日夜追いかけていた連続殺人犯とは、自分自身であったのだ。




うつ病で苦しんでいる方達に希望を与える活動をしていきたいと考えています。よろしければサポートをお願いいたします。