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「ちえ」(50)「Hビデオ」①

金曜日の夜に、仕事帰りにアパートに帰えらずに、そのままバスケに行きました。

バスケから帰ってくると、会う予定はなかったのに「ちえ」が来ていました。

「トクちゃん、お帰り~」

「宅配便来てたよ」と言ってダンボール箱を見せました。

「あ!ヤバ⋯」

「トクちゃん、何か買ったの?」

「⋯」

「もしかして~。私に言えないような物買ったの~?」

「これ、俺のじゃないんだよな⋯」

「なんで、トクちゃんのじゃない物が、ここに届くわけ?」

「これってさあ、先輩に頼まれた物なんだよな⋯」

「ふ~ん。で、中身は何なの?」

「正直に言いなさいよ~。箱に付いてる送り札から、だいたい中身は分かるんだからね」

「じゃあ「ちえ」は、なんだと思うんだよ」

「Hビデオでしょ」

「トクちゃんの名前で届いてるんだから、開けても良いよね?」

「だかさあ、俺のじゃないんだって、先輩の家に届くとまずいから、俺の所に届けてもらったんだよ」

「ふ~ん」

「で、開けても良いの?それともダメなの?」

「良いよ⋯」

「ホントに俺のじゃないからな」

「じゃあ開けるよ」

「待って、俺が開ける」

「その前に、なんで中身がHビデオだって分かったの?」

「だってここにビデオのタイトル書いてあるじゃない」

「〇〇他って」

「このタイトルって、見るからにHビデオだよね?」

「そっかあ⋯」

「バレたらしょうがないな⋯」

そう言ってダンボール箱を「ちえ」の前で開けました。

「やっぱり⋯」
 
「トクちゃん、まだ、こんなの見てるんだあ⋯」

「もう、しょうがない正直に言うよ」

「職場の先輩達が買ったんだよ」

「それで、先輩の家に届くとまずいから、俺の所に届けてもらうことにしたんだよ」

「俺は、そのお礼として、ビデオをダビングしたのをもらうことになってるんだ」

「ふ~ん」

「トクちゃんは、買ってないけど、ダビングしたビデオはもらうんだね」

「ってことは、見るってことでしょ?」

「うん、まあ、そう言うこと⋯」

「じゃあ、買ったも同じことでしょ!」

「Hビデオくらい見たって良いじゃん」

「悪いなんて言ってないでしょ」

「じゃあ、見ても良いんだよな?」

「ダメに決まってるでしょ!」

「トクちゃんは、私だけじゃ満足できないから、こういうの見たいんでしょ?」

「そんなことないって」

「じゃあ、なんでこんな物見たいの?」

「それはさあ⋯。やっぱ興味あるし⋯」

「「ちえ」がス〇ラで勉強するのと一緒だよ」

「俺も、こういうの見て、勉強すんの」

「言い訳するな!」

「はい⋯。ゴメンなさい⋯」

「あ、これって着払いだった?」

「うん、私が払っといたけど」

「って、話を、ごまかすな!」

「ごまかしじゃないって、お金返すからさあ」

「先輩から、お金預かってんだよ」

「お釣りはいらないって言われてるから、なんか買って食べよ」

「そんなんで私が騙されると思うの?」

「だから、騙すとか騙さないとかじゃないんだって」

「あ!そうだ、このビデオ一緒に見ようよ」

「ラブホでも一緒に見たじゃん、な?」

「トクちゃん、頭出して」

「こうか?」

「バカ、バカ、バカ、トクちゃんのスケベ」と言って頭を何回か叩かれました。

「もう良いか?」

「⋯」

「俺は、「ちえ」だけで十分満足してるって、でも、それとHビデオ見たいってのは違うんだよ」

「でも、「ちえ」が見て欲しくないんだったら見ない」

「先輩からダビングしたのをもらうのやめるよ」

「これは、このまま先輩に渡すから」

「な?それでもダメか?」

「トクちゃん~。私、心配なんだよ⋯。トクちゃんが他の女の子に興味持っちゃうのが⋯」

「ゴメンな、心配させて」

「じゃあさあ、今から、一緒に、これ、先輩の家に持ってこう」

「な?そうしょう」

「もう、絶対、こんなの見ないから、見るんだったら「ちえ」と一緒に見るから」

                                                                       つづく





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