もうひとつのラブストーリー(34)「別れ話」
「ちえ」にプロポーズしてから初めての同級会が開かれることになりました。
今回の同級会には、ある目的がありました。
その目的とは、友人のSが片思いをしていたTさんに告白する場を作るというものです。
そして、その同級会の3次会は、私と「ちえ」の婚約を祝ってくれる会となりました。
その3次会で事件は起きました。
大好きな「ちえ」でしたが、ひとつだけ気になる点がありました。
それは嫉妬心が強いこと、それも半端なく。
私が「ちえ」とは別の女の子と長くお喋りしていると「ちえ」が不機嫌になってきました。
「T君ちって良いよね。婚約までして」
「えっ、Bさんて彼氏いないの?」
「うん、いないんだ···」
「そんなにキレイなのに彼氏がいないなんて不思議だなあ···」
私が冗談で、その女の子に「じゃあ俺と付き合っちゃう?」などと言っていると
「ちえ」が、またヤキモチをやき始めました。
あまりにも、しつこいので、つい切れてしまいました。
「そんなに俺のことが信用できないのかよ!」
「冗談と本気の区別もつかないのかよ」
「だったらもう良いよ!その指輪は、俺に返さなくてもいいから、いらないなら捨てて」そう言い捨てて3次会のお店を一人で出てしまいました···。
もう、頭がカッカして周りの雰囲気を見る余裕もありませんでした。
夜の道を駅方面に歩いていると···。
後ろから「トクちゃん」と呼び止められました。
「ちえ」だと分かりましたが、あえて無視しました。
すると「ちえ」が走ってきて「「トクちゃん」···、指輪捨てていいってどういうこと?」
「まさか、私達これで終わりじゃないよね?」
「ねえ、なんとか言ってよ···」
「俺は、俺のこと信用してくれない女とは付き合えないから」
そう言うと。
「私は「トクちゃん」のこと信用してるよ」
「だったら、いちいちうるさく言うなよ」
「俺、もう付き合えないから···」
「私のこと嫌いになった?」
「···」
「ねえ、そう言うことなの?」
「嫌いになれたら楽なんだけどな···」
「俺、「ちえ」以外の女とは結婚する気ないから、指輪はあげるよ。いらないなら捨てても良いから」
「私のこと、まだ、好きでいてくれるの?」
「だったら別れないよね?」
「だから、信用してくれない女とは付き合えないんだって」
「信用してるよ。でも、ちょっとヤキモチやいちゃうだけ···」
「「ちえ」のヤキモチは半端じゃないんだよ。ヤキモチやきすぎなんだよ」
「···」
「ゴメンね。Bちゃんから、「今、追っかけないと大変なことになるよ」って言わちゃったんだ···」
「俺だって別れたいワケじゃないけどさ···。もう少し自由にさせてもらいたいんだよ」
「ゴメンね、ホントにゴメンね···」
「ねえ、もう1度お店に行こう。一緒に戻ろう」
「俺のこと信用してくれるんならね」
「信用するよ、もっと自由にしていいから、お願いだから別れるなんて言わないで···」
「···」
「ねえ、お店戻ろ」
「···」
「ねえ、ダメなの?」
「私も「トクちゃん」以外の人とは結婚できないから「トクちゃん」が結婚してくれないなら私、一生独身でいる」
「「ちえ」はモテるから大丈夫だよ。俺以外の男なんてすぐに見つかるから」
「お願いだから、そんなこと言わないで···」
「ねえ、お願いだからお店戻ろう」
「ちえ」は泣きながらそう言いました。
「「ちえ」泣き顔見せるのは反則だぞ。俺が「ちえ」の泣き顔見ちゃったら別れられなくなっちゃうじゃんか···」
「だって~。「トクちゃん」と別れたくないよ~」
「···。じゃあな」
そう言ってまた、駅に向かって歩き始めました。
「私、このまま別れるの嫌だからね。明日、アパートに行くからね、絶対に行くからね」
そう言ってこの日は別れました。
私は本気で「ちえ」と別れるつもりでした。
つづく
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