漫画『バンオウ-盤王-』の感想
『バンオウ』という漫画を読んだのでその感想を書いていこうと思う。
最近流行っている将棋を題材にした漫画だが、この漫画はその中でも特に盛り上がっている漫画のようだ。設定は500年以上生きている吸血鬼が主人公というファンタジー設定だが、アマチュアから竜王戦に出場するという過程自体はリアルで将棋のアツさが伝わってくる作品だと思う。
吸血鬼やハンターなどを出すと普通は途端にファンタジー色が強くなるけどこの漫画は妙なリアルさがあると思う。おそらく将棋教室などの触れ合いが一般市民っぽくてそういった日常の描写が細かいからリアルさを感じるのだろう。ファンタジーでもリアルさを大事にするべしという作劇でよく言われる注意があるが、この作品はそれに則していると思う。吸血鬼やハンターという大きな設定以外の将棋描写がやたらとリアルなのでここまで物語に入り込める出来となっているのかもしれない。
現在56話まで連載されており、自分も現時点の最新話まで読んだが、対局相手がどの人物も特徴的でキャラが立っている。使い捨てという感じがしないというのが良いところだ。結構な尺を取って盤上での勝負が描かれているが、それぞれの対局が似たような感じになることもなく勝負のアツさが伝わってくる出来となっている。将棋という一見地味な絵面をここまで熱く演出できるのは素直にすごいと思う。
一応吸血鬼ということで吸血鬼ハンターという存在達も出てくるが、現時点だとほぼサブ要素と言っても過言ではないほど脅威がない。というかハンターの1人がポンコツすぎて単なるギャグ要因と化している。これが熱い対局とのギャップで面白いと思う(あとお兄ちゃんも面白い)。
プロ棋士がデビューからぶっちぎるという物語は藤井聡太という比較対象がいるのでどうしても弱く感じてしまう。そんな中でアマチュアからタイトル挑戦まで行くというのは漫画の設定として面白い目の付け所だなと思う。昨今のAIの進歩もあるし「吸血鬼で何百年も将棋やってれば絶対なくはないかな?」と思えるレベルのラインを攻めてきたという感じがする。藤井聡太とは違った角度から将棋界に風穴を開けるという痛快さが面白い。
画力や人物の掘り下げなど、全体的にレベルが高いマンガだと思う。面白かったので一気に読んでしまった。現在作中で竜王戦が始まったところなので非常に続きが気になるところ(楽しみ)。
あと余談だが、将棋ウォーズがあまりにもダイレクトに出てきて面白かった(最近はチェスをやることが多いけどたまには将棋もやろうかと思えてきた)。
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