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【ネタバレ注意】綾辻行人の『水車館の殺人』にツッコんでみた

※綾辻行人『水車館の殺人』のネタバレ前回なので注意が必要です。

「いや、倉本無能すぎるじゃねーか!!!」

正直この一言に尽きる。執事の倉本が無能すぎる。長年一緒に暮らしていた主人が一夜のうちに別人に変わっていたにもかかわらず1年間まったく気づかない無能っぷり。この作品は様々な点で矛盾なく作られていると思うがこの1点だけは明らかにおかしい。気づけよ!倉本!

トリックの面白さとしては実は別人だったという風にした方が面白いとは思う。その方が伏線も立てやすいし暴かれたときの衝撃度が違う。実際に「え!?そうなの!?」と強い衝撃を受けた。

ただ整合性を考えるなら入れ替わりなしで主人が全部やってたという結末で良かったんじゃないかと思う。1年前から変わってたというトリックは「倉本流石に気付くだろ!」ということで真っ先に読みから外すし……

普通に主人が実は歩けますというトリックで良かったんじゃないか?それだけでも結構衝撃度高いし。正木は1年前の事件の時に主人が殺してしまってて全部主人がやってましたという感じ。

入れ替わりトリックをするなら倉本もグルという方がまだ納得できる気がする。ただ使用人も含めて一緒にやってたとすると協力プレイで出来ることが増えてしまうからそれを制限するために組ませなかったのだとは思う。館の住人が3人でなんでも協力できてしまうなら本当に何でもできてしまうだろうしそれこそ変な点が多く出てきそうな気はする。

ただここまで文句を言いつつも自分はこの作品が結構好きだったりする。もちろん倉本が気付かないというバカトリックではあると思うけど、ミステリーは整合性がある綿密なトリックよりもガバガバだけど強烈なトリックの方が面白い。

多少の整合性は無視して強烈な読み味にした方が面白いわけである。「それはないだろ……!」というのは落胆ではなく苦笑交じりの愉悦から生じるセリフなのだ。なんなら多少おかしな点があった方が面白さが増すかもしれない。なのでこの作品は普通に好き(雰囲気も良い感じに怪しいし好み)。


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