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是枝監督作品『怪物』の感想

※映画『怪物』のネタバレがあるので注意!!!

巷で話題になっていたので『怪物』という映画を見てきたので感想を書いていこうと思う。

見てきたと言っても感想を書きあぐねていたのでもう2~3週間ほど前のことになる。なので思い出しながら書くという感じ。このくらい間隔を空けて感想を書いた方が記憶として後に残りやすいとは思う(時間たってから思い出したほうが記憶に残りやすそうだし)。

見終わった後はめちゃくちゃ良かったという感想だったが実は開始30分くらいまでは結構きつかった。子どもの学校の描写が描かれるだけで「うわ……いじめを題材とした作品か……?」という感じで気が沈んでしまった。

序盤の教師の暴力に対する対応があまりにも機械的で「流石に無いだろう……」というのもちょっとどうかと思ってしまった。「コントかよ!」というレベルで機械的。流石に誇張しすぎな感じがした。

後々思い返すとこのあたりは湊の母親という1つの視点で恣意的に解釈して見えた結果が描かれているのだろうと思えるけど、最初にこのシーンを見たときは「カンヌさん、これでいいんですか……?」と感じずにはいられなかった(なお現在はカンヌ有能だと思っている)。

といった感じで最初は「つまらないし重いだけの映画か……?」と思っていたけど先生の視点に変わるあたりで面白味を感じてきた。このあたりからは黒澤の『羅生門』的な視点によって見え方が違う話かな?という風に見れたので面白く見れた。羅生門自体も好きな映画なのでこの形式は面白い。

先生にも先生の理屈はありそれは同情できるものでもある。さらに言えば「シングルマザーだから云々」という偏見で見られていた湊の母のように先生も「ガールズバーに行っていた」とか「暴力教師」など偏見の目で見られてしまう。母親の視点では完全に悪人だった先生も当人の視点で見れば善良な人間で視点による見え方の違いが描かれる。本作ではそういった偏見がメインテーマになっていると思う。

この作品では3つの視点から同じ出来事を描きそういった偏見の目線をさりげなく差し込むことでそこに焦点を当てられている。偏見自体を受ける側の辛さや偏見を発する側の無意識な残酷さ、そういった部分が非常に繊細に生々しくリアルに描かれていると感じた。

こういったマイノリティの心情を描く作品は個人的には好きだ。若干毛色は違うが、田中ロミオの『CROSS†CHANNEL』にも似たようなものを感じる(なんでも田中ロミオにつなげがちという悪癖)。

個人的には最後の視点である湊のエピソードは非常に良かった。同性の子どもの恋愛の話、それもマイノリティーの辛さを描いている作品を単なる恋愛物語として消費することに若干「いいのかな……?」という罪悪感に似た気持ちはあるけど端的に自分の好きな百合作品を見る感覚で「尊いな……」と思えた。

同性愛・異性愛に問わず恋愛作品はめちゃめちゃ消費してるのでこういった作品だからといってそこに罪悪感を感じるのは今さら感はあるが。ただこの作品にはなぜか罪悪感的な気持ちがある。ここを掘り下げてみても興味深いかもしれないが話が長くなるので今回はやめておこうと思う。

あと柊木陽太くんが演じる星川くんが醸し出す雰囲気が凄まじいと感じた。子役の演技は上手くてもやはりどこかわざとらしかったり、逆に下手で棒過ぎたりするものだけど彼の演技は素直にすごい。

1つのキャラクターとして完成されているというかミステリアスで天真爛漫で異質な何かがそこにいるという感じで強烈な存在感を放っていた。監督の演出もあるのかもしれないがそれにしても凄かった。今後は柊くんの出る映画を追っていきたくなるレベル(というか何作かは追っていこうかと思う)。

というわけで『怪物』という映画は面白かったという話。思い出すとまた観たくなってきたのでサブスクできたらそのうち観ようと思う。

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