漫画家はkindle出版のみで生きていけるのだろうか?

今は雑誌や漫画アプリ、web連載をしてからコミックを出すという事をしている漫画家がほとんどだ。
出版社にだいぶマージンを取られるものの、この方が作品の知名度が上がりやすいのでうまくいけばヒットして大きな金が入って来る事もある。
実際は作品があまりにも増えすぎたせいで多くの漫画家が思ったように稼げていないだろうが。
漫画アプリではそこそこのPV数やコメント数なのに、コミックを出したらあまり売れなくてじきに打ち切りを食らうなんて事もよく見かける。
「ただでは楽しむけどコミックは買わない」という人が今は多い。

このような出版社経由での漫画発表は

・一定以上の作画のクオリティを求められる事が多く、アシスタントを何人か雇うというコストがかかる(コミックがある程度以上売れないと継続は厳しい)
・締め切りが決められているので自由に作品作りができない。(時間が足りなくて不本意な内容で漫画をリリースする事もわりとある)

などあり、そういうのにもう疲れて「コストのかかるアシスタントを使わず、自分のペースで細々と漫画発表していきたい」と思う漫画家もいるのではないだろうか。

もし出版社を介さず漫画発表して生きていく場合はkindleなどで自分で電子書籍をリリースし続け、それらの作品でそこそこの売り上げを出し続けないと無理だ。
しかし今のところこれでうまく成功できている人はかなり少ないように見える。

今回の記事では「漫画家が出版社を介さずkindleで作品発表し続ける場合、どうやって利益を増やしていくか?」を考えてみたい。

<作品発表のペースを考えて絵のクオリティはある程度落とす>

雑誌連載作品みたいにキャラも背景もかなり時間のかかる作画を一人で全てやろうとするのは無理ゲーに近い。
実際にそれをやってしまうと作品完成ペースがかなり落ち、一年に出せるkindle本の数も減り年収も相当減る事になる。
だからkindleで漫画を自分で出し続ける場合は、キャラも背景もある程度作画クオリティを落としてペースよくコミックを出していく事を意識しないといけない。
できれば一年に二冊ペースくらいは出していきたい。

絵のクオリティは雑誌や漫画アプリ連載ほどではなくなるので、作れる漫画も一部制限されてしまう。
作画のクオリティを必要とするホラーやサスペンス物、SFやアクション物は無理だ。
一方一人の作画でもいけそうなギャグ漫画や四コマ、ショート漫画などは向いていると言える。
萌えやセクシー作品も背景の作画レベルを落とし、キャラのクオリティも調整する事でいけるだろう。

無料で配っているkindleインディーズみたいなラフすぎな絵にすると有料本では低評価レビューが付きまくる事になりかねないので、ある程度のクオリティの絵が求められる。

背景の作画のクオリティを落とすだけでなく、作画の効率化もきちんと考えていかないといけない。
背景の使いまわしや、以前書いたような「頭部のテンプレート画像を事前に作っておいて作画効率を高める」など。


<コミックの値段を安くする>

最近のコミックは価格の高騰化が進んでいる。
青年誌コミックの一部はすでに800円台や900円台の価格になってかなり買いづらい。
一冊760円とかも物価高で可処分所得が減った消費者にとっては結構厳しい感じになっている。
自分で出すkindle本はこの流れにむしろ逆らった安価な値段にした方が作品として目立って売れ行きを増やせやすい。

通常の漫画は180ページ前後で今は青年誌の単行本は一冊760円とか850円くらいになっているが、自分で出すkindle本はページ数を120ページくらいに落とし、値段は350円くらいにしてみる。
「120ページでは少なく感じるかも」と不安な人は、ラフな絵で良いのでおまけページを色々入れて、ページ数をそれである程度水増しすると読者の満足度も増えるだろう。
120ページしかなくても値段が350円なら気にしない読者も多いと思うが。

一冊あたりのページ数を減らす事はコミックを出すペースを増やせるというメリットもある。
コミックは出せば出すほど作品や作者が目につきやすくなる。
また過去に出したコミックの数が増えると過去作品の売れ行きで年収を底上げできる。

<kindle unlimitedでも読めるようにする>

実際問題として「有料の本は今はなかなか売れない」というのがある。
漫画だけでなく他の本も今は有料だと読まれない事が多い。
有名な人が出した本でもアマゾンレビュー数がかなりお寒い事に。
だから350円という買いやすい値段で出しても結構苦戦すると考えられる。

一方で「kindle unlimitedなら、unlimited会員は興味がわいたらその漫画をすぐ読む」というのがある。
kindle unlimitedなら一ページ読まれる毎に0.5円がkindle unlimitedでは入ってくるらしい。(2023年の鈴木みそさんの電子書籍のデータより)
120ページ読まれると一冊で60円入ってくるという事になる。

有料で350円で出しても実際一冊で一万冊どころか3000冊やもっと低い数値も厳しい場合が多いと思う。
しかしunlimitedなら場合によっては一冊だけでもかなり多くの人に読まれてまとまった金が入って来る事にも。

2016年のデータだが、鈴木みそさんは多くの作品をunlimitedで読めるようにしたら、「一か月だけで140万円稼げた」と報告していた。
さすがにその数字と同じは無理にしても、作品数がある程度増えると全ての作品がunlimitedで読めるようにすればunlimitedの分だけで年に200万円以上狙えるかもしれない。

また一冊350円と安いと、unlimitedで読んだ人の中にはその後にkindleを買ってくれる人も結構出てくる。

<売れそうな内容を考えてみる>

コミックエッセイ的な内容はunlimitedで読む人は多くてもkindleを買う人はかなり少ないと思う。
自分もコミックエッセイ漫画はunlimitedで色々読むが、コミックは買っていない。
ギャグ漫画やショート漫画系もunlimitedでは読んでもコミックはなかなか買ってくれないだろう。

一方キャラ萌えやセクシー系の漫画は絵や内容が良ければ一冊あたり5000以上の売れ行きも狙えるし、こういう系統の漫画は「kindle unlimitedでまず読み、キャラを気に入ったら一冊350円なのですぐに買う」という流れを作り出せやすい。
 

ストーリーでかなり惹きつける作品はうまくはまるとunlimitedで爆発的にユーザーの閲覧数が増えるだろう。
しかしこの手の作品はやはり作画コストがかかって作品制作ペースがかなり遅くなってしまう。

どうしてもストーリーで惹きつける作品を作りたいという人は
・ラフな絵でkindleインディーズで出してどんどん話を進める
・人気が出て出版社から声がかかったら作画を別の人にまかせて雑誌や漫画アプリなどで連載する
という流れでいった方が良いと思う。
出版社が関わると将来的にはアニメ化もありえる。

<どこから客を上手くひっぱって来るのか?>

無名な人がkindleで漫画を出し続けてもさっぱり売れなくて、unlimitedでもなかなか読んでもらえず撃沈する可能性が高い。
xなりyoutubeなりである程度フォロワーやチャンネル登録者数を稼いでから「kindledで漫画を出してします。unlimitedでも読めますよ」と宣伝し続けないと漫画で食べていくのは無理だろう。

キャラ萌えやセクシー系作品を出し続ける場合、制作中やリリース済のコミックの一部の話をxやyoutubeで読めるようにするとかが良いと思う。
ただしyoutubeやXのガイドラインに違反しないよう、性的表現が激しくないのを掲載しないとアカウント自体が凍結される事になりかねない。

この手の作品はフォローやチャンネル登録者数がどんどん増えていき、その状態で「xやyoutubeでは発表していない話をkindle版ではたっぷり収録しています。unlimitedでも読めます」と宣伝するとunlimitedの閲覧数やkindleの売れ行きを大きく増やせやすい。

ほのぼの系コミックエッセイやギャグ漫画、四コマ漫画も同様の手法を取ると良いだろう。

ただし萌えやセクシー系は画力の高さも売れ行きにかなり関係してくるので、絵があまり上手くない人は向いていないと思う。
萌え漫画の中にはキャラの顔の作画が地味というかモブっぽい絵で描いている人が多く、そういうのは競争力が弱いとも言える。
瞳の描き方だけでもキャラの魅力は大きく変わって売れ行きを増やすので、顔の作画はより魅力的になるよう絵柄を変える事も考えてみるべき。

<kindleインディーズも使って知名度をさらに高めていく>

kindleインディーズの利点としては、「無料で配るのでラフな絵でも問題ない」というのがある。
また、「無料で配るからダウンロード数がかなり増えやすく、自分や作品の知名度を増やせやすい」というのがある。

kindleで出している漫画を、ラフな絵で描いたkindleインディーズ版(こっちはショート集)で出してみるとか。

人気作品の僕の心のヤバイやつは通常のコミックとは別にややラフな絵で描いたショート集のインディーズ版を二冊出している。
元のコミック版のファンからすればそのインディーズ版をすぐにダウンロードしてインディーズのランキング上位に入りやすくなる。(上位に入ると結構な金を稼げる)
実際にこのインディーズ版二冊は結構長くインディーズランキング上位に入っていた。

またインディーズ版から入った人達がインディーズ版で作品を気に入ってコミックの方を買ってくれるという事にもなりメリットが大きい。

あなたがkindleで出している漫画も、ラフな絵で描いたインディーズ版のショート短編集を出してみると、それが元のkindle版の売れ行きを増やしてくれる事になる。
インディーズ版でランキング上位に入る事で年収も増えたり。

インディーズ版の方では巻末に「このシリーズはkindleで販売中です。インディーズ版とはまた違う話が色々楽しめます。unlimitedでも読めますよ」とすると、インディーズ版から読者をかなりひっぱってこれるようになる。
また、kindle版の方では「インディーズ版も無料で配布中です。kindle版とはまた違った話が楽しめます。」と巻末に宣伝を入れると、インディーズ版のダウンロード数を増やしやすい。

コミック版にはインディーズ版の、インディーズ版にはコミック版の画像を使った広告ページを巻末に掲載する事。


<X用のコマやページ画像を配布して作品の知名度を高める>


これについては以下の記事でまとめた。

https://note.com/tokumeinanasi/n/n42c9c9af3263

 

とまぁこんな感じで、売れ行きを増やすために色々考えてやってみるべきだ。
もちろん漫画自体がきちんと魅力ある内容になっていないと駄目だけど。
自分だけで漫画を出し続ける場合、他人による客観的な評価や直しが無いので、どうもいまいちな作品になってしまわないかにも気を付けないといけない。

以前書いた以下の記事も参考に。



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