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匿名性の高さと居心地の良さについて

今一度SNSの匿名性を考える

SNSといえば匿名性が主な特徴とされてきましたが、最近では売名や個人・団体の主張の表現など、匿名性の正反対ともとれる使われ方が主流となってきました。
インスタグラムやツイッター(ここではSNSとして扱います)では特に、顔や名前、商品や店舗といった細かい情報があって当たり前で、さらにそれを広めるためにSNSを始めるといった行動も多く見られます。
そんな変化に伴って、匿名性の低下は利用者の居心地の良し悪しに大きく変化をもたらしています。

GRAVITYという新しいSNSの登場

私が匿名性と居心地の良さについて考えだしたきっかけは、最近広告をよく見かける新しいSNS「GRAVITY」の登場です。まずはこのアプリについて解説していきます。
GRAVITYとは匿名性の高さを売りにした「やさしいSNS」がキャッチコピーのSNSで、タイムライン、チャットルーム、音声通話が楽しめるスマートフォン向けアプリとして登場しました。これだけ聞くとLINEなどと変わらないように思えますが、他のSNSよりはるかに気楽に利用できる仕様が注目されています。
まず、プロフィール設定ではニックネームの設定・アイコンの選択・プロフィール文入力・タグ付けを行いますが、アイコンはアプリ内にあるものから選択、もしくはイラストアバターでの設定のため、写真などを用意する必要がありません。また、プロフィール文やタグは任意ですので、入力しなくても構いません。
タイムラインでは新着・みつける・フォローの3つにわけて閲覧できますが、前2つのタイムラインでは不特定多数に向けた質問や悩み、愚痴や些細な日記などが物凄い数と勢いで流れていきます。
ちょっとした愚痴から、かなりディープな「こんなこと誰にも言えないんだけど……」という書き出しの投稿も珍しくありません。
音声通話はランダムなユーザーと自動で繋がる機能があり、一期一会での会話という不思議な体験ができます。もう関わらないだろう相手にしか話せない事がある人や、ゆるい通話をしたい人に人気の機能です。

そう、GRAVITYでは、「知らない人と知り合わないまま簡単に関われる」のです。
それが昨今失われた匿名性にあったはずの居心地の良さを取り戻し、「やさしいSNS」という文言の大きな理由でしょう。

従来のSNSから消えた匿名性

ここからは従来のSNSについて触れていきましょう。
TwitterやインスタグラムといったSNSでは主に知り合いとの繋がりや、ネット上での繋がりとしてもフォロー・フォロワーといった「深い・長い付き合い」がベースとなっています。そうなると必然的にお互いのことを「知っていく」ことになるわけです。顔や住所を知りあっていくのもよくあることです。
また、特定厨なんて呼ばれている人がいるように、たとえ隠したつもりでも意図せず個人情報が暴かれてしまうことも珍しくありません。
匿名性だから怖い、気をつけて使うようにと言われていたはずが、今では個人情報の宝庫とまで言われるSNS。
誰々がこう言っていた、この人実はブス、どこどこ高校の生徒がやらかした、この人はどこに住んでいる、どの路線で起きた事件だ……ふらっとSNSを巡回しただけでこんな話題はいくらでも目に入ってきます。
人間の性なのでしょうが、マイナスな話題=炎上などは特に盛り上がりますね。

炎上と匿名の盾

炎上という言葉が出たところで、匿名性が残っている場面を考えてみましょう。
炎上というのはネット上で悪いことや喧嘩が起きたら、それを火種とし、第三者が油を注ぐようにことを大きくしていく様を現した言葉です。炎上では匿名性・特定・拡散など、SNSの怖い部分が一気に見えてくるのですが、渦中の人間の居心地としては最悪です。しかし一方で、匿名の盾を得た第三者は油を注ぎ放題なわけです。

まず火種となる当事者は匿名性の高いはずのSNSで、他者から面白半分に様々な個人情報を暴かれていきます。つまり匿名性が失われると同時にその居心地は最悪になり、人によっては耐えられず自殺にまで追い込まれます。

一方、油を注ぐ第三者たちですが、こちらは数が多い上にほとんどの場合は個人に繋がる情報のないアカウントを作成するなど準備・武装を整えてから動き始めます。こちらは匿名性が高く数も増えていくため、滅多に特定やつるし上げはされず、楽しく人の不幸を眺めていられる=居心地のいい場所ということになります。書いていて具合が悪くなりそうですが。

炎上については匿名性の低下が居心地の悪さに、上昇は居心地の良さに繋がっていると言えます。

匿名性の低下が良い方向になるパターン?

炎上を例に挙げた場合から一転しますが、匿名性の低下、つまり情報を多く載せ、知られることが良いとされる場合について考えていきましょう。
これはいわゆるアーティストや政治に関わる活動者に当てはまるパターンですが、活動者がSNSに求めるものは知名度の上昇です。匿名性とは真逆ですよね。
彼らは1つでも多くの数字が欲しいし、1人でも多くに「知られたい」と、一般人とは根本的なモチベーションが違うため、顔や名前、存在を隠してしまっては意味がないのです。どんどん知られていく必要があるのですから。
彼らからすると、匿名性より知名度の上昇、もっと知って、覚えて、興味を持ってくれというSNSの使い方をするため、知られれば知られるほどに居心地が良いSNSを形成できるわけですね。
炎上商法なんていうものがありますが、まさに先述の炎上の仕組みを使った売名方法です。良くも悪くも手っ取り早く多数の人間に調べられ、知られることができますからね。

匿名性と居心地の良さについてまとめる

ここまで書いてきた、GRAVITYという新規SNS、インスタグラムやTwitterといった従来のSNS、炎上やプロモーションなどについてまとめて考えてみます。
まずGRAVITYでは匿名性が高い気楽なSNSであり、誰にも明かせない悩みなどを知らない人相手だからこそという「匿名性の良さ」を存分に活かした使い方ができます。匿名性が高く、気楽さという居心地の良さがあるパターンです。
次にインスタグラムやTwitterといった従来の大手SNSでは、匿名性はあってないようなものとなっており、個人の特定はたやすいです。また逆に、匿名性を維持しつつ攻撃することなどもたやすいため、居心地の良さと匿名性の比例は一概には言えませんでした。
最期に、炎上とプロモーションについては表裏一体ともいえる側面がありました。知名度として炎上商法をとる人や団体がいれば、意図せず第三者によって炎上してしまうパターンも。立場によっては匿名というものが居心地の良さを作る盾に、また別の立場では死にたいほどに居心地の悪い炎にもなり得ます。

匿名性の高さと居心地の良さについてのまとめ

個人的には匿名性の高さは基本的に居心地の良さに繋がるのかなと思います。
やはり、ここまで書いてきた中で「匿名性が低くなる=知名度が上がる」方がいいというのは活動者やアーティストといった一握りの少数なんですよね。一般人にとっての居心地の良さという視点で考えるのであれば、匿名性が高いに越したことはないのかと。
もちろん、それが他者への攻撃の盾になることは好ましくないですが、その場合には情報開示などの反撃の手段もありますから、基本的には匿名性の高いSNSの需要は高いと考えます。
GRAVITYの利用者が急増し、Appleアプリ・ソーシャルネットワーキングランキングで13位まで上り詰めた理由にはその居心地の良さがあるのでしょう。実際のタイムラインでも「ここでしか言えない」「知り合いにこんな悩みは言えない」「ついここ(GRAVITY)に来てしまう」という投稿はよく見られます。これからもこのストレス社会ではこのような匿名性の高いSNSの需要は高まるような気がします。

さて、今回は匿名性の高さと居心地の良さについて、SNSの様々なパターンにわけて考えてみました。少なくとも私たち一般人にとってのSNSはストレスのもとになってしまってはいけないと思います。SNS絶ちをしたら心が楽になったなんてこともよく聞きますしね。
この記事を、自分にとってストレスフリーな、居心地のいいSNSの使い方を今一度見直してみるきっかけにしてはいかがでしょう。

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