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amazarashiの素顔に迫る

顔を出さないアーティスト、amazarashi。

近年、アニメ「僕のヒーローアカデミア」の主題歌を担当するなど、人気沸騰中のアーティストです。

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アニメ「東京喰種トーキョーグール」でも主題歌に使われており、聴き馴染みのある人も多いのではないでしょうか?
曲調は決して明るいものではなく暗い旋律が多いですが、それに歌詞がのった瞬間、曲として見事に花ひらきます。
SF的な世界観や死生観を反映した歌詞は、どこにもない唯一無二の世界観を表現しています。
amazarashiのフロントマンである秋田ひろむが中島美嘉に提供した「僕が死のうと思ったのは」は、今話題のファーストテイクでも中島美嘉によって歌われ、好評を博しています。
amazarashiは顔を出さずにアーティスト活動をしていますが、なぜ顔を出さずにアーティスト活動をしているのか、そしてその魅力について迫っていきたいと思います。

メンバーはボーカル・ギターの秋田ひろむとキーボードの豊川真奈美の二人です。
この二人は公私共にパートナーで、結婚を発表しています。
しかし、毎度バンド編成を組み、サポートメ
ンバーを入れることで曲を制作し、ライブも行なっています。

ボーカルである秋田ひろむがつくる楽曲は、どれも心に突き刺さるような歌詞が多く、私たちが無くしたもの、置いてきてしまったもの、忘れたい記憶、忘れられないこと、そういったものを思い出させるような楽曲です。

秋田ひろむがつくった「僕が死のうと思ったのは」でも、その名前のインパクトの強さに驚いた人もいるのではないでしょうか。


「僕が死のうと思ったのはから始まる歌詞は、日常のさりげない風景と僕が死のうと思った理由を結びつけています。
ウミネコが桟橋で鳴いたから、誕生日に杏の花が咲いたから、そんなあっけない理由で僕は死のうとします。

私たちは強くありません。

人間である限り、苦悩や葛藤、苦しみや悲しみに追われる日々です。
そんな日々に疲れた時にふと、みた風景が僕を死に誘う。
そんな情景が浮かび、自分自身と照らし合わせては苦しい気持ちになります。
私たちもきっとそうだから、そんな風にあっけなく死んでしまうものだから。

僕が死のうと思ったのは、冷たい人といわれたから
愛されたいと泣いているのは人の温もりを知ったから

そんな歌詞が胸に刺さります。
愛されたいと泣いてしまう、孤独な自分を知っているから、私たちは死に惹かれてしまう。
本当は愛されたい、生きたいと願っている自分の心を知っていることを秋田ひろむはまっすぐにぶつけてきます。

「死ぬことばかり考えてしまうのはきっと生きる事に真面目すぎるから」

そして、私たちの死にたがりな心さえも肯定してくれる歌詞に、救われてしまうのです。
生きる事に真面目すぎる私たちは、その分生きていくことにしがらみや葛藤が増えていきます。
そんなもがく私たちの姿にまるで手を差し伸べるように、真面目すぎるからだよ、と全肯定をくれます。

ラストは希望で満ちたもので、

「僕が死のうと思ったのは まだあなたに出会ってなかったから
あなたのような人が生まれた 世界を少しだけ好きになったよ」

と、死ぬのではなく、生きる希望を私たちに提示してくれるのです。

このあなた、というのは秋田ひろむからすると私たちリスナーであり、リスナーにとっては秋田ひろむです。

曲を通して訴えかけてくれた私たちへの生きる希望をお互いに見出している、というラストは、聞く人の胸を打ちます。

秋田ひろむの作る世界観は、決して最初から希望に満ちたものではないのです。
私たちが死にたい、苦しい、もういやだ、と叫ぶ心に寄り添って、そうだね、そうだね、と相槌を打ちながら、それでも僕は君に出会えてよかった、と囁いてくれる、そんな闇の中にぽつんと取り残された宝石のような光です。
世界には笑おう、なんとかなる、大丈夫、という希望の歌に溢れていますが、amazarashiは逆の世界観を作り上げています。
泣こう、喚こう、苦しもう、それでもあなたに生きていて欲しい。
そんな祈りにも似た願いで、私たちをそっと包んでくれます。


amazarashiの楽曲の大半は、ボーカルギターである秋田ひろむの体験から作られています。
彼の記憶の中に私たちは取り込まれ、そして自分自身のどうしようもなさと重ね合わせる。
生きてたいけど生きていく自信がない、そんな誰にも言えない悩みを、誰にも吐き出すことのできない思いを、秋田ひろむは掬い上げてくれます。
誰にも見向きされないような感情も経験も、そんなものにでも価値はあると教えてくれるのです。
唯一無二の世界観は、辛い経験をした人たちはもちろん、アニメのタイアップなどで広く伝わり、人気を博しています。

ではなぜ、秋田ひろむは顔出しをしないのでしょうか?
実はインタビュー記事で、「顔を見せるのが恥ずかしいから」と答えていたそうです。
もちろん、顔に注目せず、曲の世界観にどっぷり浸かってほしいという思いもあるそうですが、顔を見せるのが恥ずかしいのが一番の理由だそうです。
人付き合いが苦手である、というのも秋田ひろむ自身から語られていた事です。
人付き合いが苦手なため、顔を出さずに活動しているとも考えられますね。
顔を出さない事で、独自の世界観を築き上げているとも言えます。

テレビ番組などで見かけない、と思う方もいるかもしれませんが、実はテレビ番組には長い間出演していませんでした。
世界観を守るためとも言われていますが、真相は謎に包まれています。
しかし、近年はファーストテイクなどに出演し、実際に見ることも可能になってきました。
もちろん顔は見えない状態ですが、それでも彼の歌声が聞けるということで、ファンは嬉しく思っています。


amazarashiはライブを頻繁に行なっており、それは一体どうしているのだろうと疑問に思った方もいるかもしれません。
amazarashiのライブでは、バンドの前に大きな幕を張り、白い布から影だけが見えるようにしています。
演奏している姿は見えますが、影になっているので顔は見えません。
そして、その幕にプロジェクションマッピングを投影したり、光の演出などを行います。
amazarashiは歌詞も素晴らしいので、歌詞を投影する演出が人気を博しているようです。
歌詞を見ながら、生歌に浸れるというのは最高のライブですよね。

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また、amazarashiはアートワークが素晴らしく、MVに力を入れています。
ストーリーがあるアニメーションMVも多く、例えば楽曲「アノミー」では、工場地帯に住む二人の少年少女が描かれ、少年がパソコンを使い何かを仕掛けようとするのですが、敵が現れ…といった風に、ストーリーがあるMVを作っています。


こちらの楽曲「ジュブナイル」では、病室で入院している女の子や、文字を書き殴る少年たちが偽物の自分自身が現れ、そこから逃げるうちに、偽物の自分が怪物となり襲ってくる、というストーリーになっています。
もちろんここで終わりではなく、続きのあるストーリーなので、気になる方は是非観てみてください。


また、楽曲「少年少女」ではMVではなくリリックビデオをYouTubeにアップしており、秋田ひろむの歌詞と世界観を堪能できる一作になっています。


amazarashiの曲はどれも素晴らしいので、ぜひ一度聴いてみてください。

あなたの孤独にきっと寄り添ってくれる一曲があるはずです。


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