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ハワイの恋が終わり苦しみの先に悟りへの道が開けた 6



第一章 4 りさの状況

りさは、詐欺師が現れた後、再度龍一と寄りを戻していた。きっかけはなんだったか思い出せない。でも、年末に再会して次に会う約束をしていた日曜日に連絡がなく、りさはずっと家で待っていた。夜十時になっても電話が無いので、シャワーを浴びていると、友人の真理子から電話がかかってきた。

「今、あうんにいるのだけど、誰がここに居ると思う?龍一よ」

私は驚いた。

「誰と?」りさ

「若い女の人よ」真智子

(うわーやられた、そういう事か。私が詐欺師とデートしている間も連絡してこなかったのは!)

二日前には、私は龍一とベッドで愛し合っていたのに。

すぐシャワーから飛び出して、マカレーショッピングセンター一階中央にある、BAR  あうんへ向かった。

中に入ると、真理子が手招いてくれてカウンターに座った。りさは、以前あうんの常連だったから、店内をすぐに見渡せる。あうんは日本で言うスナックっぽいけど、飲食料金は明瞭会計で、普通の値段。女の子も置いていないし、結構ご飯も種類が多く美味しい。

龍一は三〇代の女性と、奥のカウンターに座って、ニコニコ話していた。私には気が付いていなかった。私は写真を撮った。龍一の顔がこちらに向いていて、女の人の顔は見えない。証拠写真。

龍一が女を口説こうとしている姿を見るのは本当に腹立たしいし、別れた後に寄りを戻したと思った矢先だ。

つかつかとそばに行き

「あなたは何をやっているのよ?」

と、りさは龍一に威厳のある言い方で話しかけた。

隣の女は少し驚いたようだったが、その女に言った。

「あなたは誰ですか?」

と聞いた。

「私は裕子ですけど」女は答えた。

「あなたは何で龍一といるの?」

りさは聞いた。

「私は誘われたから来ただけ」

裕子はシャーシャーと答えた。

そうなのだろう、少しきれいな若い子が付き合ってくれるかと、龍一がモーションをかけまくっている最中なのだろう。祐子にしてみれば、

(羽振りのよさそうなおじさんね、少し払わせちゃおう)

くらいな、軽い気持ちで付いて来た。だとその時は思った。

「私にはボーイフレンドもいるし」

聞いてもいないのに、裕子が携帯の写真を見せてきた。あー、まったく龍一は相手にされていないのだ。すぐにわかった。結構、裕子は用意周到。龍一は踊らされているだけか。

龍一に

「外に出なさいよ」と告げた。

あうんの重い扉を開けて外に出ると、路面の駐車場になっている。夜中に近い11時過ぎのこの時間は、人がまばらだった。

「あんたは何をやっているのよ」

と言ってビンタをくらした。

龍一は何も抵抗しなくて、ただなぐられた。龍一は普段は喧嘩に強い。相手が手を上げたりして、彼の身の危険を感じると、自然に身体が戦闘態勢に入り、誰の手も彼の体に当たることはなかった。しかし今夜は、相手が私のこともあるのだろう、そして既に酒に酔ってもいた。私のげんこつが、龍一のほほに当たった。と言っても、大して力も入っていなかった。

「もういいだろ」

と言って、龍一は中に入った。

マカレーショッピングセンター

私は興奮していた。一日中待ちぼうけを食らって、会いたい気持ちが高まっていたその日に、こうなった。

それから真理子にお礼を告げて、りさは家に帰った。龍一も私を追って帰るものだと思った。謝ってくるのだと思った。10分足らずで家に着くと、ケイタイが鳴った。以前、知り合ってから、何度か会ってご飯を食べたりしていた要君が電話してきた。りさに好意を持っている一人だ。

「あんた、何をしでかしたの?ワイキキ中の噂になっているよ?!」

私は驚いた、もう知っている!なぜ?

「あいつは止めた方が良いよ、中国マフィアと繋がっている噂もあるし。大体、あんたみたいなお嬢さんが、付き合う相手じゃないのだよ。あんただって変な噂が立ってしまう。一緒に居た女が言っていたよ。あれが、おれのビジネスを買った女だよ。おじさんが付きまとってくるから困るって。大体あんた、変な帰り方したよね」

「えっ、どういう意味?」

私は聞いた。

「今、家に帰ってくる帰り方だよ」

要は答えた。

(うわっ、なんで私の帰り道が分かったのだろう。GPSか、後ろを尾行していたのか。要くんは、まだ私に興味があるから、龍一と仲違いさせたいのだ)

まあとにかく、落ち着いて考えてみると、龍一の愚かなところを表わした、滑稽な一晩だった。

私が詐欺師に引っかかっている間に、龍一も詐欺女に引っかかっていたのだった。

次の日、なんと言訳しようかという表情で、龍一はりさの家に帰ってきた。

「よく帰って来るよね、ここに」

りさは言った。

「友人だよ、助けてほしいって言うから」

何を言っているのだ、このおやじは?!

「あんたは、あの女に相手にされていないのよ、良いカモなのよ。寝てないでしょ?あんたとは寝ないと思うよ。」

りさは、龍一のことは良く分かっていた。彼女は、東大の大学院を卒業していると言っていた。

龍一は2つの大学に行っていて、どちらも中退している。学歴に弱いところがあるのだろう。その何日か後に、彼女からの伝言が携帯に残っているのを聞いた。

「猫のえさとお米飼ってきてくれますか?あっお水もね」

私が別れている間、龍一はこの女に貢いでいた。そりゃ、急に私に振られたのだから、他の女が来たら頼ってしまうのもわかるけど。龍一は女が居ないと生きていけないタイプ。奥さんはいるのだが。ママではあるけどもう女ではない。

と理由を付けて、私は今回の事件を許してしまった。その後に解ったのだが、祐子に300万円貢いだらしい。

龍一とは五年付き合って、1ヶ月別れて、また戻った。だけど、龍一も私の別れには傷ついたらしく、前のようには会わなくなった。

そんな時に、クリスが登場していた。

クリスに初めて会ってから3―4ヶ月の間は、私はこのようにいろいろあったし、クリスは眼中になかった。3回も言うが、顔が好きなタイプではなかった。

龍一には家庭があった。付き合い始めたころは、奥さんとも記念日くらいには夜の営みがあった。それをなくしてしまったのは、私のせい。

でも、私の前にも龍一にはJALのフライトアテンダントの彼女がいたし、りさを好きになったのは彼の方。

りさは離婚をした後、3ヶ月間一人で慎ましやかに過ごした。週末は時間をもてあました。りさはお散歩相手がほしかったし、寂しかった。その後に龍一と付き合うことになって、そのさみしさが消えた5年間。一回別れて、寄りを戻したが、前ほど龍一は寄りつかなくなり、一人の時間も増えた。

夕方や夜のお散歩は、ハワイと言っても少し注意が必要だ。何と言ってもアメリカだもの。りさは小柄だから、後ろから見たらティーネイジャーに見える。警戒しないといけない。

散歩相手が欲しいという話を、ケアホームへ慰問に行く車の中でクリスに話した。

マカレーショッピングセンターの前の橋を渡るとワイキキ


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