ハワイの恋が終わり苦しみの先に、悟りへの道が開けた 33
第五章 33 クリスの大失敗
4年ぶりにクリス無しの私の誕生会も終えて、一週間経った。誕生日前日の深夜に、クリスがくれたギフトサティフィケートで、買い物でもしようと思いたちアラモアナショッピングセンターのノーズストロームへ出かけた。スーパーマーケットでは無く、デパートの商品券だ。いくら分頂いたのかはその時はわからなかった。
3年間以上も付き合って、家事も音楽のことも、彼を精一杯サポートした。レコード会社の友人を紹介したことによって、CDも発売できた。その音楽の下稽古も私が付けた。
その際、プロモーションビデオを作った方が良いと言われた時には、私の知り合いのビデオマンに安く撮ってもらった。それでも高すぎるというクリスに、少し資金も援助してあげた。そして、クリスは今、牧師としての仕事で、結構稼げるようになったし、フルーティストとしても演奏依頼が来るようになった。
私に大変お世話になったお礼だもの、300ドルかな?もしかして500ドルかな?すごくて1000ドルとか??
なんて想いを巡らせながらデパートに着いた。金額が解らなければ買い物がしにくい。まず、キャッシャーでいくら分のギフトカードかを聞いた。
「How much is this gift card charged?ハウマッチイズディスギフトカードチャージド?」
このギフトはいくら入っているの?」と私
店員はバーコードをスキャンして答えた。
「Twenty five dollars in it. 25ドルです」
私は再び聞いた。
「ノーノー、このカードにいくら入っているかを聞いているのよ!」
店員が言った
「25ドルよ」
「えっ、そうなの、サンキュー」
私は少しぼーっとしながらも、クリスが間違えたのかと思った。
歩きながら考えた。なんで25ドルなのだろう。私への最後のお礼の最後のプレゼントが、スーパーのバラの花と25ドル。
これが男女間では無くて、友達からの何かのお礼だったとしたら、別にそう金額に執着はしない。クリスと付き合っていた3年半前から、私は結構稼いでいた。大体、金額が少なければスタバのギフトカードにするとか、ロングスドラッグのカードにするとか、ちょっとだけ気持ちね!って思う感じの店を選ぶはずだ。私への3年間の気持ちは、たったの25ドルなはずが無い。
多分、予想以上に、必要以上にこの金額が私の心を傷つけた。私の気が変になったのは、これからだった。
私は会う人全員に聞いた。
「ねえ、ハワイに来たばかりでお世話になった彼女に、ギフトカードでお礼をするとしたら、いくらにする?」
20代の男の子から、60代の知り合い、居合わせて聞ける人、全員に聞いた。30人以上に聞いたと思う。この行為が気が狂っている証拠だ。そして、それを聞いた後に、時間がある限り自分の体験を話した。
「私が3年半付きあった年下の彼が、彼も私には本当にお世話になったと言っているのね。私も精一杯彼をプロデュースしたし。別れた後も、一緒に食事をして、伴奏をしてきれいに別れたのだけど。私の誕生日プレゼントにスーパーのバラの花と25ドルのギフトサティフィケートをくれたの。どう思う?」と
一気に話した。質問してくる相手には、どのように付き合い始めて私が何をしてあげて、セックスも、私から嫌になったから止めた。なのに通い続けて来るから、兄弟みたいに一緒に居たの。独身の子が現れたから、その人を勧めたら、うまくいったのだけどね。私は元彼と寄りを戻したし、別れた彼を好きな訳じゃないのよ。
何十人に話しただろう。私に久しぶりに会った友人は言った。
「りさちゃん、会ってからその人の話しか、していないよ」
彼女は、私の気がおかしくなっているとは思わなかったのだと思う。私自身も、それほどひどい精神状態になっているとも思わなかった。だって私には龍一だっているのに。
龍一はたまに私に言った。
「りさはまだクリスが好きなのじゃ無いの?」と
私は気が付かないまま、龍一にもクリスの人から聞いた新ネタを、毎日話していたのだ。
私は言った。
「全然クリスの事は興味ないよ。」
私は精神がおかしくなっていた。
別れてから、たくさんの二人を知る友人達が私に言った。
「本当に素敵なカップルだったのに。りささんといる方がクリスは幸せよ。」
人は良かれと思ってだとは思う。勝手なことを私に告げる。私は自分の意思で彼を捨てたのに。
おかしくなってきた私に、執着が襲った。人の心って本当にわからないと思う。
昨日まで精神も体も元気な人が、一夜にして殺人犯になるのも、今なら分かる。
私の場合、私が遊ぶのに飽きちゃった古いおもちゃを、ほかの子供が取りに来たから
「だめだめ、それは私のおもちゃよ」
と取り返しにかかった。本当に興味がなくなったおもちゃなのに。しかも新しいおもちゃで遊び始めていたのに。
執着心は妄想を作り、それを現実化して相手をいじめ、いじめた分自分を苦しめた。
もうずっと前から、そう、付き合って半年くらいには、この人は違うから別れて新しい恋を探そうと思っていたくらいの相手だったのに。
私は数年前から神棚に毎朝お祈りをする。
伊勢白山道というヒーラーが本に書いていた。
クリスと出会う前から毎朝お参りした。神棚は伊勢神宮で略式の檜のものを購入した。
お札は伊勢神宮の外宮、内宮。そして伊勢神宮に行った時には、伊勢神宮からさらに鳥羽の方へ30分山の中をドライブして行かなければいけない、伊雑宮までお参りに行った。
そこのお札と、住んでいる家の近くの神社のお札もお供えする。それは、ダウンタウンにあるハワイ出雲大社のお札だ。
「神様、私を生かして頂いてありがとうございます。天照大神、天照大神、ありがとうございます。」
あまてらすの、すの部分で、息を大きく吸って、おおみかみで息を吐く。と言う言霊を言うのだが、クリスと別れてからは、みぞおちの中りが重苦しくなり、特にギフトサティフィケートが25ドルだった件以降からは、息が大きく吸えなくなっていた。胸がつかえて、深呼吸が出来なかった。これはしばらく続いた。
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