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でんぱ組がエモすぎて安藤サクラ泣き

でんぱ組.incが好きだ。
全然詳しくないけど。

彼女らはエモい。

なんでこんなにエモいのか(とくに今)を言葉にしてみる。

そのためにはまず、アイドル自体のおもしろがり方について触れる必要がありそうだ。

アイドルのおもしろさ

アイドルのおもしろさは、ファンタジーとドキュメンタリーが融合した物語性にある。
アイドル自体はファンタジーで、言ってみれば虚構だ。でもそれを構成する彼女ら自身はれっきとしたリアルな人間で、そうである以上道中でつまずきもするし、別の道を行く人もいる。

アイドルは、そうした道中の酸いも甘いも苦いも辛いもすべて飲み込み、ファンタジーを力強くする材料に変えてブルドーザーのように前に進んでいく。ファンはその道行きのプロセスをともに走る(気分を味わう)。

走るさまが美しくなくとも、坂道が険しければ険しいほど、よく転ぶほど物語は劇的になり、ひとつひとつの歌や歌詞がどんどんと重みを増していく。

だから「可愛くない」とか「歌やダンスが下手」なんて普通なら欠点となる所も、アイドルという物語に組み込まれてしまえば、道行きを面白くしてくれる魅力でしかなくなる。
いつか誰かが「短所って、長所じゃん」みたいなことを言って嗤われていたけれど、とくにアイドルについてはそれは真実だ。

こんなにダメなのに頑張ってる!自分が応援しなきゃ!と思っていた存在がとんでもない速度で成長し、気づけば自分に背中で語りかけて走る力を与えてくれる存在になっている。その変化をリアルタイムで味わう。

これがアイドルの物語性とそのおもしろがり方だ。(もちろん一例です)
アーティストが一時点でのパフォーマンスの完成度を追及するものだとすれば、アイドルはこの時間を通じた物語のおもしろさでファンを惹きつける。

でんぱ組の物語性

そういう意味で、でんぱ組.incは圧倒的に物語性が強く、わかりやすかった。

元いじめられっ子・引きこもりなんていう重ためのバックボーンを表に出しつつ、陰から這い上がってきた彼女らがその過去を肯定したうえで全力で陽に振り切ろうとする様を見せる。
その構図がでんぱ組.incというグループが走るときの物語の柱と言えるものであり、彼女らのエモさを生む核だった。

そしてその象徴的な存在だったのが、最上もがだった。それだけに、彼女の脱退はそれこそグループの存続が危ぶまれるくらいの大きな衝撃だった。

誰しも、この先でんぱ組.incがどう走っていくのか想像できなくなった。
物語の終わりを予感し、多くのファンが狼狽えた。
そんな時、新しく加入したメンバーとともに電撃的に発表されたのがこの曲だ。

『ギラメタスでんぱスター』

*****
(ここで止まって動画を一通り見てもらっても、再生ボタンだけ押して下へ進んでもらっても、べつに見なくても大丈夫です)
*****

歌詞がえげつない。 
作詞はヒャダイン。彼はアイドルの物語性を引き出すのが抜群にうまい。

以下一部抜粋

(中略)
馬鹿みたいに光れ
楽しいことだけ提案したいんだ
星は大爆発して散る運命よ


チキってんな騒げ
地球じゃヤバめなことだって
宇宙じゃ適当に処理する案件よ
明日に期待してんだ
ワクみが止まんねえんだ
このタイミングで青春してんだな
(中略)
今見てる
星はもうねえんだってさ
だったらこれまじチャンスじゃん
輝いたろうじゃん
うん億万年
闇照らせでんぱスターズ

ぶかっこうでも光れ
どうぞごちゃごちゃ言ってちょうだい
太陽フレアな炎上だって上等だ

丁々発止 生きれ
万物は流転していくもんさ
転がんのやめたら生ごみ確定よ
いっぱい伝えてえなあ
口がついてこねえなあ
つまりは新しいって最高だ
おまえら道に迷わせない
行く先照らしてやんよ

(中略)
流星群でもなんでもかかってこいや
こちら根拠のない自信で満ち満ちてんだ
光速ですんませんね
もう次にいるんだわ
騙された気で翔んでみなっしゃいな

無重力

こんなに完璧な回答があるのか。
このタイミングでこれを歌ってくれるのか。

大きすぎるショックを正面から飲み込んだうえで屁でもないと息をまき、もう柱がなくても大丈夫だと、「全部飲み込んで変わりつづけること」自体が次の柱だと提示する
物語がいつか終わることを宣言しつつ、「私たちは変わりつづける今を全力で楽しむ、おまえらもそうしろ」と呼びかける。
そして実際に、バックボーンなど知らなくても観るものすべてを圧倒する“馬鹿みたいな輝き”がここにはある。(と思う。どうでしょうか…?)

エモすぎる。
あまりのエモーショナルさに見るたびパソコンの前で『万引き家族』の安藤サクラみたいに泣いてしまう。

エモさを作るのは懐かしさと儚さの二つだと個人的には思っていたけれど、この動画には、
「彼女たちの今の強さを見せつけることでこれまでの道程を思い起こさせる懐かしさ」
「道がいつか終着することをつよく思わせる儚さ」
がゴリゴリに共存している。

ぼくは今もこれからもたぶんニワカだけれど、きっとこの物語が終わるまで応援し続ける。

こんなもの見せられたら、そうしない訳にはいかない。

*****
卒業に際しての夢眠ねむのLINEのインタビューがすばらしかった。

(中略)
「でも自分の人生には、絶対アイドルが必要だったんだと思えるようになりました。もともと偏屈というか、幸せになっちゃいけない、みたいな気がしてて。悲しみや怒りとかで創作意欲を高めて、鬼気迫るところで表現したいみたいな気持ちがずっとあって」
ただアイドルになったおかげで、自分が幸せだからこそ伝えられることがあるっていう事実を知ったんです。それを知るのと知らないのとで、私の人間性も人生も本当に違ったなって。自分が幸せになることを許せるし、人の幸せも願えることは、アイドルにならなきゃわからないことだった」

上の動画にもまさに「自分が幸せだからこそ伝えられること」が詰まっているなと思った。

これをふまえるとまたエモさが増す気がする。

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